裁判例
Precedent
事案の概要
フランチャイズ加盟店のXらは、フランチャイズ本部のYとフランチャイズ契約を結んでいた。
しかし、Xは、Yに対して、Yの勧誘が公序良俗違反でフランチャイズ契約は無効であり、そうでなくとも不法行為に該当するとして、加盟金の返還又は同額の損害賠償を求め、また、Yの委託を受けてYの経営指導を行っていたZ社に対しても、同額の損害賠償を求め、東京地方裁判所に訴えを提起した。
Y及びZは、「本部の本店所在地を管轄する裁判所をもって第1審の唯一の管轄裁判所とする」という専属的管轄合意があると主張して、Yの本店所在地を管轄する大阪地方裁判所で裁判を行うよう移送を申し立てた。
<判決の概要>
(1)Yの移送申立てについて
「本部の本店所在地を管轄する裁判所をもって第1審の唯一の管轄裁判所とする」という専属的合意管轄が定められているから、原則として、この管轄合意によって他の管轄地で裁判を行うことは排除されている。
しかし、合意がない場合に適用される法律上の管轄は東京地方裁判所にある。
また、Yは資本金が6億2208円余であるのに対し、Xらは資本の総額又は額が300万円から1450万円の小規模な会社であり、資力ひいては訴訟遂行のための費用負担能力には大きな格差がある。さらに、Y,Zの代表者の住所は東京都内又はその近辺にある。
これらを考慮すると、民事訴訟法17条の趣旨を尊重し、訴訟の著しい遅滞を避け、かつ、当事者間の衡平を図るためには、大阪地方裁判所に移送することはせず、むしろ東京地方裁判所で審理するのが相当である。
(2)Zの移送申立てについて
専属的合意管轄合意はXとYの間でのものであり、Zにその合意の効力は及ばない。
また、併合審理、統一的判断のためには、Zに関する部分のみを移送することは相当ではない。
まとめ
フランチャイズ契約では、専属的合意管轄という特定の裁判所(主に本部の本店所在地)でしか訴えを提起できないことを定めた条項が入れられていることがあります。
加盟店がこの条項に必ず従わなければならないとすると、加盟店が本部を訴えるには本部の本店まで行って訴訟を提起し、裁判を継続していかなければならず、遠方の加盟店にとっては相当な負担です。そこで、この条項が入れられている場合、加盟店は必ず従わなければならないのかが問題となります。
本裁判例では、本部と加盟店の資力ひいては訴訟遂行のための費用負担能力には大きな格差があること、Y,Zの代表者の住所は東京都内又はその近辺にあり東京地方裁判所での裁判遂行に不都合がないことをあげています。
このような判断要素が考慮されるので、フランチャイズ契約において、加盟店は、本部の本社との距離があっても訴訟をすることを初めから諦めることはありません。
本部とのトラブルがあった場合には、早めに専門家に相談することをお勧めします。