裁判例

Precedent

フランチャイズ
契約終了時の対処(本部が自力で店舗内の物を撤去できるか)(平成14年5月23日名古屋高裁判決)

事案の概要

本部Yが加盟店Xの本部批判や他の加盟店の不信を煽ったこと理由として、Xとのフランチャイズ契約を解除したため、XがYに対して、保証金の返還などを求めた事件。

その中でXは、フランチャイズ契約終了後に、Yが店舗の看板やレジ内の金銭等を搬出したことや、店舗の更衣室ドアの鍵を破壊したことについての損害賠償も請求した。

<判決の概要>

Xは「コンビニ情報」と称してYの経営手法を批判する雑誌記事等を店内に掲示してYのイメージを毀損した。

また、他の加盟店に合同陳述書を配布してYへの不信感を煽る行為を行っていた。

そうすると、本件においては、当事者間の信頼関係を破壊されたと言える事情が認められるといえ、Yによるフランチャイズ契約解除は有効である。

また、本件フランチャイズ契約50条においては、本件契約の終了と同時に、Yは、事前の通知なくして本件店舗内に立ち入り、店舗設備・在庫品・レジスター内現金を占有できる旨の条項があることが認められる。

しかしながら、この条項はYにそのような権利があることを定めたものであって、加盟店は独立した事業者である以上、加盟店が反対しているにもかかわらず、その意思に反して、店舗設備・在庫品・レジスター内現金の占有を取得することまで許容したものと解することはできない。

したがって、Yが本件店舗内に立ち入ることは不法行為とはいえないが、Xが反対しているにもかかわらず、Xの占有する店舗設備・在庫品・レジスター内現金を取得することは、権利者が法的手続を経ないで自力救済により権利を実行することに他ならず、それがやむを得ない特別の事情がある場合を除いて違法というべきである。

そして、本件証拠上、Yが自力救済行為をしなければならなかったやむを得ない特別の事情は、これを認めることができないから、Yの本件契約の解除は有効ではあるけれども、不法行為責任を免れることはできないというべきである。

まとめ

フランチャイズ契約では、契約終了後に本部が自ら店舗内の設備などを撤去できるという条項が入れられていることがあります。

これは、元加盟店が契約終了後に建物の明け渡し義務を果たさない場合に備えた条項です。

しかし、本裁判例では、そのような条項がある場合でも、店舗内の設備などを撤去できる権利があるだけであり、元加盟店の意思に反して店舗内の設備などを実力を行使して撤去することは、やむをえない特別の事情がない限りは不法行為が成立して損害賠償責任が発生すると判断されました。

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