解決事例

Solution

【醜状障害】後遺障害等級12級の認定を受け、約8785万円の支払いで解決した事例

認定等級と示談内容

後遺障害併合12級の認定を受け、治療費を除き、約8785万円の支払いを受けて解決に至った事例(20代 男性)

認定された後遺障害等級と内容

併合12級

12級14号
外貌に醜状を残すもの

14級9号
局部に神経症状を残すもの

事例の概要と解決に至るまでの流れ

本件では、バイクを運転していた被害者が交差点に進入したところ、右折をしようとした相手方車両と接触し、膝後十字靭帯損傷及び顔面を強打し、顔面挫創の重傷を負いました。

その結果、被害者の顔面には切創の痕や手術痕のような痕が残りました(線状痕)。

自賠責保険に後遺障害等級認定申請を行った結果、顔面部の瘢痕(線状痕)については12級14号、膝痛については14級9号の認定となり、併合第12級の認定を受けました。

当事務所の弁護士は、認定された等級を元に、損害が生じていることの根拠を示しながら相手方保険会社と丁寧に交渉を進めました。

その結果、治療費を除いた総額約8785万円での示談となり、裁判基準に等しい金額の賠償を受けることができました。

解決のポイント

本件で被害者に生じた後遺症は顔面の傷痕と膝の痛みです。

後遺障害等級でいうと、顔面の傷痕が12級、膝の痛みが14級に該当します。

ひとつの交通事故で認定される後遺障害等級はひとつのみです。

したがって、本件の場合は、該当する2つの後遺障害のうち高い方をとって、「併合12級」という等級が認定されました。

後遺症が残存し、それが自賠法施行令の後遺障害等級に該当する場合は、後遺症が残存したことに対する慰謝料として「後遺障害慰謝料」と、後遺症により将来にわたって発生する損害の補填として「逸失利益」を相手方に対し賠償請求することが出来ます。

このうち逸失利益は、基礎収入と、認定された等級に対応する労働能力喪失率と労働能力喪失期間を用いて算定することができます。

本件のようなケースにおいて、逸失利益を算定する場合、ただちに認定された等級である12級に対応する労働能力喪失率等を用いて逸失利益が算定できるかというと、そうではありません。

なぜなら、12級が認定されるもととなった顔面の傷痕(醜状障害)で逸失利益が生じている人といない人がいるからです。

相手方保険会社もこの点については厳しく争ってきます。

もし、逸失利益が生じていないと考えられる場合は、後遺障害に該当するもうひとつの等級、14級に対応する労働能力喪失率等を用いて逸失利益を算定することになります。

そうすると、12級として算定できる場合と比べ、逸失利益の金額は少なくなってしまいます。

したがって、本件のポイントは、醜状障害により逸失利益が生じているか、言いかえると、逸失利益を算定するにあたって、12級に対応する労働能力喪失率等を使うことができるかにありました。

醜状障害により逸失利益が生じているかの判断要素は、醜状障害により労働能力に影響があるかです。

では、顔に傷痕が残った場合、労働能力に影響はあるでしょうか。

その答えはひとつではありません。

その被害者がどういう環境で働いているか等の個別具体的な事情によって判断が異なります。

たとえば、被害者が調理師だったとします。

被害者の業務内容が、厨房内での作業のみである場合、交通事故に遭う前と後とでは、大きな違いはありません。

全く同じ能率で同じ業務を行えることが想定されるため、醜状障害が労働能力に影響を及ぼしているとまではいえません。

では、同じ調理師でも、カウンターで接客を兼ねつつ調理しているような場合はどうでしょうか。

醜状障害を負ったことにより、カウンターでの業務から裏方作業に配置転換され、それによって収入が減ってしまったというようなケースでは、醜状障害が労働能力に直接影響を及ぼしていることがわかります。

または、配置転換まではいかなくても、お客さんに傷痕が見えないような振舞いが必要になる、傷痕を見られるかもしれないと気になってしまい作業に集中できないといったことが考えられます。

このようなケースでは、労働能力に直接影響していると言いきることはできませんが、醜状障害が間接的に被害者の仕事に影響を及ぼしていることはわかります。

交通事故賠償の実務においては、醜状障害により配置転換等の必要が生じ、収入の減少が見込まれる、今後の職業選択の幅が狭められるなど、労働能力に直接的な影響を及ぼしているような場合は、逸失利益が生じていることがわかるため、相手方に対して逸失利益の賠償を求めます。

そして、直接的な影響はなくても、対人関係に影響を及ぼすおそれがあるなどの間接的な影響がある場合は、はっきり逸失利益が生じているとまではいえないものの、損害が生じていることはわかるため、その補填として、逸失利益のかわりに後遺障害慰謝料を割増して請求してバランスをとっています。

本件では、示談交渉の際、相手方保険会社は、顔面の線状痕による逸失利益を否定する姿勢を示していました。

そこで、当事務所の弁護士は、後遺障害等級において、被害者が顔面の線状痕により、実際にどのような影響を受けているか、今後、どのような影響が見込まれるかについて丁寧に説明・交渉を行いました。

その結果、後遺障害等級12級に対応する労働能力喪失率等を用いて算定した逸失利益を含めた総額8785万円の賠償金を得ることに成功しました。

不運にも交通事故に遭遇し、後遺症が残ってしまったにも関わらず、法的に適正な金額を受けられていない、法的に適正な金額なのか、判断に迷われましたら、ぜひ一度当事務所の弁護士までご相談をお勧めいたします。