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フランチャイズ契約における損害賠償額の予定(平成19年7月19日福岡高裁判決)

事案の概要

X(加盟店)らは、ラーメン店をチェーン展開するY(本部:「Yラーメン」の商標のもとラーメン店を営む)とフランチャイズ契約を締結した。両者の契約書には、加盟店が契約の各条項に違反した場合には、損害賠償金として500万円又は相当額を本部に支払う旨の条項(損害賠償の予定条項)が存在した。

Xは、フランチャイズ契約時に、Yから、麺の原材料としてA県産の地粉を使用しているとの説明を受け、Yの指導の下、店舗内のパネルにその旨表示するとともに、顧客や取材に対しても同様の説明をしていた。

しかし、その後、麺の原材料がA建さんのものではないことが判明し、XとYは口論となった。

また、Yは、Y自身が営むラーメン店(チェーン店の本店)を移転したが、Xに対して、移転先の住所、連絡先、店舗のオープン時期等もしらせなかったため、その後これが発覚し、口論となった。

このような経緯の下、XはYに対して6か月分ののれん料(ロイヤリティ)30万円の支払いをしなかったため、YはXに対し、フランチャイズ契約を解除するとともに、損害賠償額500万円の支払を請求した。

<判決の内容>

(1)のれん料の不払いと契約の解除について
本部の一連の振る舞いは、フランチャイザーの態度として到底容認できないものであり、あるべき態度からかけ離れたもので加盟店の信頼を著しく損なうものである。

しかしながら、のれん料は、本部の商標やグループシステム継続使用の対価であるところ、加盟店は、本部の商標を利用してラーメン店の営業を継続し、本部が指定する麺、醤油等を使用していたのであるから、これに対する対価の支払義務を免れることはできないことは明らかであって、のれん料の不払いが正当化されることにはならない。

こののれん料の不払いは6か月に及んでいたことからすれば、このことを根拠に本部が行ったフランチャイズ契約の解除も有効である。

(2)500万円の損害賠償請求について
契約書には、損害賠償額について、「500万円又は相当額」と定めているが、この文言からすれば、この約定は、契約違反のうち一定の者については損害賠償額の予定(500万円)を定めたものであるが、それ以外について、一般の債務不履行責任によることを確認的に規定したものに過ぎないと考えるのが、当事者の合理的意思に合致する。

損害賠償額の予定額が500万円と高額であることからすれば、この部分が適用されるのは、契約違反のうち、契約終了後の商標の無断使用による営業継続など、契約違反の内容が本部の行うフランチャイズ事業の根幹を揺るがす恐れがある場合に限られ、このような限定解釈をすることによって初めてこの部分を有効とすることができる。

このような観点からすると、加盟店ののれん料の不払いについては、損害賠償額の予定を定めた部分(500万円)が適用されないことは明らかである。

まとめ

フランチャイズシステムにおいて、契約条項に違反した場合の損害賠償額として、一定額を支払うことを事前に予定した条項が定められることがあります。

このように、事前に契約違反をした場合の損害賠償額を予め定めておくこと自体は認められています。

もっとも、この条項の効力を完全に認めなかった裁判例も多くあり、本裁判例もそのうちの1つです。

損害賠償額の予定条項の効力が否定または限定的に解釈されたものは、①実際の運用が統一的でないケース、②契約内容そのままの金額を認めるべきでない事情が存在したケース(解約に至った原因等)、③予定された損害賠償額が高額であるケース(本裁判例のケース)を考慮要素としています。

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