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3級
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治療費・リフォームはどこまで認められる?【後遺障害等級3級】(東京地判平成26年12月24日)

事案の概要

X(51歳男性、自営業)は、大型自動二輪車で第2車線を直進していたところ、その前方道路において路外駐車場へ後退進入するために切り返し中だったY(被告)車両と衝突。

Xは、脊髄損傷、四肢麻痺等の傷害を負い、後遺障害等級3級3号が認定されたため、Y及びその勤務先である会社に対し、損害賠償を請求した。

<請求額及び認定額>

請求額 認定額
治療費 737万0957円 653万2343円
リハビリ費用 719万1240円 7万4340円
下肢装具費 51万9825円 35万4938円
自宅付添費 5046万2452円 1716万7504円
入院雑費 21万6000円 21万6000円
その他諸雑費 96万7889円 86万2639円
通院交通費 3416万1112円 1803万5079円
家屋改造費 1301万4605円 46万2953円
休業損害 3069万4755円 2897万8737円
逸失利益 2億2133万7678円 1億4443万5642円
入通院慰謝料 264万0000円 264万0000円
後遺傷害慰謝料 1990万0000円 1990万0000円
物的損害 500万1761円 374万0081円
過失相殺(5%) ▲1217万0014円
損害の填補 ▲2472万3850円
弁護士費用 3776万0748円 2065万0000円
合計 2億2715万6392円

<判断のポイント>

一般的に、治療費やリハビリ費用は症状固定時までしか相手方に請求することはできません。

しかし、症状固定後も治療やリハビリ等の必要性があると立証することができれば、相当といえる範囲内で将来分の費用の賠償請求が可能となります。

本件では、原告側は、原告の症状(左手指の巧緻運動障害、左下肢支持性低下、膀胱直腸障害等)の程度からすれば、症状固定後も治療やリハビリが必要だと主張して、将来分の治療費やリハビリ費用、通院交通費を請求していました。

これについて裁判所は、主治医らの「今後増悪の可能性がありアフターケアを要する」や「永久に自己導尿が必要と考える」等の診断結果から、症状固定後も、平均余命に至るまで、症状の増悪防止及び排尿管理のため、整形外科及び泌尿器科を継続的に受信する必要性・相当性が認められると判断し、整形外科及び泌尿器科への通院については将来分の治療費を認めました。そして、これに伴う範囲での、リハビリ費用や通院交通費も認容されました。

もっとも、内科や眼科など、後遺障害それ自体と直接関連しない通院については、必要性を認めませんでした。

<家屋改造費について>

脊髄損傷により四肢麻痺等になると、家屋をバリアフリーに改造する必要が生じることがあります。

本件でも、原告は階段昇降機の設置や、トイレのウォシュレット機能増設等の改造が必要だとして、これらの費用を請求していました。

もっとも、裁判所は、Xの症状の内容や程度に加え、Xが退院後も本訴訟に及ぶまでの間階段昇降機やウォシュレットが未施工であるにもかかわらず日常生活を送っていることから、自宅付添費とは別にこれらの設置の必要性はないと判断しました。(一部トイレは既に改修済みであり、この費用は認めています。)

<過失割合について>

本件は、過失割合の認定も興味深いところです。

本件事故は、路外の駐車場にバックで進入しようとしていたY車両が、切り返しの際にXが直進進行していた第2車線まで前進して塞いでしまい、衝突したという事案です。

原告側は、Yは、Y車両を幹線道路の第2車線まで前進させる際には、十分に走行車線の安全を確認すべきであり、また、そもそもそのような運転行為をしなくても十分に切り返しはできるため、Yに著しい過失があり、Yの一方的な過失であると主張しました。

対して、被告側は、Xは見通しのいい幹線道路を走行していたのであるから、Y車両と衝突するにはXの側にも脇見運転に近い前方不注視があったとし、Xに3割の過失があると主張しました。

この点裁判所は、Yは、X車両が走行してくることに気づいたにもかかわらず、切り返しを行い、Y車両を第2車線まで前進させたという過失があり、この過失は大きいとしながらも、Xとしても、ハザードランプを点灯させた状態で駐車場前の路側帯に停車していたY車両を認識していたのであるから、この動静に注意すべきであったとして、Xに5%の過失を認めました。

まとめ

非常に丁寧な事実認定を行い、一つ一つの論点に判断を下している裁判例です。

過失割合にしろ、損害額にしろ、「どのような事実があるのか」ということが大切で、これを立証できるかが鍵となります。

本件でも、主治医の診断書や意見書の記載が重要視され、それに基づく事実認定がされていますので、通院期間を通して、主治医の先生とのコミュニケーションをうまくとり、自身の症状や医師としての見解を書面に固定化してもらっておくことが肝要となります。

ひとつの事実が認められるか否かで大きく賠償額が変わってくることもあるので、重度後遺障害が見込まれる場合には、お早めに弁護士にご相談いただき、後の立証に備えていただきたく思います。

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