交通事故によるむちうちの治療費は自己負担?一括対応の注意点について解説

執筆者 実成 圭司 弁護士

所属 第二東京弁護士会

皆さまのご相談内容を丁寧にお聞きすることが、より的確な法的サポートにつながります。会話を重ねながら、問題解決に向けて前進しましょう。

「むちうちになるとどのくらいの治療費がかかるのか」
「むちうちの治療費を請求するならどこなのか」

事故によってむちうちになった方の中には、治療費について詳しく知りたい方もいるのではないでしょうか。

本記事では、治療費の目安となる金額や自己負担を減らす方法、治療費を請求するときの注意点等についてご紹介します。

1.むちうちの症状と治療期間

むちうちといっても様々な症状があります。

たとえば、以下が代表例です。

  • 痛み
  • 筋肉のこわばり
  • 腫れ、炎症
  • しびれ、知覚異常

もちろん、症状に個人差はありますが、痛みやしびれ等が生じる方が多くみられます。

注意しなければならないのは、症状が出る部位は受傷部位に限らないことです。たとえば、首のむちうちで手指にしびれが出るという方もいらっしゃいます。

むちうちの平均的な治療期間は、3か月程度です。

しかし、しびれ等の神経症状が強い方は半年治療しても症状が残ることがあります。

もし半年治療を継続しても痛みやしびれなどの症状が残っている場合は、後遺障害申請を行う必要があります。

事故初期に感じている痛みがその後強くなるのか、どのくらいの期間続くのかは、被害者ご本人にもわからないところです。

そのため、事故後、身体に何らかの異変が生じている方は、放置せずに速やかに検査を受けるようにしましょう。

2.むちうちの治療費はどのくらいかかるのか

交通事故の治療費は原則自由診療のため、安くはありません。

通院頻度にもよりますが、自由診療で整形外科に1か月通うとだいたい10万円前後の治療費がかかります。

治療期間が延びれば、それだけ治療費もかさみます。

交通事故被害者で通院が必要な方は、仕事復帰できない状態であったり、働いていても減収が生じているケースが少なくありません。そのため高額な治療費は大きな負担になります。

3.通院中の治療費を自己負担せずにすむ方法

交通事故被害者の方が、通院が必要な状態であるにもかかわらず、経済的な理由で通院ができないということにならないよう、通院中の治療費を自己負担せずにすむ方法として、以下の方法があります。

  1. 相手方任意保険会社の一括対応を利用する
  2. 自身の人身傷害保険を利用する
  3. 労災保険を利用する
  4. 自賠責保険へ請求する

順にご説明します。

(1)相手方任意保険会社の一括対応を利用する

加害者が任意保険に加入している場合は、一括対応を利用することができます。

一括対応とは、加害者側の任意保険会社が直接病院に治療費を支払ってくれる制度です。

治療費の立て替えや領収書の管理をする必要がないため、かなりの負担を軽減することができます。

事故によってむちうちになった場合は、まず相手方任意保険会社に連絡を入れ、一括対応の案内を受けましょう。

一括対応を始めるにあたっては、病院が保有する被害者の情報を相手方保険会社へ共有することへの同意が必要です。

そのため、相手方任意保険会社から被害者ご本人のもとへ、同意書にサインしてほしいとの連絡がきます。

交通事故被害者の中には、事故初期に相手方からサインしなければならない書類がきたことに身構えてしまわれる方も少なくないですが、この一括対応を開始するための同意書についてはサインをしても問題ありませんので安心して手続きを進めましょう。

(2)自身の人身傷害保険を利用する

相手方任意保険会社による一括対応が使えない場合は、ご自身が加入している人身傷害保険が使えないかを確認しましょう。

人身傷害保険とは、交通事故で怪我をしたときに、ご自身の怪我を補償するための特約です。

加害者が任意保険に入っていない場合や、過失割合が定まらないことを理由に相手型保険会社が一括対応を拒否した場合など。人身傷害保険が役に立ちます。

また、人身傷害保険は、過失割合にかかわりなく支払われますので、ご自身の過失割合が大きい場合にも、人身傷害保険を使うメリットがあります。

(3)労災保険を利用する

相手方任意保険会社による一括対応がなく、人身傷害保険もない場合は、労災保険が使えないか確認してみましょう。

労災保険が使える方は、勤務中に事故に遭った方(業務災害)もしくは通勤中に事故に遭った方(通勤災害)です。

労災保険を利用した場合、労災指定の病院で診察などを受けた場合には、窓口負担はありません。

なお、労災保険も、人身傷害保険と同様、過失割合にかかわりなく支払を受けられます。

(3)自賠責保険へ請求する

相手方任意保険会社による一括対応がなく、ご自身の人身傷害保険もなく、業務災害でも通勤災害でもない場合は、ご自身で一度治療費を立て替えて通院しなければならないことになりま

このとき立て替えた治療費は、相手方の自賠責保険へ請求することで、一定の上限はあるものの、自賠責保険から払ってもらうことができます。

そのため、自費で通院することになった場合は、領収書類はきちんと保管しておくようにしましょう。

とはいえ、毎度自由診療の治療費を払うと負担は大きいです。

健康保険組合等で「第三者行為による傷病届」を提出し手続きを踏むことで、健康保険を使うこともできる場合がありますので、病院にも相談して負担の少ない方法を選択していきましょう。

4.相手方保険会社が治療費を一括対応している場合に注意すべきポイント

相手方任意保険会社が治療費を一括対応している場合に注意すべきことがいくつかあります。

特に押さえておくべき点は以下のとおりです。

  • 一括対応には打ち切りがある
  • 打ち切り後も通院はできる
  • 打ち切り後の治療費も示談交渉時に相手方から払われる場合がある

順にご説明します。

(1)一括対応には打ち切りがある

相手方任意保険会社による一括対応は無限に続くわけではありません。

相手方の任意保険会社が一括対応に応じてくれる最大の理由は、任意保険会社は支払った分を後で自賠責保険会社から回収できるためです。

自賠責保険は1事故につき120万円の上限がありますので、その上限が近づいてくると、相手方任意保険会社は一括対応の打ち切りを判断します。

そのため、必要以上に通院していると、早く打ち切りにあってしまう可能性があるため注意しなければなりません。

(2)打ち切り後も通院はできる

むちうちの治療は、長期にわたって行われる可能性があり、その場合相手方保険会社は支出を抑えるために、一括対応の打ち切りを提案してくることがあります。

打ち切りを打診されたら、まず担当医の意見を確認しましょう。そこで、いついつまでは治療が必要である等との意見を得られれば、それを保険会社に説明して、一括対応の延長を交渉してみましょう。

一括対応は法的に強制できるものではなく、その任意保険会社のサービスにすぎないため、必ずというわけではありませんが、治療の必要性がある程度はっきりしていて延長してほしい期間が短期の場合は応じてもらえるケースも少なくありません。

なお、打ち切られた場合であっても、通院を行うことは可能です。後々のことを考えると、医師が必要だと判断している場合は通院を継続した方がいいでしょう。

自費通院となった場合は、自己負担を抑えるために健康保険等を利用しましょう。

(3)打ち切り後の治療費も示談交渉時に相手方から払われる場合がある

一括対応の打ち切り後に自費で通院した治療費は、治療が終了して相手方と最終的な示談交渉をする際に、相手方に請求することができます。

相手方が支払うか否かは交渉の結果によるところではありますが、実務上、後遺障害等級を獲得できた場合は、打ち切りから症状固定日までの治療費を相手方保険会社が支払うケースが多くみられます。

治療中は、将来的にどうなるか被害者の方ご本人にもわからないです。そのため、示談交渉時に治療費の請求ができるよう、支出した分の領収書は全部管理しておきましょう。

5.治療中から弁護士に相談するメリット

むちうちの治療中でも相手方との示談交渉に備えるために、弁護士に相談することをおすすめします。

早めに弁護士に相談するメリットは以下のとおりです。

  1. 交渉に必要な証拠を揃えられる
  2. 複雑な手続を一任できる
  3. 治療に専念することができる

順にご説明します。

(1)交渉に必要な証拠を揃えられる

治療中に弁護士に相談することで、示談交渉に備えて動くことができます。

治療が終わったら、加害者側と示談交渉を行うことになるのですが、過失割合等を決める際に、被害者に有利になるような証拠資料を提出しなければならなくなる場合があります。

たとえば、ドライブレコーダーなどの映像や周囲の証言、診断書などです。

弁護士は示談交渉で何が必要なのか把握しているため、効率良く示談交渉の準備を進めることが可能です。

(2)複雑な手続きを一任できる

弁護士に依頼することで、手続きをスムーズに進めることができます。

治療費を含む賠償金を相手方に請求する場合、被害者請求のような複雑な手続きをしなければなりません。

弁護士は、何の書類が必要で、どこに注意すべきか熟知しているため、請求が認められる可能性を高めることができます。

自分自身で調べる手間を省くことができるので、手続きは弁護士に一任することをおすすめします。

(3)治療に専念することができる

ここまでご説明したように、一括対応が使えないときどうするのかや、打ち切りの連絡がきたときどう対処するのかなど、初めて交通事故に遭った被害者の方には知らないことが沢山あります。

それらをひとつひとつを調べながら対応していくことは、被害者の方にとってストレスフルなことです。

その点、必要な対応を弁護士に依頼することで、治療に専念することができます。

むちうちの症状は、日常生活を送る上でも大きな負担となることが多く、手続きや交渉までをご自身で行うとなれば、身体的な疲れだけでなく、精神的な負担もかかる可能性が高いです。

治療するだけでも大きな手間がかかるため、少しでも負担を軽減するために治療以外のことは弁護士に任せることをおすすめします。

まとめ

むちうちは症状によって発生する治療費に差があります。

長期にわたる治療の場合、30~60万円と高額の治療費が発生することがあるので、加害者が任意保険に加入していれば、任意保険会社に対し一括対応をしてもらうよう打診しましょう。

ただし、複雑な手続が必要になる場合がありますので、負担を軽減するために治療が始まったら弁護士に相談しましょう。

弁護士に相談して、示談交渉や賠償金の請求の手続きを代行してもらい、治療に専念できる環境を整えることをおすすめします。

弁護士法人みずきでは、交通事故に関する相談を無料で受け付けておりますので、むちうちの治療費でお困りの方はお気軽にご相談ください。

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執筆者 実成 圭司 弁護士

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皆さまのご相談内容を丁寧にお聞きすることが、より的確な法的サポートにつながります。会話を重ねながら、問題解決に向けて前進しましょう。