裁判例

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フランチャイズ
加盟店の営業時間を指定する契約条項の有効性(平成23年12月22日東京地裁判決)

事案の概要

X(加盟店)らは、コンビニエンスストアをチェーン展開するY(本部)とフランチャイズ契約を締結したが、同契約内容には、加盟店に対し深夜営業をさせるものであった。

そこで、Xらは、Yに対し、深夜営業の強要の禁止を求めた。

<結論>

深夜営業を指定する内容の契約も有効

<判決の内容>

(1)深夜営業をする事業展開の経緯
Yは、昭和50年に深夜営業を開始し、それ以降、加盟店とのフランチャイズ契約において、付属契約に営業時間を24時間とする旨の条項を入れ、加盟店では、年中無休で24時間営業を行う態勢がとられるようになり、遅くとも平成8年ころまでには、Yの加盟店は24時間営業の店舗であるという認識が一般に広まっていた。

(2)XらとYとの契約締結の経緯
加盟店がYとフランチャイズ契約を締結するにあたっては、契約に先立って加盟希望者に資料が交付され、24時間営業の実施が明記されていた。

これらの資料は、Xらにも契約締結に先立って予め交付されていた。

(3)深夜時間帯の売上
深夜時間帯には売り上げが減少するのが一般的ではあるが、その時間を利用して発注業務や店舗の清掃・点検等の作業が行われることが多く、来客数の増加する早朝に合わせて早朝向け商品の発注、納品、検品、陳列等が行われている。

(4)深夜営業の危険性
コンビニエンスストアの深夜帯における強盗事件等の犯罪は軽視しえないものではあるが、Yの加盟店における犯罪の発生率が他社よりも高いというわけではなく、また、被害発生防止のため、侵入防止扉や防禦縦の設置、警備会社との警備契約の締結、Yの負担において盗難被害保険に加入するなどの措置を講じている

(5)コンビニエンスストア業界における深夜営業
我が国のコンビニエンスストア業界においては、24時間営業が広く普及しており、Yの加盟店においては24時間営業でない店舗も珍しくないという状況が生じた場合には、Yの利便性に関するイメージが損なわれることは避けがたい。

(6)結論
以上のような理由から、深夜営業を行うことをXらに求めることは、正常な商慣習に照らして不当にXらに不利益を与えるものではない。

まとめ

本件は、コンビニのフランチャイズチェーン本部が、加盟店とフランチャイズ契約を締結するにあたり、24時間営業を指定し、加盟店に24時間営業を求めることが、独占禁止法上の優越的地位の濫用(優位な立場を利用して殊更加盟店に不利益を与えること)にあたるかどうかが問題となった事案です。

加盟店は、本部とは独立した経営主体ですから、営業時間を自由に設定できるはずであり、長時間の過重労働がもたらす悪影響がある一方、コンビニ=24時間営業という消費者のイメージや利便性を保持するという本部側の利益もあります。

本裁判例では、後者の利益を重視した裁判例と言えるでしょう。

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