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離婚問題
「婚姻を継続し難い重大な事由」が肯定された裁判例③

離婚の合意が成立しない場合、法律で定められた離婚原因が認められなければ、離婚をすることはできません。

法律で定められた離婚原因の中で、もっとも抽象的で分かりづらく、法的評価が分かれ易いのが、「婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」との項目です。

「婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」とは、別居期間の長短を始め、様々な事情が考慮されることになります。

そこで、実際の裁判において、どのような事情が考慮され、「婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」との離婚原因が判断されるか、以下の裁判例から解説を致します。

事案の概要

(東京地裁平成17年7月11日判決)

夫は、妻の冷たい性格、夫の財産と働きを当てにして自己名義の財産を作ろうとする妻のやり方に対する不信及び警察に対して夫を告発したり、夫に対して損害賠償請求訴訟を提訴したりするなどの妻の態度を原因として、夫婦関係は完全に破たんしていると主張し、離婚及び財産分与を求めた。

<争点>

婚姻を継続し難い重大な事由があるか否か

<判決の内容>

裁判所の判断は以下のとおりである。

夫は、当初、妻の両親や子らと同居していたものの、同人らとうまくゆかず、家を出て単身でアパートに移ったが、妻もそのような状態を改善すべく積極的に調整に乗り出すこともしないまま、夫婦の家を購入することで、このような夫と妻親族とが融和する機会は構造的に失われた。

また、夫婦共有財産を形成・維持する過程で、夫と妻とは相互不信を募らせた結果、薬局経営や不動産賃貸経営を行うために夫婦で設立した有限会社の資産につき、妻が夫を警察に告発したり、夫に対する損害賠償請求訴訟を提訴したりするなど、夫と妻との夫婦関係は完全に破たんしていることは明らかである。

そして、夫婦関係の破たんは、夫や妻のどちらか一方にのみ責任があるということはできない。

まとめ

本件は、判決までの別居期間が8年間であり、婚姻期間が1年弱であることを考えると、別居期間は長期に及んでいたものといえます。

また、別居に至る原因が、夫と妻の親族、子らとの不和にあり、判決文の中で、当該関係が改善される機会がなくなったことを重視していることが窺われます。

本件で問題となっている、夫婦共有財産を形成・維持する過程での相互不信については、これにより直ちに「婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」に該当するというものではありません。

しかし、本件の場合、夫婦の家を購入する際に、夫が手持ち資金を拠出したにもかかわらず、妻の単独名義としたことや、夫婦で設立した有限会社の資産につき妻が夫に訴えを提起したこと及び妻が夫を横領で告発したことが認められており、これらの事情が決め手になり、夫婦共有財産を形成・維持する過程での相互不信は、修復困難な状態に至ったとの判断がなされました。

このように、夫婦が同居し共同生活を営むことができない状態や、夫婦の資産についての相互不信は、夫婦がそれぞれ関係を修復しようとする意思を欠き、修復困難であると判断された場合のみ、「婚姻を継続し難い重大な事由」があると判断されることになります。

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