裁判例
Precedent
事案の概要
航空会社にパイロットとして勤務する夫は、妻と婚姻し、長女と二女をもうけた。
夫は、妻が婚姻当初からしばしばヒステリー状態となる傾向があり、婚姻から約20年後、精神疾患を理由に激しい暴行等を繰り返し、措置入院に至ったことなどから、妻との離婚を求めた。
妻は、離婚原因はないと主張しつつ、仮に夫の離婚請求が認められた場合、慰謝料的要素を含む財産分与を求めた。
<争点>
慰謝料的要素を含む財産分与は認められるか
<判決の内容>
夫婦間の婚姻破綻の主要な原因が、妻の精神疾患に伴う顕著な攻撃的言動とこれをめぐるトラブルに存した。
また、夫が一方的に妻に別居や離婚を強要したなどの事情が認められない。
したがって、婚姻破綻について夫に帰責性が存したとは認められず、夫の妻に対する財産分与額の算定に当たり、慰謝料的要素を考慮することは相当でない。
まとめ
財産分与は、婚姻中に夫婦が協力し合って築いた財産を分けることをいいます。
そのため、婚姻期間が長ければ長いほど、数ある離婚条件の中で、最も大きな金額を占めるものになります。
婚姻中に夫婦が協力し合って築いた財産は、離婚時には、50:50の割合で分けることが通例です。
本件のように、慰謝料的要素を考慮して、40:60などの分与を求めることもできますが、離婚に際しての慰謝料を別途請求することができる以上、このような主張は認められないことが多いです。
ただし、一方配偶者に経済的な余力がない場合や、婚姻中に夫婦が協力し合って築いた財産の中に不動産が含まれる場合は、公平な離婚条件を定めるために、慰謝料的要素を考慮した財産分与が認められる場合がありますので、財産分与は必ず50:50になるものと諦めずに主張をすべきです。