裁判例
Precedent
事案の概要
飲食チェーン本部(Y)とのフランチャイズ契約を締結した加盟店Xは、フランチャイズ契約に基づいて飲食店を開業したが、フランチャイズ契約にあたっての本部による勧誘方法、営業指導に違法があったこと等を理由に、損害賠償を求めた。
本部Yが行った営業指導として、加盟店Xが店舗を開店する際、使用対象も個数も使用期間も制限もない50円割引券をYが作成し、これを1万枚用意して加盟店Xに配布するよう指導していた。
<判決の内容>
本部Yが50円割引券を1万枚用意し、これを加盟店Xに対して配布するよう指導したというのであるところ、結果として、50円割引券の配布が収益に重大な影響を与えたとまで認めることは直ちには困難であるものの、使用対象も個数も制限がないため、割引内容が大きいことや、使用期間制限がないのに配布枚数も大量であったことに照らすと、相応に収益を圧迫していたことは容易に推認できるものであるにも関わらず、本部Yは、何ら事前に客観的な調査・予測などをすることなく、かつ、加盟店Xに事前に説明しその了承を得ることもなく、加盟店Xに50円割引券の配布を指導しているのであって、このような姿勢は加盟店Xの収益に対してきわめて無責任なものと言わざるを得ないから、本部として適切に加盟店の経営を指導したものとは到底評価することはできない。
本部Yは、本件フランチャイズ契約により課せられた営業指導義務を適切に果たしたものとはいえない。
まとめ
不適切な宣伝広告活動をしてしまえば、売上に反映されず効果が上がらないばかりか、宣伝広告費用ばかりがかさんでしまい経営を圧迫しかねません。
フランチャイズの加盟店の経営者には、経営に不慣れな方も多くいます。経営に不慣れな方に一切の宣伝広告活動を委ねてしまうと、このような事態に陥りかねません。
このようなフランチャイズシステムにおいて、フランチャイズシステムを展開してきた本部による適切な宣伝広告活動に関する指導がなされることは、加盟店を健全に経営させるために重要な事項であり、加盟店にとって重要な権利です。
本裁判例は、このような本部の能力、立場を考慮し、加盟店に宣伝広告活動の協力を求める場合には、合理的な根拠や事前の調査が必要であることを認めたものといえます。