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電動アシスト自転車の特殊性を過失割合に反映しなかった事例【死亡事故】(神戸地判平成26年3月28日)

事案の概要

X(73歳男性)は、信号機のない丁字路交差点において、一時停止規制のある交差道路から右折侵入しようとしたところ、丁字路交差点を直進するY運転の電動アシスト自転車と出会い頭に衝突した。Xは脳挫傷、腰椎捻挫等の傷害を負い、労働者災害補償保険では後遺障害5級が認定された。

Xは、本件事故に起因しない膵臓がんによって死亡したため、Xの相続人(原告)は、Xの生前の損害賠償請求権を相続し、Yにその支払いを求めた。

<主な争点>

①過失割合

<主張及び認定>

主張 認定
治療費 300万7412円 300万7412円
入院雑費 7万0500円 7万0500円
付添看護費 90万3000円 87万9500円
通院交通費 5万8925円 5050円
休業損害 420万8820円 420万8820円
逸失利益 1222万1856円 1205万4671円
入通院慰謝料 223万6667円 216万円
後遺障害慰謝料 1440万円 1440万円
過失相殺 20% 85%
既払金 ▲770万3234円 ▲770万3234円
(損益相殺含む)
弁護士費用 308万6010円 24万8000円
合計 3394万6116円 273万2000円

<判断のポイント>

(1)電動アシスト自転車の特徴と過失割合

電動アシスト自転車は、漕ぎ出しがスムーズで初速が速いことや、道路形状によってスピードが変わらないことが特徴的です。

一方で、相手方からすると、通常の自転車と見た目がそれほど変わらず、エンジン音等もないため、通常の自転車と大して変わらないだろうと甘く見がちです。

通常、過失割合は、道路形状、交通規制(信号機や一時停止の標識)、双方の車両の種類(車、二輪車、自転車)、双方の進路、速度などの事情によって定められます。

電動アシスト自転車の特殊性は、双方の車両の種類、速度に密接に関わります。

(2)Xの及びYの主張

Xの相続人は、「Xの自転車の速度は、一時停止をした後、右折しようと進行を始めた直後であったため、ほぼ歩行者と同様の速度であった。」、「Yの電動アシスト自転車は、ほとんど力を入れなくても進行し、衝突後Xが数メートル先の本件電柱まで飛ばされていることから、Yの電動アシスト自転車が、相当な高速度で交差点に進入した。」、「両者の速度からして、本件事故は、実質的に歩行者と二輪車の事故と同視できる。」として、Xの過失は20%を超えることはないと主張しました。

これに対し、Yは、「Xの自転車は一時停止していなかった。」、「Yの電動アシストのスイッチを切っていた。Yの電動アシスト自転車の速度は、時速10キロメートルないし15キロメートル程度にすぎなかった。さらに、Yは、本件交差点手前でブレーキを掛けて減速していたから、衝突時の速度は更に遅くなっていた。」として、Xには85%の過失があると主張しました。

<裁判所の判断>

裁判所は、損害の公平な分担との見地にたって、過失割合の判断を行います。

本件では、電動アシスト自転車の特殊性(初速が速いことや、道路形状によって速度が変わらないこと)を過失割合の判断要素としませんでした。

裁判所は、「電動アシスト自転車だから速度が速い」、「自動二輪車と同等だ」と短絡的に判断するのではなく、道路形状、交通規制、双方の車両の種類、双方の進路、速度などの事情を総合的に考慮した結果、Yの主張を認めており、実態に則した適正な判決といえます。

本件のように、電動アシスト自転車の特殊性は、道路形状、交通規制、双方の車両の種類、双方の進路、速度などの基本的な事情と密接に関わります。

ご自身が電動アシスト自転車に乗っていた場合、相手方が電動アシスト自転車に乗っていた場合のいずれであっても、当事務所にお気軽にご相談下さい。

<判断のポイント>

裁判所は、損害の公平な分担との見地にたって、過失割合の判断を行います。本件では、電動アシスト自転車の特殊性(初速が速いことや、道路形状によって速度が変わらないこと)を過失割合の判断要素としませんでした。裁判所は、「電動アシスト自転車だから速度が速い」、「自動二輪車と同等だ」と短絡的に判断するのではなく、道路形状、交通規制、双方の車両の種類、双方の進路、速度などの事情を総合的に考慮した結果、Yの主張を認めており、実態に則した適正な判決といえます。

本件のように、電動アシスト自転車の特殊性は、道路形状、交通規制、双方の車両の種類、双方の進路、速度などの基本的な事情と密接に関わります。

ご自身が電動アシスト自転車に乗っていた場合、相手方が電動アシスト自転車に乗っていた場合のいずれであっても、当事務所にお気軽にご相談下さい。

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