裁判例

Precedent

フランチャイズ
契約期間満了に伴い契約の更新を拒絶することができる場合(平成19年7月23日東京地裁判決)

事案の概要

X(加盟店)は、サンドイッチ販売のフランチャイズチェーンを営むY(本部)とフランチャイズ契約を締結した。

XとYとの間で締結されたフランチャイズ契約では、契約期間は6年間とされ、契約期間満了の6か月前までに当事者双方からの申出がない限り、契約は自動的に2年間更新される旨の定めがあった。

XとYとの契約は、2回自動更新がされたが、Yは、3度目の契約期間満了に先立って、契約期間満了時には契約を更新せずに終了させる旨(更新拒絶)の意思表示をした。

Xは、Yによる上記更新拒絶の意思表示は無効であるとして争った。

<判決の概要>

Xは、Yとのフランチャイズ契約に際して、内装工事や加盟料、什器のリース料等の初期費用としておよそ2135万円を負担していること、店舗の賃貸借契約における保証金として650万円を預託していることが認められ、これらの投下資本を回収する必要がある。

他方、本フランチャイズの経営についてみると、フランチャイズ全体の売上や利益が上がらず、本部であるYがフランチャイズから撤退し、現在この事業を行っているのはXだけとなっている。

そのため、XとYとの契約は形骸化し、本部による指導やロイヤリティの支払がないなど、実質的にフランチャイズシステムは機能していなかった。

上記のような事情からすれば、Xは、本フランチャイズへの参加時に相当の資本投下をしているものの、2度にわたるフランチャイズ契約の更新の中で投下した資本を相当程度回収したものと認められること、本部であるYがサンドイッチ販売ビジネスからの撤退を余儀なくされるほど売上や利益があがっておらず、フランチャイズ契約を継続させることによって損害が発生し続けることなどの事情に照らすと、更新が予定されているとしても、契約を継続し難いやむを得ない事由が存在することが認められる。

まとめ

本裁判例は、フランチャイズ契約において、自動更新の規定が置かれている場合の更新拒絶が認められるための条件として、フランチャイズ契約を継続し難いやむを得ない事由が存在する必要があるとの前提に立っています。

この理解を前提に、契約を継続したいと考える加盟店の不利益(投下資本回収の必要性の程度)と、フランチャイズ契約を終了させたいと考える本部の不利益(契約を継続させた場合に本部が被る損害)とを考慮して、「契約を継続し難いやむを得ない事由」があるか否かを判断しています。

本裁判例では上がっていませんが、その他の裁判例では、更新を拒絶された側の落ち度等、契約を継続的に行ってきた当事者としての信頼関係が失われているか否かといった事情も、「契約を継続し難いやむを得ない事由」の判断要素として挙げています。

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