裁判例
Precedent
事案の概要
X(加盟店)は、コンビニエンス・ストアのフランチャイズチェーンを営むY(本部)とフランチャイズ契約を締結した。
XとYとのフランチャイズ契約においては、Xの仕入れた商品の代金をYがXに代わって支払い、この代金については、加盟店が本部に対して支払義務を負うロイヤリティ等と一括して差引して決済をする内容となっていた。
Xは、Yに対し、YがXの仕入れた商品の代金をXの代わりに支払ってきたことに関し、支払先、支払日、支払金額、商品名とその単価・個数、値引きの有無等、具体的な支払内容について報告を求めた。
<判決の概要>
コンビニエンス・ストアは、商品を仕入れてこれを販売することによって成り立っており、商品の仕入れは、加盟店の経営の根幹を成すものということができるところ、加盟店経営者は、Y(本部)とは独立の事業者であって、自らが支払義務を負う仕入先に対する代金の支払をY(本部)に委託しているのであるから、仕入代金の支払についてその具体的内容を知りたいと考えるのは当然のことである。
また、Y(本部)は、加盟店経営者から商品の発注データ及び検品データの送信を受け、推薦仕入先から検品データに基づく請求データの送信を受けているのであるから、Y(本部)に集約された情報の範囲内で、具体的な支払内容を加盟店経営者に報告すること(以下、この報告を「本件報告」という。)に大きな困難があるとも考えられない。
そうすると、本件発注システムによる仕入代金の支払に関するY(本部)から加盟店経営者への報告について何らの定めがないからといって、委託者である加盟店経営者から請求があった場合に、準委任の性質を有する本件委託について、民法の規定する受任者の報告義務(民法656条、645条)が認められない理由はなく、本件フランチャイズ契約の合理的解釈としては、本件特性があるために被上告人は本件報告をする義務を負わないものと解されない限り、Y(本部)は本件報告をする義務を免れないものと解するのが相当である。
まとめ
本件のフランチャイズ契約においては、加盟店経営者が発注、仕入れた商品を本部が加盟店経営者に代わって代金を支払い、その代金の決済は加盟店が本部に送金する売り上げと差引計算される方法によって行うことが定められていましたが(オープンアカウント方式)、仕入れ代金の支払いに関する加盟店への報告については何らの定めがなかったという事案です。
最高裁は、このような場合に、本部側が仕入代金に関する情報を加盟店に報告する義務があるかという点について、商品の仕入れは加盟店経営の根幹をなすため、その情報を加盟店が知ろうとするのは当然であること、本部側がかかる情報を提供することがさほど困難ではないこと、商品の仕入代金の支払いの事務は、民法上の準委任の性質を有すること(準委任では受任者の報告義務が規定されている)から、報告義務に関する規定が契約上明記されていなくても、その報告義務を負うとしたものです。
なお、本部が負う報告義務の具体的内容に関しては、審理を尽くさせるために原審に差し戻されています。