交通事故により頭蓋骨を骨折したときの対処方法とは
「交通事故に遭い頭蓋骨を骨折してしまった」
「頭蓋骨骨折と診断されたが、今後の対処法がわからない」
頭蓋骨を骨折したことにより大きな障害が残るケースもあります。
この記事では、頭蓋骨骨折とはどのような怪我であるか、また、事故後の対処方法についてご説明します。
1.交通事故による頭蓋骨骨折の態様と主な症状
交通事故により、頭部に強い衝撃が加わることで頭蓋骨を骨折する場合があります。
頭蓋骨の骨折だけであれば、基本的には癒合するため大きな問題にならないことも多いです。
しかし、頭蓋骨は脳を覆うようにして頭部を守る骨であることから、この部分に骨折が生じるほどの衝撃が加わることで、脳や神経、血管などにも損傷が発生する危険性が高いです。
また、骨折の態様や発生部位によっては、重篤な後遺症が残るリスクがあります。
以下では、頭蓋骨骨折の態様や主な症状について解説します。
(1)頭蓋骨骨折の態様
頭蓋骨はいくつかの部位に分かれており、骨折した箇所により現れる症状が異なります。
骨折態様については、大きく分けると頭蓋円蓋部骨折と頭蓋底骨折の2つです。
#1:頭蓋円蓋部骨折
頭蓋骨円蓋部は、前頭骨・側頭骨・頭頂骨・後頭骨を合わせた部位から成り立っています。
髪の毛が頭を覆っている部分に相当し、側頭骨は骨の厚さが薄く、線上にひびが入る線状骨折が生じやすいという特徴があります。
前頭骨や頭頂骨は、骨が内側にへこむ陥没骨折が起きやすい部位です。
頭蓋骨を骨折し脳や血管にまで損傷が及ぶと、後述する脳挫傷や硬膜外血腫などが生じる危険性があるため、直ちに外科手術が必要になります。
#2:頭蓋底骨折
頭蓋骨は脳の底面を支えている、特殊な構造を持つ部位です。
頭蓋底には大脳の底部や下垂体、小脳や脳幹や脳神経などが通っており、骨折すれば血管や神経が損傷するリスクが高まります。
脳神経が損傷を受ければ脳神経麻痺が生じるほか、髄液が漏れ出すことによる髄膜炎などの症状が現れる可能性があります。
髄膜炎は髄膜にウイルスや細菌が入り込むことで起こり、特に細菌性の髄膜炎は死亡率が数%~数10%と高いことが特徴です。
(2)主な派生傷害
頭蓋骨に骨折が生じることで、脳にも以下のような損傷が現れる可能性があります。
- 脳挫傷
- 外傷性くも膜下出血
- 急性硬膜外血腫
それぞれの症状についてご説明します。
#1:脳挫傷
脳挫傷とは、頭部打撲を受けることで脳に衝撃が伝わり、脳に挫傷や浮腫が生じた状態です。
衝撃を受けた部分が損傷し出血をした結果、脳を包む硬膜と脳の表面との間に血液(血腫)が溜まることがあります。
血腫によって脳が圧迫されれば激しい頭痛や嘔吐、痙攣などが事故直後から現れるケースも多数あります。
脳の損傷部位によっては感覚・視覚・言語・意識・記憶に障害が生じるケースもあり、非常に重い症状です。
#2:外傷性くも膜下出血
頭蓋骨と脳脊髄を包む硬膜の内側にあるくも膜と脳の間に出血が生じている状態です。
事故直後から受傷部位に激しい痛みや頭痛、嘔吐、痙攣などの症状が起こるケースが多数あります。
くも膜下出血の出血量によっては脳血管攣縮を起こし、血管が異常に収縮することもあります。
血管が収縮することで脳血流が悪くなり、麻痺や失語、意識障害が生じることがあります。
#3:急性硬膜外血腫
脳を覆う硬膜の表面にある動脈が切れることで、硬膜と頭蓋骨の間に出血が生じた状態を指します。
一般的には事故直後から頭痛や嘔吐、意識障害が生じますが、事故後時間が経過してから徐々に意識障害が生じるケースもあります。
そのほか、麻痺や瞳孔不同(左右の動向の大きさが異なる状態)などの神経症状が徐々に悪化する場合もあり、治療を受ける際は注意が必要です。
神経症状がない場合も数日は経過観察しなければならず、神経症状が進行している場合や血腫量が多い場合は手術をすることもあります。
2.頭蓋骨骨折がある場合に認定されうる後遺障害とその等級
頭蓋骨骨折によって障害が残った場合、その症状によって後遺障害等級が認定される可能性があります。
主な後遺障害としては、以下のものが考えられます。
- 遷延性意識障害
- 高次脳機能障害
- 視覚・嗅覚・聴覚の異常
- 醜状障害
(1)遷延性意識障害
遷延性意識障害とは、いわゆる植物状態のことを指します。
事故後意識不明の状態が続くため、交通事故による被害のなかでも特に重い後遺障害です。
基本的には最も重い後遺障害等級1級に認定され、以下の基準をもとに判断されます。
- 自力で移動ができない
- 自力で摂食ができない
- 失禁してしまう
- 発声できるが意味のある発語ができない
- 簡単な指示には従えるが意思疎通ができない
- 眼球の運動は見られるが認識はできない
これらをすべて満たした状態が3か月以上継続していることが1級1号の認定のための要件です。
(2)高次脳機能障害
脳にダメージを受けた場合は高次脳機能障害が生じる可能性がありますが、その症状は様々です。
脳挫傷や急性硬膜外血腫、くも膜下出血を併発している場合、脳や神経を損傷し意識障害や記憶力・判断力などの機能が低下している場合もあります。
高次脳機能障害が生じた場合、意思疎通能力・問題解決能力・作業負荷に対する持続力、持久力・社会行動能力の4つの能力の喪失の程度によって後遺障害等級を判断します。
高次脳機能障害では、以下の等級に該当する可能性があります。
後遺障害等級 | 認定基準 |
第1級1号
(要介護等級) |
神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの |
第2級1号
(要介護等級) |
神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの |
第3級3号 | 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの |
第5級2号 | 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの |
第7級4号 | 神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの |
第9級10号 | 神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの |
高次脳機能障害は以下の記事において詳しく解説しています。
(3)視覚・嗅覚・聴覚の異常
骨折した頭蓋骨の部位によっては視覚や嗅覚・聴覚に異常が生じることもあります。
前頭蓋底骨折では嗅覚障害、側頭骨骨折では聴覚障害、前頭蓋底骨折のうち視神経管骨折では視力障害が生じます。
これらの障害は、発生した部位や機能によって認定される等級は多岐に渡り、認定を得るためのポイントも複雑であることから、弁護士に相談するのがおすすめです。
(4)醜状障害
醜状障害とは、頭蓋骨を欠損し頭部などに目立つほどの傷跡が残ってしまった場合、残った傷跡を後遺障害の1つとして認定するものです。
後遺障害等級 | 認定基準 |
7級12号 | 外貌に著しい醜状を残すもの
(1)頭部に残った手の平大(指の部分は含まない)以上の瘢痕または頭蓋骨の手の平大以上の欠損 (2)顔面部に残った鶏卵大以上の瘢痕または10円硬貨大以上の組織陥没 (3)頸部に残った手の平大以上の瘢痕 |
12級14号 | 外貌に醜状を残すもの
(1)頭部に残った鶏卵大以上の瘢痕または頭蓋骨の鶏卵大以上の欠損 (2)顔面部に残った10円硬貨以上の瘢痕または長さ3センチメートル以上の線状痕 (3)頸部に残った鶏卵大以上の瘢痕 |
3.頭蓋骨骨折で適切な賠償を得るためのポイント
頭蓋骨骨折で適切な賠償を得るためには、まずは医師の指示のもと適切な治療を受けることが重要です。
治療を受けたうえでどのようなポイントに注意するべきかご説明します。
(1)後遺症が残った場合には後遺障害等級の認定申請を行う
治療を継続したものの、何らかの症状が残存した場合には、後遺障害等級の認定申請を行うことを検討しましょう。
後遺障害等級が認定されれば、等級に応じて後遺障害慰謝料や逸失利益を受け取ることができます。
後遺障害慰謝料の相場は、以下のように定められています。
後遺障害等級 | 自賠責基準 | 裁判所(弁護士)基準 |
1級 | 1150万(1100万) | 2800万 |
2級 | 998万(958万) | 2370万 |
3級 | 861万(829万) | 1990万 |
4級 | 737万(712万) | 1670万 |
5級 | 618万(599万) | 1400万 |
6級 | 512万(498万) | 1180万 |
7級 | 419万(409万) | 1000万 |
8級 | 331万(324万) | 830万 |
9級 | 249万(245万) | 690万 |
10級 | 190万(187万) | 550万 |
11級 | 136万(135万) | 420万 |
12級 | 94万(93万) | 290万 |
13級 | 57万(57万) | 180万 |
14級 | 32万(32万) | 110万 |
※2020年3月31日までに発生した事故は()内
また、後遺障害等級の認定申請の方法には事前認定と被害者請求の2つの方法があります。
#1:事前認定
事前認定とは、加害者の任意保険会社を通して、後遺障害等級の認定申請を行う方法です。
この方法では、被害者は医師が作成する後遺障害診断書を提出すればよく、その他の準備などは加害者の任意保険会社がやってくれます。
そのため、書類作成や資料収集の手間を省けることがメリットとして挙げられます。
もっとも、保険会社が手続に必要最低限の書類しか提出しないことによって、実際の症状よりも低い等級が認定されたり等級非該当となったりする場合もあり、手続の透明性という意味では疑問が残ります。
#2:被害者請求
被害者請求は、被害者が直接加害者の自賠責保険に対して、後遺障害等級の認定申請に必要な書類・資料を提出する方法です。
必要書類や資料の準備を被害者自身で行う必要があり、事前認定と比べると手間がかかります。
もっとも、書類作成や追加で添付する資料の選択などを工夫することができ、適切な等級の認定を受けられる可能性を高められるのが大きなメリットです。
また、交通事故対応に習熟している弁護士に相談・依頼することで、最適なアドバイスやサポートを受けることができます。
そのため、後遺障害等級の認定申請は弁護士に相談の上で、被害者請求による方法で手続を行うのがおすすめです。
(2)なるべく早期に弁護士へ相談する
早い段階で相談することで、今後の方針を立てやすくなります。
交通事故による頭蓋骨骨折では、様々な後遺症が残る危険性があります。
そのため、適切な治療を受けて、示談交渉では適切な補償を受けることが重要です。
早い段階で弁護士に相談することで、後遺障害等級の認定申請を見越した治療や後遺障害診断書作成のアドバイスを受けることができます。
交通事故により頭蓋骨骨折等の怪我を負った場合はなるべく早期に弁護士に相談しましょう。
(3)加害者側の提示する賠償金の金額を確認する
加害者が加入する保険会社は、支払う賠償金を少しでも抑えようとするものです。
加害者側から賠償金を提示された場合は、その金額を鵜呑みにしないようにしましょう。
また、必要な損害項目についての補償が含まれているかも注意が必要です。
もっとも、交通事故の示談金には様々な損害項目が含まれ、それぞれが複雑な方法で算定されます。
保険会社から提示された賠償額が適切な相場であるか判断ができない場合には、弁護士に確認することが望ましいでしょう。
まとめ
頭蓋骨骨折は、さまざまな障害が残る可能性もある大きな怪我です。
事故直後から適切な治療を受け、早めに弁護士へ相談することが適切な賠償を受け取るためのポイントです。
弁護士法人みずきには交通事故対応に精通した弁護士が多数在籍しておりますので、お気軽にお問い合わせください。
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