裁判例

Precedent

フランチャイズ
契約締結時における本部の説明義務 ~フランチャイズ事業の法適合性~(平成11年10月27日東京地裁判決)

事案の概要

コンビニエンスストアを経営していたXは、酒類や医薬品の宅配販売のフランチャイズチェーンに興味を抱き、これを企画するYとフランチャイズ契約を締結しようと考えた。

Xは、税務署に対して、Yから交付されたマニュアル等を示し、このシステムによる酒類の宅配販売が酒税法に違反しないかどうかを確認したところ、税務署は、「マニュアル通り運営していれば酒税法違反の点は無い。」との回答をした。

しかし、XとYがフランチャイズ契約を締結した後、Yの企画する酒類や医薬品の宅配販売システムが酒税法に違反するものとして、Yは起訴され、有罪判決を受けた。

そこで、Xは、自らの営業をやむなく停止せざるを得なくなったとして、Yに対して損害賠償請求をした。

<判決の概要>

Yの企画した酒類及び医薬品の宅配販売方法は、酒税法や薬事法上、酒類や医薬品を販売する免許制を潜脱するもので、酒税法及び薬事法に違反する取引形態である疑いは高い。

今までになかった業務形態を模索し、新しい発想で営業を行うベンチャー企業が我が国の経済を活性化し、行政法規に違反することなく有益な事業として成立する余地もあるのであるから、結果的に右営業が行政法規に違反することになったとしても、それ自体をもって不法行為法上違法であるということはできない。

しかしながら、自ら単独で右事業を行うのではなく、右事業における営業所となるべき第三者を勧誘し、これらの者を右事業に組み入れて事業を行おうとする者は、第三者に対し、右事業の法適合性に関する問題点を十分説明し、第三者においてその事業が行政法規に違反する可能性やその問題点を認識させた上で、新しい事業に参加するか否かを自己責任において判断させる義務があるというべきである。

Xとフランチャイズ契約を締結するにあたって交渉を行ったYは、Xに対し、フランチャイズ契約を締結する際に、本件事業の将来性を説明するばかりでなく、自らが企画する酒類及び医薬品の宅配販売が酒税法及び薬事法に適合するか否かについての問題点及び危険性を説明し、Xに右各法規に違反する可能性を認識させた上で、右事業に参加させる義務があった。

まとめ

本裁判例は、フランチャイズ契約の締結時における本部の説明義務違反を認めた裁判例であり、その中でも、本部の企画するフランチャイズシステムが行政法規に違反するか否かに関する説明を怠った点を説明義務違反としているところに特色があります。

判決が示したように、新しいフランチャイズシステムが、結果として行政法規に違反するものであったとしても、それが軽微な行政法規違反であり、違反の可能性について予見が困難であるにもかかわらず、本部の説明懈怠を理由に損害賠償責任を負わせては、新しいビジネスを生み出すことに萎縮が生じてしまいますから、このような場合に不法行為を構成するとすることは難しいものと思われます。

しかし、本事例においては、①Yが自らのフランチャイズシステムを熟知しており、②その事業態様が酒税法や薬事法に違反する可能性が高く、③違反の程度も酒税法や薬事法の免許制を潜脱する重大なものであったことを理由に、不法行為性を認めたものと思われます。

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