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9級
併合
自賠責非該当の左足関節機能障害について10級10号を認めた裁判例【後遺障害10級10号】

事案の概要

交差点を自転車で進行中のXが、左方一時停止道路から進入してきたY運転車両に衝突され、頚椎捻挫、左第5中足骨骨折等の傷害を負ったXが、Yに対し損害賠償を求めた事案。

Xの右肩・肘関節疼痛については、自賠責保険から、局部の神経症状として後遺障害14級9号の認定を受け、左足の関節機能障害については非該当との認定を受けていた。

Xは、裁判において右肩関節について10級10号の、左足関節について10級11号の関節機能障害がそれぞれ生じているとして併合9級を主張していた。

<主な争点>

右肩・左足の関節機能障害の後遺障害等級

<主張及び認定>

主張 認定
治療費 106万9224円 106万9224円
通院交通費 42万4480円 42万4480円
通院看護料 15万0920円 15万0920円
休業損害 230万5888円 125万8111円
通院慰謝料 193万7000円 120万0000円
逸失利益 1631万7170円 1258万7531円円
後遺障害慰謝料 690万0000円 510万0000円
小計 2910万4682円 2179万0266円
過失相殺(1割) ▲217万9026円
既払金 ▲422万6216円 ▲422万6216円
弁護士費用 240万0000円 154万0000円
合計 2727万8466円 1692万5023円

<判断のポイント>

(1)Xは、右肩の神経学的検査やMRI画像所見から、右肩腱板損傷が生じ、それにより右肩の関節可動域が左肩の可動域角度の2分の1以下に制限されているとして、10級10号の関節機能障害に該当すると主張しました。

(2)しかし、裁判所は、事故からまもない時期に作成された診断書に右肩に関する傷害の記載がなく、その際に画像撮影も行われていないこと、診療録上は腱板損傷を窺わせる記載や画像所見の記載がないことなどの理由から、右肩腱板損傷の存在を否定し、右肩に生じている可動域制限と本件事故との因果関係を否定しました。

そのうえで、右肩・肘関節の疼痛については、自賠責保険の認定どおり、14級9号と認めました。

(1)Xは、左足関節自体は骨折していないものの、左第5中足骨骨折による内出血が原因で長期間腫れが生じ、軟部組織が炎症を起こすなどして生じた癒着状態が関節機能障害の原因となっているとして、10級11号の関節機能障害に該当すると主張しました。

(2)この点について、裁判所は、まず、事故直後に左足に長期間腫れが続き、内出血が生じていた事実を認定しました。

そのうえで、関節拘縮の発生機序に関する医師の詳細な意見書に基づき、Xの左足に認められる関節拘縮による可動域制限は、左足の腫れや内出血による関節組織周辺の筋短縮や血流障害等の器質的原因によるものであると認めました。

これに加え、事故態様からもXの左足はかなりの衝撃を受けたと認められるとして、本件事故との因果関係も認め、Xの主張どおり、10級11号の後遺障害等級を認定しました。

まとめ

本件では、右肩の後遺障害については、Xの主張する腱板損傷は否認されましたが、左足の後遺障害については、関節拘縮による可動域制限が認められ、10級11号の認定がされました。

裁判所がこのような認定に至るうえで、特に重視されたのは、医師の意見書だと思われます。

医師の意見書は、その医師の医学的な知見に基づいて、患者に生じている症状が、どのような原因で生じていると考えられるものなのかや、その発生メカニズムなどを、合理的な説明を交えつつ、作成されるものです。

その内容が説得力を有するものであればあるほど、証拠としての価値も高く、後遺障害の認定判断において重視されると言えるでしょう。

本件についていえば、長期間の腫れや内出血が原因で可動域制限を伴うような関節拘縮が生じるかどうか、という点がポイントになっていたものと思われます。

この点について、X側の提出した医師の意見書では、関節拘縮の発生要因として、腫れや内出血等、皮膚、皮下組織の異常を挙げており、また、関節拘縮の生じるメカニズムについても、詳細な説明がなされていました。

そして、裁判所は、この意見書の内容に依拠し、Xに事故後長期間にわたって腫れや内出血が生じていたという事実に基づき、関節拘縮による可動域制限を認定したのです。

このように、医師の意見書は、裁判所が後遺障害等級の認定判断を行うにあたって参考にされるものとして、とても大きな役割を持つものであるため、被害者側としては、充実かつ説得力のある内容の意見書が得られるか否かが重要になるのです。

本件のように、自賠責でも認定されなかった後遺障害等級を裁判所から認定してもらえるケースは、それほど多くはありません。

しかし、裁判所は、自賠責の判断には拘束されずに判断するので、しっかりとした意見書などの証拠が得られれば、自賠責で認定されなくとも、適切な等級認定が得られる可能性があるのも事実です。

後遺障害等級の認定について悩まれている方は、まずは弊所まで一度ご相談ください。

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