交通事故でむちうちになった場合の後遺障害診断書について弁護士が解説
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「むちうちで後遺障害認定を受けたいが後遺障害診断書の作成の仕方が分からない」
「むちうちになった場合に後遺障害等級認定を受けられるのだろうか」
交通事故でむちうちの症状が残ってしまった方の中には、後遺障害等級とは何か、どうすれば認められるのか悩まれている方もいると思います。
後遺障害等級の認定を受けるためには、後遺障害診断書を準備し、加害者側の自賠責保険会社に提出しなければなりません。
しかし、後遺障害診断書は、ご自身で作成できるものではなく、担当医に症状固定の診断を得た上で作成してもらう必要があるものです。
また、むちうちになった場合に認定される可能性のある後遺障害の等級も定まっています。
ここでは、むちうちになった場合に認定可能性のある後遺障害等級や後遺障害診断書の作成方法などについてご説明します。
本記事を読んで、むちうちと後遺障害等級について理解し、皆様が巻き込まれた交通事故について適切な賠償が受けられれば幸いです。
1.むちうちの症状について
むちうちは診断名ではありません。
強い衝撃が加わったことによって首がムチのようにしなって怪我を負う状況からそう呼ばれています。
病院の診断書に記載されるむちうちの傷病名は、「頸椎捻挫」や「外傷性頸部症候群」などです。
捻挫と聞くと大した怪我ではないと思われる方もいるかもしれません。
しかし、神経根が圧迫される場合など、痛みやしびれの辛い神経症状が後遺症として生じてしまうこともがあるため注意が必要です。
むちうちになると、首の痛みはもちろん、時期によって以下のような症状がみられます。
事故直後の症状 | 頭がボーッとする、吐き気、意識こんだく、頭痛、手や腕のしびれ・脱力感 |
事故から1週間までの症状 | 頭痛・頭重感、頸椎の運動制限、肩こり、吐き気、手や腕のしびれ、腰痛 |
事故から1週間以降の症状 | 頭痛、めまい、悪心、耳症状、眠症状、知覚障害 |
2.むちうちになった場合に該当する可能性がある後遺障害等級
後遺障害等級とは、後遺障害がどの程度の重さなのかを等級で表したものです。
等級は1~14級まであり、1級が最も重い症状で14級が最も軽い症状と決められており、等級ごとに認定条件が詳細に決められています。
後遺障害が残ってしまった場合には、相手方に対して「後遺障害慰謝料」と「逸失利益」を請求することができます。
いずれも認定を受けた等級の大きさによって金額が変わるため、後遺障害等級はとても重要です。
むちうちになった場合に該当する可能性がある後遺障害等級は、12級13号または14級9号です。
両者の違いは後遺障害の存在が「説明」できるか、「証明」できるかです。
証明できる場合は12級、説明できるにとどまる場合は14級が認定され、証明も説明もできない場合は、非該当となります。
(1)後遺障害等級12級13号に該当する場合
12級13号の認定基準は、「局部に頑固な神経症状を残すもの」です。
12級13号として認められるためには、
後遺障害の存在が「医学的に証明できるもの」といえなければなりません。
医学的に証明できるというのは、画像所見、神経学的検査の所見、そして自覚症状がぴったり揃っている状態のことです。
具体的には、画像上で神経根の圧迫所見が確認でき、神経学的検査の陽性所見があり、なおかつ、その神経根の支配領域内に自覚症状が出ている場合です。
(2)後遺障害等級14級9号に該当する場合
14級9号の認定基準は、「局部に神経症状を残すもの」か否かです。
先に述べた12級13号との大きな違いは、その症状について医学的な証明まではできないものの、事故による症状として医学的な説明ができることにあります。
具体的には、画像から明らかな神経圧迫はみられないが、神経学的検査の結果から神経圧迫があるかもしれないといえるような場合には、14級9号と認定される可能性があります。
3.むちうちの後遺障害診断書作成時のポイント
後遺障害診断書は、後遺障害等級認定を受けるために必要な書類で、症状固定時に残存した症状等を記載します。
後遺障害診断書は医師にしか作成できません。
(1)後遺障害診断書を作成するタイミング
後遺障害診断書を作成するタイミングは、症状固定時です。
症状固定とは、これ以上治療を続けても症状の改善が見込めない状態のことです。
治療をした直後は一時的に改善したとしても、時間が経過すると元の症状に戻ってしまうような状態のことで、よく「一進一退」という表現を使います。
症状固定という概念は賠償実務上のもので、医学用語ではありませんが、症状固定の状態にあるかどうかを判断するのは医師です。
むちうちの場合、6か月程度が症状固定の目安とされています。
(2)後遺障害診断書を作成するためには費用がかかる
後遺障害診断書の作成費用は、病院によって多少異なりますが、5,000円から1万円ほどであることが多いです。
後遺障害診断書の作成費用は、後遺障害等級が認定された場合は相手方に請求することができます。
(3)後遺障害診断書の記載内容
後遺障害診断書の各欄には、それぞれ以下の情報が記載されています。
いずれも後遺障害等級の認定を受けるために必要な情報ですので、記入されていない、内容に誤りがあるという場合は、医療機関に修正や書き直しを依頼する必要があることも少なくありません。
#1:後遺障害等級認定を受けようとする人の基本情報
氏名、住所、生年月日、職業などが記載されます。
#2:受傷年月日
交通事故に遭った日が記載されています。
#3:症状固定日
症状固定日を記載します。
#4:当院入院期間・通院期間
病院に入院した期間と通院した期間を記載します。
通院については、期間だけではなく実際に通院した日数も記載してもらう必要があります。
#5:傷病名
医師が診断した傷病名が記載されています。
#6:自覚症状
症状固定時の自覚症状が記載されています。
医師に説明した自覚症状と相違ないかを確認しておきましょう。
特に、注意すべきは痛みについての表現です。
むちうちで後遺障害に該当する痛みは常時疼痛です。
実際は常時痛みを感じているにも関わらず、天候や運動によって一時的に痛みが生じているというような表現になっている場合は、等級認定のハードルになってしまう可能性があります。
#7:他覚症状及び検査結果
他覚的所見を記載する欄で、むちうちの場合は画像所見と神経学的検査所見を記載します。
むちうちの原因となる神経の異常はレントゲンにうつりません。
MRI画像をとり、その画像所見を記載してもらう必要があります。
また、神経学的検査も実施してもらいましょう。
むちうちの場合は、ジャクソンテストやスパーリングテストを行います。
検査結果が陽性だった場合は、記載してもらった方がいいです。
#8:障害内容の増悪・緩解の見通し
症状固定時の症状が将来的にどうなるかが記載されます。
この欄は、症状固定である旨が記載されていることが多いです。
もし、この欄に「治ゆ」「緩解する」などの情報が記載されていると、後遺障害等級が認定される可能性は限りなく低くなります。
実態と異なることが書いてあるのであれば、医師に修正を依頼するべきでしょう。
4.後遺障害診断書を作成してもらえない理由とその対処法
そもそも、医師法19条2項には、「診察をした医師は、診断書の交付の求めがあった場合には、正当の事由がなければ、これを拒んではならない。」と定められており、医師は診断書の作成を求められたときは原則として拒むことはできないとされています。
正当な事由があれば拒めることになりますが、これは医師の不在又は病気等により事実上診療が不可能な場合に限られるとされています。
そのため、医師がいる場合には診断書の作成を拒むことはできません。
それなのに作成を拒んでいるということは、相応の理由があるはずです。
では、その理由とはどのようなものがあるのでしょうか。
(1)後遺障害診断書を書いてもらえない主な理由
後遺障害診断書を書いてもらえない主な理由は、以下のように3点あります。
#1:回復する見込みがあり、症状固定の時期ではない
後遺障害診断書に症状固定日が記載されることからわかるように、後遺障害診断書は、症状固定となった後に作成するものです。
そのため、症状が回復する見込みがある場合は、まだ症状固定ではないため、診断書に記載することができません。
症状が回復するに越したことはありませんから、引き続き医師の指示に従って通院を継続するのがよいでしょう。
#2:治療経過を診ていない
交通事故による怪我の症状でなければ、後遺障害診断書を作成することはできません。
症状固定後に病院に行った場合、医師は治療経過を診察していません。
そうすると、怪我があったとしても、それが交通事故による怪我なのか分からないので、診断書の作成を拒否される可能性があります。
そのため、できるだけ事故後から症状固定日まで継続して同じ主治医に診察してもらう必要があるといえます。
なお、後に述べるように、必ずしも転院することが悪いというわけではありません。
(2)後遺障害診断書を書いてもらえない場合の対処法
後遺障害診断書を担当医に書いてもらえない場合の対処法をご紹介します。
#1:通院を継続する
回復する見込みがあり、症状固定の時期ではない場合、まだ後遺障害診断書を書いてもらえる状況ではありません。
したがって、そのまま医師の判断に従い通院を継続する必要があります。
その後、症状固定の時期を迎えたときに後遺障害がある場合には、後遺障害診断書を作成してもらえるでしょう。
#2:他の整形外科を受診する
上述のように、医師は、診断書の作成依頼を拒むことはできません。
しかし、診断書の作成を拒んでいる医師に義務があると言って渋々書いてもらったとしても、あまり良い内容は書いてもらえないでしょう。
そのため、診断書の作成を拒まれた場合には、他の病院に転院するという方法があります。
ただし、転院先の先生は事故直後から治療経過を診ているわけではないので、詳しい内容の後遺障害診断書を書いてもらえないというリスクは負わなければなりません。
5.むちうちで後遺障害等級の認定を受けるためのポイント
むちうちで後遺障害等級の認定を受けるために押さえておくべきポイントは以下の4点です。
- 後遺障害等級の認定基準を満たしている
- 適切な通院頻度で治療を行っている
- 症状を医学的に証明(または説明)できる
- 症状に一貫性・連続性がある
(1)後遺障害等級の認定基準を満たしている
上述したように、後遺障害等級表に定められた認定基準を満たしているか否かで後遺障害等級が判断されます。
そのため、後遺障害等級の認定を受けるためには、後遺障害等級表に定められた認定基準(むちうちであれば、12級14号の「局部に頑固な神経症状を残すもの」であること、または14級9号の「局部に神経症状を残すもの」に該当すること)を満たしている必要があります。
(2)適切な通院頻度で治療を行っている
治療のための通院頻度が低かったり、通院期間が短かったりする場合には、後遺障害の認定基準を満たしていても非該当となる場合があります。
具体的には、事故の被害から症状固定の診断を受けるまで、継続して通院し、治療を受けていることが望ましいです。
治療期間は6か月以上で、通院日数も一定程度の頻度(半年間で100日以上が望ましい)である必要があります。
適切な通院頻度で治療をしていなければ、後遺障害等級認定を受けることが難しくなるため、医師から指示されたとおりに通院するようにしましょう。
(3)症状を医学的に証明(または説明)できる
上述したように、むちうちの場合、12級13号または14級9号の後遺障害等級の認定を受けられる可能性があります。
その認定を受けるためには、事故によって生じたむちうちによる痛みやしびれなどの神経症状が残っていることを医学的に証明(または説明)できなければなりません。
(4)症状に一貫性・連続性がある
事故後から症状固定になるまで、症状に一貫性・連続性があることがポイントです。
事故後から症状固定の診断を受けるまでに、痛みやしびれが変わらず連続して発生していれば、一貫性・連続性があると考えられます。
このとき、継続して症状が出ているものに関しては、診察のたびに医師にはっきりと伝えておきましょう。
診断書等の記載上、症状が一時的に消えている、あるいは症状改善が見られるような場合は、症状の一貫性・連続性がないとして、認定の際に不利な影響が出る場合があるからです。
そのため、医師とも相談しながら通院や治療をしっかりと継続していくことが必要不可欠です。
まとめ
本記事では交通事故におけるむちうちの症状や、該当する可能性がある後遺障害等級、後遺障害診断書の記載事項や作成に関する注意点や対応などについて詳しくご紹介しました。
専門家である弁護士に相談することで、適切な後遺障害等級の認定が受けられ、事故直後から示談成立まで被害者が納得のいく解決が期待できるでしょう。
より良い解決や納得のいく解決ができるように、なるべく早く弁護士に相談することをおすすめします。
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