裁判例
Precedent
事案の概要
Yは、コンビニエンスストアのフランチャイズを展開する本部である。
Xは、Yとの間でコンビニエンスストアに関するフランチャイズ契約を締結し、店舗を出店した。
しかし、開店日こそ損益分岐点を超える売り上げがあったものの、それ以降は日の売上が損益分岐点を上回らず、赤字経営が続いた。
そこで、Xは、Yに対して、Xの出店にあたってYが売上予測や損益分岐点に関する情報を提供する義務を怠ったとして、損害賠償の請求をした。
<判決の概要>
(1)本部Yに情報提供義務違反があるかどうか
Yは、損益分岐点をはるかに下回る売上予測の数値をXに開示しておらず(しかも、上記のとおり本件立地調査の売上予測は、綿密さ、手堅さという観点からすると見劣りするものであって、あるべき立地調査における売上予測はそれをさらに下回る可能性が大であった。)、近隣店舗の売上実績に依拠して、本件店舗も損益分岐点をクリアーできるかのような説明に終始したのであるから、YのXに対するこのような情報提供の在り方は大いに問題であって、Yには情報提供義務違反があることは明らかであるものといわなければならない。
(2)損害として認められる範囲
営業中に生じた赤字については、売る挙げ金額の合計額に、Yの主張する平均粗利率をかけて、粗利を算出し、さらにYの店舗設備使用料の減額分を加えた合計額を利益の総額と推認した上で、その額から、収入欄記載の返金分と支出欄記載の経費を控除した残額が赤字分である。
別途慰謝料を認めなければならないとするまでの事情はない。
まとめ
本裁判例は、フランチャイズを営む本部が、加盟店の出店にあたり、売上予測等の情報提供に杜撰な点があり、これが法的に情報提供義務違反と認められる事案において、加盟店に生じた赤字分を損害として本部に請求できるとした裁判例です。
この裁判例とは異なり、事業は、開業者が自己のリスクにおいて行うものであるからその赤字部分は本部には請求できないとする考えもあります。
しかし、そもそも、フランチャイズシステムの特徴は、本部に適切な情報提供させて加盟店に事業の健全な運営をさせるという点にあるため、事業者の自己責任のみを根拠に赤字を損害として請求できないとすることは妥当でないといえるでしょう。