裁判例
Precedent
事案の概要
夫婦の間には長男Aがおり、夫は長男Aの学資保険に加入した。
夫は、地方公務員として市役所に勤務し、妻は、民間企業に勤め、長男Aの出産後、1年の育児休暇を経て、職場復帰した。その後も順風満帆に婚姻生活を送っていたものの、妻は、夫婦生活に嫌気が差し、長男Aを連れてマンションを出た。
妻は、夫に対し、離婚を求めるにあたって、長男Aの学資保険として夫名義で積み立てられた300万円は、親権者たる妻自身が取得するのが相当であるとして、300万円全額の無条件の分与を求めた。
<争点>
学資保険の財産分与における取扱い
<判決の内容>
夫婦の離婚にあたり清算すべき財産としては、・・・契約者を夫とする長男Aの学資保険であると認められる。
また、弁論の全趣旨によると、平成15年3月14日から現在まで、夫は婚姻費用を分担していないものと認めることができ、財産分与にあたっては、この点も考慮しなければならない。
保険契約者及び保険受取人を夫とし、被保険者を長男Aとする学資保険の、口頭弁論終結時における解約返戻金の額は、280万円である。
未払いの婚姻費用につき検討すると、夫は、妻に対し、別居時から、本件口頭弁論終結の日までの婚姻費用として、100万円を支払うべきである。
財産分与の対象となる財産(学資保険の解約返戻金を含む。)の合計は、5048万7173円です。
そして、これまで検討した夫婦間の婚姻から婚姻関係破綻に至る経緯や各財産形成状況及び財産形成における夫婦双方の寄与度並びに未払の婚姻費用、婚姻前の資産の状況等、本件に現れた一切の事情を総合して勘案すると、本件においては、夫から妻に対し、400万円を財産分与するのが相当である。
まとめ
本件は、学資保険の解約返戻金が財産分与の対象となるかが争われ、裁判所は、当然に財産分与の対象となるとの判断をしました。
学資保険は、子どものために契約し、将来の教育費に備えるものですので、離婚の際に清算の対象になることは、意外かもしれません。
学資保険の保険料は、父母が納めるのが通常であり、その本質も貯蓄の要素が強いことから、離婚に際して、財産分与の対象となるのが一般的です。
もっとも、学資保険が財産分与の対象となるのは、婚姻期間中に、夫婦のお互いの協力によって保険料が支払われたといえる場合に限られます。
そのため、婚姻期間中の貢献度をきちんと主張立証することが重要になりますので、是非一度どのような主張立証が可能か、ご相談ください。