裁判例
Precedent
事案の概要
X(加盟店)は、クリーニング業を展開していたY(本部)とフランチャイズ契約を締結し、クリーニング業を営んでいた。
契約締結の半年後に新たに契約が締結され、新たな契約で、「フランチャイズ契約を解除する場合には、加盟店は本部に対して500万円を下限とする解約一時金を支払わなければならない」旨の条項が設けられた。
XがYに対し、Yとのフランチャイズ契約を解消する旨の書面を提出したところ、解約一時金500万円の支払の請求をうけた。
そこで、Xは、上記500万円の支払義務がないことの確認を求めて訴訟を提起した。
<争点>
「加盟店側から解約する場合には解約一時金を支払わなければならない」旨の条項の有効性
<判決の内容>
加盟店側から解約する場合には解約一時金を支払わなければならない」旨の条項は無効=加盟店は解約一時金を支払う義務はない。
①YがXとフランチャイズ契約を締結した当時、Yは何らの制限なく自由にフランチャイズ契約を終了させることができたこと、②フランチャイズ契約の締結にあたり、解約一時金の条項についての説明がなされなかったこと、③フランチャイズ契約締結当時、Xは加盟店として営業すべく多額の投資を行ったばかりで、解約一時金の支払い条項を含むフランチャイズ契約の締結を拒むことは事実上困難であったこと、④解約一時金に関する条項は、金額の下限のみが定められ、上限の定めがないことから、加盟店から期間満了による契約関係の終了の意思表示をすることを著しく困難にさせ、契約継続を相当程度強制するものであること、⑤他の例では特別な事情がない限り解約一時金は免除されるのが通常であったのに、Xに対してはフランチャイズ業務に直接関係のない理由で免除しないこととされたことが明らかであること等から、Xに500万円の解約一時金の支払を強制することは、著しく正義に反し、公序良俗に違反する(=Xは解約一時金500万円を支払う義務はない。)。
まとめ
フランチャイズ契約を解約する場合に解約一時金の支払を強いることは、フランチャイズ契約の継続を心理的に強制させるものであり、ひいては営業の自由や経済活動の自由を制限することになりかねません。
本判決の原審である(浦和地判平成6年4月28日)も、この点を指摘して、解約一時金の定めはXの解約の自由は経済活動の自由を不当に制限するもので公序良俗に反して無効であるとの判断を下しています。
本件は、特に、判決内容中の⑤の事情のように、通常は免除される解約一時金が、業務とは関係しない事情を根拠に解約一時金を免除していないことや、もともとは解約一時金に関する条項のないフランチャイズ契約を締結し、そのわずか半年後に、解約一時金条項を加えた契約の締結を求めている(事業を営むために既に多額の資本を投下しているXがこれを拒むことは事実上困難であった)点で、一定の特殊性あるケースといえます。
もっとも、加盟店側がどれだけ自由な意思判断に基づいて契約しているか否か、解約一時金の支払いがフランチャイズ契約からの離脱を制限する程度を勘案して、解約一時金条項の有効性について判断した事例として参考になるでしょう。