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中心性脊髄損傷を認め後遺障害等級9級10号を認定した裁判例【後遺障害等級9級10号】(名古屋地裁平成30年4月18日判決)

事案の概要

49歳の男性Xの運転する普通乗用車が赤信号で停車中、Yの運転する普通貨物車に追突され、先行車に玉突き追突して、頚椎捻挫、胸椎捻挫等の傷害を負った。

症状固定後もXが訴えていた四肢のしびれ等の神経症状については、項部・頭・背部痛が生じているとして、自賠責から後遺障害等級14級9号が認定されるにとどまった。

そのため、Xは、本件事故によって7級4号の後遺障害として中心性脊髄損傷による四肢の神経症状が残存したとして、Yに対して、損害賠償請求訴訟を提起した。

<主張及び認定>

主張 認定
治療関係費 111万0582円 111万0582円
通院交通費 2万3355円 2万3355円
文書料等 9260円 9260円
休業損害 268万2190円 213万7153円
逸失利益 2235万5356円 1436万7938円
傷害慰謝料 159万4667円 155万0000円
後遺障害慰謝料 1000万0000円 690万0000円
小計 3776万5410円 2609万8288円
既払金 ▲186万0582円 ▲186万0582円
確定遅延損害金 289万2217円 197万1632円
弁護士費用 366万5483円 250万0000円
合計 4246万2528円 2870万9338円

<当事者の主張>

本件では、Xは、自身に生じた後遺障害の程度について、本件事故により中心性脊髄損傷、頚部捻挫、胸椎捻挫、右前腕挫傷等の傷害を負った結果、頭痛、頚部痛・頚椎可動域制限、背部痛、両前腕から右手掌・拇指側を中心としたしびれ感、右手指伸展制限、両大腿部後面から脹脛、第1趾を中心としたしびれ感が残存したため、後遺障害7級4号の「神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの」に相当すると主張しました。

これに対して、Yは、初診時においてXの脊髄に重大な損傷が生じたことを示唆するような症状が出ていたとの記載はなく、神経学的異常所見も記載されていないこと、Xが四肢のしびれの症状を訴えるようになったのが事故から3か月ほど経った頃からであること、自賠責保険も中心性脊髄損傷を否定していることなどから、Xが本件事故により中心性脊髄損傷の傷害を負ったとは認められず、四肢のしびれの症状と本件事故との因果関係がなく、後遺障害等級は14級9号にとどまると主張しました。

<裁判所の判断>

上記のような当事者の主張に対し、裁判所は、Xが初診時から右手指の巧緻性にかかる症状(細かい運動の障害)を訴えていて、検査の結果では右に異常が認められていること、受傷後MRI検査を受けるまで1か月半経過しているが、初診医はXの訴える症状について、むち打ち症に包含されるものと理解していたために時間が空いたものであるから、この点は重視できないこと、本件事故後のXの症状経過に関する説明は基本的に信用できることなどから、Xの症状は本件事故直後から生じていたものと認められる、と判断しました。

その上で、XのMRI画像上認められる異常所見(脊髄空洞症)についても、外傷性であると認められるとして、Xには本件事故によって中心性脊髄損傷の傷害が生じたと認定しました。

そして、Xに生じている頭痛、背部痛、上下肢のしびれ感等の症状については、Xが主張した後遺障害7級4号までは認めなかったものの、「神経系統の機能又は精神に障害を残し、服する労務が相当な程度に制限されるもの」に相当するとして、後遺障害9級10号を認めています。

その結果、逸失利益、後遺障害慰謝料を含め、合計で約2870万円もの賠償が認められることとなりました。

まとめ

本件事故でXに生じた中心性脊髄損傷は、脊柱に強い外力が加わることにより、脊柱の変形等とともに、脊髄が損傷する病態です。脊髄が損傷することによって、脳から身体の各部位への信号を送るという中枢神経の役割が果たされなくなり、その結果、四肢の麻痺や感覚障害、排泄機能障害等の障害が生じることになります。

このように、中心性脊髄損傷による症状は重篤な障害ですが、自賠責保険では末梢神経にかかる障害として認定されてしまうこともあり、簡単には適切な等級認定がされるものではありません。

本件で裁判所が認定したように、より重い中枢神経にかかる障害と認められるには、画像検査や神経学的検査、医師の意見書などによってしっかりと立証していくことが重要です。

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