駐車場内の交通事故における過失割合について

執筆者 青山 侑源 弁護士

所属 東京弁護士会

法律トラブルというものは、いつも身近に潜んでいるものです。
はじめのうちは「大したことないだろう」と思っていたことが、そのうち大事になってしまうというケースも多くありますので、少しでも「法律トラブルに巻き込まれたかもしれない」と感じている場合には、お早めにご相談いただくことをおすすめいたします。
法律トラブルへの対処方法や解決方法は、個人の方、法人の方ごとに千差万別ですが、お早めにご相談いただくことで、選べる選択肢も多くなります。
どのような解決方法があなたにとって最適な選択となるのか、一緒に検討していきましょう。

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交通事故は、自動車が走っている道路以外でも発生するもので、駐車場内での事故も珍しくありません。

駐車場内での事故の場合の過失割合はどのようになるのか、相手方とはどのように交渉を進めればよいのか、気になっている方も多いのではないでしょうか。

本記事では、駐車場内での交通事故における過失割合について、ケースごとに分けて説明し、また、相手方との交渉をスムーズに進めるための注意点について説明をしています。

本記事を読むことで、過失割合について相手方と納得のいく交渉を進めるための手助けとなれば幸いです。

1.駐車場内の交通事故における過失割合について

まず前提として、そもそも過失割合とは何か、どういったケースがあるのか、説明をしていきます。

(1)過失割合とは何か

交通事故における過失割合とは、発生した交通事故についての責任(不注意)の割合のことをいいます。

例えば、交通事故が発生した原因が一方にのみある場合の過失割合は10対0となり、双方に同じくらいの不注意があった場合は5対5となります。

このように、発生した交通事故について、どちらの責任がより重いのか、どの程度の不注意があったのかを割合で定めるのが過失割合です。

(2)過失割合の決め方

交通事故における過失割合を決める際は、まずは、事故の類型から、「別冊判例タイムズ38(民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準 全訂5版)」(判例タイムズ社)といった過去の裁判例をもとにした資料を参考に基本過失割合を定めます。

例えば、事故が「信号機のない交差点における直進車と右折車の事故」であった場合、基本の過失割合は、「直進車20対右折車80」となります。

次に、当該事故の具体的な事情から、「修正要素」を加えて最終的な過失割合を定めることになります。

例えば、先ほどの事故類型では、直進車に15km以上の速度違反があった場合は直進車に+10%、右折車が合図(ウィンカー)なしだった場合は直進車に-10%、といった具合で基本の過失割合から修正していくことになります。

(3)駐車場内の交通事故ケースは四輪車同士の衝突と、歩行者と四輪車の衝突の2パターン

駐車場内の事故で基本過失割合が定められている類型としては、四輪車同士の事故のパターンと、歩行者と四輪車の事故のパターンの大きく2つに分けることができます。

それ以外のパターンについては、上記の類型を参考にして個別に検討することになります。

この場合は、法律の解釈等の問題にもなりますので、専門家である弁護士に相談することをおすすめします。

2.駐車場内の交通事故ケース別過失割合:四輪車同士の衝突

それでは、駐車場内の事故について、類型ごとの過失割合をみて行きましょう。

まずは、四輪車同士の衝突のケースです。

大きく、通路の交差部分での衝突のケース、出庫車と通路進行車との衝突のケース、入庫車と通路進行車との衝突のケースがあります。

(1)通路の交差部分での衝突事故の過失割合

通路の交差部分に進入した四輪車同士の衝突事故の場合、直進や右左折に関係なく、

50対50(等しい過失割合)

が基本の過失割合とされています。

駐車場内の通路では、駐車区画への進入や駐車区画からの退出のために、四輪車が転回や後退など、さまざまな動きをすることが想定されます。

そのため、通路の交差部分を通行する四輪車は、等しく他の四輪車の通行を予見して安全を確認し、状況に応じて他車との衝突を回避することができるような速度や方法で通行する義務があるものとされています。

したがって、上記のように基本過失割合は等しいものと考えられます。

この類型の代表的な修正要素は、以下のものが挙げられます。

一方が狭路・一方が明らかに広い通路 +10%(狭路側)
一時停止や通行方向標示等の違反 +15~20%(違反があった場合)

(2)出庫車と通路進行車との衝突事故の過失割合

出庫車と通路進行車との衝突事故の場合の基本の過失割合は、

70(出庫車)対30(通路進行車)

とされています。

駐車場内の通路では、四輪車が駐車場内の通路と駐車区画との間を出入りすることが当然に予定されています。

そのため、通路を進行する四輪車としては、駐車区画に駐車していた四輪車が出庫して通路に進入してくることは常に予見して、安全を確認して衝突を回避することができるような速度と方法で通行する義務があるものとされています。

他方で、出庫車側としては、元々停止していたので通路進行車よりも容易に安全を確認し、衝突を回避することができると考えられます。

また、出庫車が通路に進入する際には、通路進行車の通行を妨げるおそれがある場合は通路への進入を控える義務があるものと考えられています。

そのため、この類型の基本過失割合は、出庫車の方が重く定められています。

この場合の修正要素としては、通行方向標示等の違反や通常の進行速度を明らかに上回る速度で進行していた場合など、「著しい過失」や「重過失」が認められると、過失がある側に10~20%の修正がされることとなります。

(3)入庫車と通路進行車との事故の過失割合

入庫車と通路進行車との事故の場合、基本の過失割合は、

20(入庫車)対80(通路進行車)

とされています。

駐車場は、駐車のための施設ですから、四輪車が通路から駐車区画に入庫することは、原則として通路の進行に対して優先されるべきとされています。

そのため、通路進行車としては、入庫車を発見した場合、入庫車が駐車区画に収まるまで停止して待機するか、入庫車と安全にすれ違うことができる程度の距離を確保したうえで入庫車の動静を注視しながら、安全な速度と方法で進行する義務があるものとされています。

他方で、入庫車としては、駐車区画に入庫する際、他の通路を進行する四輪車の進行を妨げることになるので、他の車両の動静を注視して、他の車両との衝突を回避することができるような速度と方法で進行する義務を負うものと考えられています。

以上のような事情により、この類型の基本過失割合は、通路進行車に重い過失割合が定められています。

この場合の修正要素としては、通路進行車側が徐行をしなかった場合に+10%、そのほか「著しい過失」や「重過失」が認められる場合に+10~20%の修正がされることとなります。

3.駐車場内の交通事故ケース別過失割合:歩行者と四輪車の衝突

次に、歩行者と四輪車の衝突のケースについて、みていきましょう。

大きく、駐車区画内にいた歩行者と四輪車が衝突したケースと、通路上にいた歩行者と四輪車が衝突したケースがあります。

(1)駐車区画内での事故の過失割合

駐車区画内での事故の基本の過失割合は、

10(歩行者)対90(四輪車)

とされています。

駐車区画は、駐車する場所であるのと同時に、駐車場の利用者が乗車・降車をする場所でもあります。

そのため、駐車区画を出入りする四輪車としては、自車周辺の安全を常に確認し、歩行者の有無にかかわらず、いつでも停車することができる速度で運転し、進路に歩行者がいる場合にはただちに自車を停止させる義務があるものと考えられています。

他方で、駐車区画は駐車するための場所であるため、歩行者としても、駐車区画では四輪車の往来を予見し、その動静を注視すべきといえます。

以上の事情を考慮して、この類型の基本過失割合は上記のように定められています。

この場合の修正要素としては、代表的なものとして以下のものが挙げられます。

隣接区画での乗降があった場合 (歩行者側)-10%
歩行者が児童(6歳以上13歳未満)や高齢者(おおむね65歳以上) (歩行者側)-5%
歩行者が幼児(6歳未満)や身体障害者等 (歩行者側)-10%

(2)通路上での事故の過失割合

駐車場内の通路上での歩行者と四輪車の事故の基本の過失割合は、

10(歩行者)対90(四輪車)

とされています。

歩行者用の通路が設けられていない駐車場が多いこともあり、駐車場内を人が往来することは日常的なものとなっています。

そのため、駐車場内の通路を進行する四輪車は、人の往来があることを常に予見し、歩行者の通行を妨げないような速度と方法で進行する義務があるものと考えられています。

他方で、駐車場内の通路は主として四輪車の移動のための設備であり、歩行者としても、駐車場内の通路を通行する場合は、四輪車が通行することを常に予見し、駐車区画内を通行する場合に比べてより一層慎重に進路の安全を確認すべきと考えられています。

そのため、この類型の基本過失割合は上記のように定められています。

この場合の修正要素としては、代表的なものとして以下のものが挙げられます。

(歩行者の)急な飛び出し (歩行者側)+10%
歩行者用通路標示上の事故 (歩行者側)-20%
歩行者が児童や高齢者 (歩行者側)-5%
歩行者が幼児や身体障害者等 (歩行者側)-10%

4.相手との示談・交渉での注意点

最後に、駐車場内での事故に遭ってしまった場合に、相手方との示談交渉をする際の注意点を説明していきます。

(1)相手方の保険会社は加害者側に有利な過失割合を提示することがある

これまでみてきたように、ほとんどの交通事故については、過去の裁判例を参考にした基本の過失割合があります。

しかしながら、中には、どの類型の事故なのか、判断がつきにくいケースもあり、そういった場合には、相手方の保険会社は自分たちに有利な基本の過失割合とされているケースであると断定して過失割合を提示してくる場合があります。

また、被害者側に有利な修正要素は無視して、加害者側に有利な修正要素だけを取り上げて過失割合を提示してくる場合もあります。

そのため、相手方の保険会社の提示する事故類型や修正要素に当てはまりそうに思えても、別に近い事故類型がないかどうかや、他の修正要素がないかどうか、といったことにも注意をする必要があるでしょう。

適切な事故類型や修正要素の有無の判断については、その判断が難しいケースも珍しくありません。

相手方の保険会社の提示する過失割合が適切なものかどうか判断に迷ったときは、専門家である弁護士に相談することをおすすめします。

(2)安易に示談に合意しない

交通事故に遭ってしまった場合、これまでの生活は一変してしまい、経済的にも苦しい状況となってしまうことも珍しくありません。

そんなときに、保険会社からある程度まとまった示談金の提示があれば、つい示談に応じてしまいたくなるかもしれません。

しかしながら、保険会社からの示談金の提示に対して、安易に合意してしまうことはおすすめしません。

過失割合のほかにも、保険会社の提示してくる金額は、いわゆる裁判基準や弁護士基準の金額を大きく下回ることが多くあります。

交通事故によって被ってしまった損害について適切な賠償を受けるためにも、保険会社の提示してきた内容については、それが適切な内容なのかどうか、慎重に判断するようにしましょう。

(3)損害賠償額請求には時効がある

交通事故による損害賠償請求権の時効は、物的損害については3年、ケガをした場合など人身損害については5年とされています。

過失割合について双方の言い分が異なる場合、示談交渉が難航する例は多くありますが、双方で折り合いが合わないために、いつまでも示談交渉が進まないまま時間だけが過ぎていってしまい時効となってしまうと、過失割合に関係なく損害賠償請求自体をすることができなくなってしまいます。

そのため、示談交渉が難航しそうな場合には、早めに弁護士に相談して、解決に向けて動き出すことが大切です。

まとめ

本記事では駐車場内の交通事故における過失割合について、四輪車同士の衝突ケースと歩行者と四輪車の衝突ケースに分けて説明し、また相手との示談交渉における注意点をご紹介しました。

専門家である弁護士に相談することで、駐車場内事故での過失割合を含む交通トラブルを避けることができ、事故直後から示談成立まで被害者に寄り添い、被害者が納得のいく解決ができるでしょう。

突然の交通事故に遭ってしまった場合でも、冷静に落ち着いて対処できるよう、弁護士に相談することをおすすめします。

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執筆者 青山 侑源 弁護士

所属 東京弁護士会

法律トラブルというものは、いつも身近に潜んでいるものです。
はじめのうちは「大したことないだろう」と思っていたことが、そのうち大事になってしまうというケースも多くありますので、少しでも「法律トラブルに巻き込まれたかもしれない」と感じている場合には、お早めにご相談いただくことをおすすめいたします。
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