裁判例
Precedent
事案の概要
夫婦は婚姻後、長女と長男をもうけた。
約25年の同居期間を経て、妻は長女及び長男を連れて家を出た。
別居後、夫は、婚姻継続の意思を表明していたものの、妻が反省して別居時に持ち出した長女及び長男の名義の預金通帳などの財産を返し、帰ってくれば婚姻関係は修復されると主張を固持し、財産分与について争いが生じた。
<争点>
子ども名義の預貯金は、夫婦の共有財産にあたるか
<判決の内容>
本件で問題となっている各財産の帰属関係及びその評価額について、双方の間で主張が対立している。
ところで、婚姻期間中に得られた収入等により夫婦のいずれかの名義又は子供名義で取得した財産は、夫婦の共有財産に当たるもので、財産分与の対象となることは明らかである。
また、特有財産の換価代金と婚姻中に蓄えられた預金等を併せて取得した財産も夫婦の共有財産に当たるもので、財産分与の対象となるものであり、ただ、財産分与の判断をするに当たって、その財産形成に特有財産が寄与したことを斟酌すれば足りるものと言うべきである。
もちろん、婚姻中に取得されたものであっても、親兄弟からの贈与や、相続による取得物あるいは婚姻前から所持していた物又はそれらの買替物は、それを取得した配偶者の特有財産であって、財産分与の対象となるものではないことは当然であるが、他の配偶者がその維持管理に貢献した場合には、その事情も財産分与に当たって考慮されなければならない。
したがって、そのような観点に立って、婚姻中に取得した個々の財産が各配偶者の特有財産であるか、それとも夫婦の共有財産に該当するかを判断するに当たっては、取得の際の原資、取得した財産の維持管理の貢献度等を考慮して判断しなければならないが、特段の事情が認められない場合には、夫婦の共有財産に属するものとして、財産分与の対象となるものと言わねばならない。
まとめ
子ども名義の預貯金が、夫婦の共有財産にあたるか否かは、個別の事情により判断は様々であり、画一的な基準はありません。
子ども自身のために貯蓄されたものであれば、本件と異なり、子ども自身の財産と判断されることもあります。お年玉の貯蓄であっても、夫婦の共有財産にあたるか、裁判例の判断は分かれるほどです。
そのため、裁判所としても、基準めいたものは、本件のように「取得の際の原資、取得した財産の維持管理の貢献等」ということしか述べられず、個別の事情によって、公平性考えて判断をするしかありません。
子ども名義の預貯金が共有財産にあたると主張するには、その金額、原資、夫婦双方の資力、子どもの年齢や生活状況、婚姻期間中の監護状況、財産管理の実態等、様々な事情の説明が必要となります。当事務所では、名義がいずれであろうと、預貯金の公平な清算を目指します。