交通事故の解決のために示談書の作成が必要な理由
「そもそも示談書って何のために必要なの?」
「交通事故の示談書はだれが作成するものなの?」
本記事では、交通事故における示談書について、いつ誰が何のために作成するものなのか、その記載内容、作成に当たり注意すべきポイント、交通事故の対応を弁護士に相談することのメリットをご説明します。
この記事を読んで、交通事故の示談書を作成する場合や受け取った際の対応方法を知っていただければ幸いです。
1.交通事故における示談書とは
交通事故では相手方と示談書を取り交わし、賠償金の支払いを受けることにより解決することになります。
では、交通事故における示談書とはどんなものでしょうか。
以下、詳しくみていきましょう。
(1)示談書とは
示談書とは、当事者間の合意の内容を記録した書面のことをいいます。
交通事故における示談とは、加害者が被害者に損害賠償として一定額を支払い、あるいは支払いを約束し、被害者はその金額を受領することで満足し、それ以上の損害賠償についてはその後請求をしない旨の当事者間の合意をいいます。
示談の法的性質は、一般に、和解契約(民法695条)に該当します。
そのため、示談書の作成は、示談の成立要件ではありません。
しかし、後日、争いや約束の不履行が起きたときに、書面が作成されていなければ合意内容を特定し立証することが非常に困難になります。
そこで通常は、当事者間の合意の内容を記録した書面、すなわち示談書が作成されるのです。
なお、加害者が任意保険に加入している場合は、示談書ではなく、免責証書(承諾証書)を作成することが一般的です。
免責証書の場合、被害者のみ署名・押印をして返送する場合が多いです。
(2)誰がいつ作成するのか
次に、示談書の作成に関するいくつかの問題について解説します。
#1: 加害者が任意保険に加入していない場合、被害者が作成することもある
示談書の様式には特段の制約はありません。
そのため、どちらの当事者がいつ作成してもよいものです。
もっとも、後述のように、示談書には支払方法や支払期日などを記載するため、加害者側が作成することが多いです。
ただし、この点に特に決まりはなく、被害者側が示談書を作成することも問題はありません。
#2: 損害賠償額が確定してから作成する
前述したように、示談書は、当事者間の合意の内容を記録した書面です。
そのため、当事者間で示談交渉が妥結し、全ての損害賠償額が確定してから示談書を作成します。
交通事故では、交通事故で受傷した怪我の通院終了時に、かかった治療費、通院交通費、休業損害、傷害慰謝料などの損害額が確定することになるため、その時点から示談交渉を開始し、各金額について双方で合意でき次第、示談書を作成することになります。
ただし、示談書の作成タイミングが遅くなりすぎないようにも注意する必要があります。
なぜなら、交通事故を原因とする損害賠償請求権には消滅時効があるからです。
物損のみの交通事故の場合は事故日の翌日から3年、傷害等が生じた場合の交通事故の場合は事故日の翌日から5年、後遺障害が生じた場合は症状固定の翌日から5年、死亡事故の場合は死亡の翌日から5年で、それぞれの損害賠償請求権は時効によって消滅します。
このような懸念がある場合は、時効中断の対応を早期にとったうえで、示談書の作成に取り掛かる必要があります。
(3)交通事故の示談書の記載項目
交通事故の示談書の記載項目に特段の制約はありません。
しかし、示談書の内容として、最小限度特定し明確にするべき事項は、以下のとおりです。
#1:当事者の情報
住所、氏名を記載します。
被害者が複数いる場合には、全員を表記しないと、示談の効力が及ばない者が生じてしまうので、当事者全員の情報を必ず記載しましょう。
#2:事故の詳細(事故発生日時、車両番号など)
日時、場所、何と何の事故だったのか(自動車、バイク、自転車、歩行者等)を特定しましょう。
#3:関係車両の特定
加害車両、関係した車両等の車両番号、保険契約者番号を特定しましょう。
#4:被害状況
死亡か傷害か、傷害の程度、治療に要した日数等を記載しましょう。
#5:示談内容
賠償金額や支払条件(支払方法、支払期日)を記載しましょう。
#6:清算条項
これは、示談の成立により、紛争の一切が解決したこととし、原則として、示談書に記載した以外に請求できなくなるようにするための条項です。
以下で具体的に説明しますが、示談の場合、清算条項が盛り込まれることが一般的ですので、示談金額に誤りがないかどうか、慎重に確認する必要があります。
#7:作成年月日
示談がいつ成立したものなのか、一般的にいつ合意に至ったのかを明らかにする必要があると同時に、後遺症の確定時期との関係で特定が必要になります。
#8:署名押印
示談書が当事者の意思に基づき作成されたことを示すために必要です。
2.交通事故の示談書において注意すべきポイント
交通事故の示談書を作成するにあたり注意すべきポイントを3点ご紹介します。
(1)示談金額が相場より低くないか確認する
交通事故の損害賠償は、過去の裁判例を基礎にある程度の定型化が図られているため、それを参考に損害賠償額の相場を算出することが可能です。
示談書に記載されている損害の項目に漏れがないか、交渉によって増減が可能か等、示談金額が相場より低くないか丁寧な確認が必要です。
特に、任意保険会社から提案された金額には注意するべきです。
なぜなら、任意保険会社の提案金額は、裁判例に照らしても低額なことがほとんどだからです。
妥当な金額がよく分からない場合は、弁護士に相談することをお勧めします。
弁護士法人みずきでは、交通事故に関する相談を無料で承っております。
お気軽にご連絡ください。
(2)むやみに合意しない
示談書の清算条項の効力により、示談書の合意内容以外の賠償請求権は放棄したものと認められます。
そうすると、示談書を作成した後に、示談書を作成する前に生じていた事実等に関する請求が否定されます。
そのため、示談書を作成するには、相手方に請求したい項目に漏れがないのか等を熟慮する必要があります。
(3)執行認諾文言付公正証書を作成する
示談内容に不履行があった場合に備えて、履行を強制する手段を示談書に備える必要があります。
たとえば、示談内容に執行力を付与し、裁判を経ることなく強制執行手続を利用できるようにするために、示談書を執行認諾文言付公正証書として作成する方法があります。
執行認諾文言付公正証書とは、債務の返済ができない際は直ちに強制執行ができる旨を債務者が承諾したことを示した約款を公正証書として作成するものです。
「●は、本契約による金銭債務を履行しないときには、直ちに強制執行を受けても異議のないことを認諾する。」のような条項を記載して、公正証書を作成することが考えられます。
3.交通事故の示談書の対応は弁護士に相談
交通事故の示談書の作成を弁護士に相談することには、次のようなメリットがあります。
(1)示談金が適正な金額かを確認してもらえる
加害者側の任意保険会社から示談金の提示を受けた場合、それが金額として妥当なのか気になるところです。
次の(2)で述べるように、弁護士が加害者側の任意保険会社に提示できる弁護士基準は、相手方の譲歩が引き出せる最大額といえるため、納得のいく解決に向けての判断材料になります。
任意保険会社から示談金の提示があったら、一度弁護士にご相談になり、弁護士基準で計算し直した場合にどの程度の金額が見込めるかを確認するとよいでしょう。
(2)示談金を増額してもらえる可能性がある
示談金の計算には、自賠責基準、任意保険基準、弁護士基準という3つの基準があります。
自賠責基準は、自賠責保険会社が用いる基準で、これによると被害者に補償される最低限度の金額が算出されます。
任意保険基準は、各任意保険会社が独自に定めている非公開の算出基準です。
これによると、自賠責とほぼ同額かやや高めの金額が算出されます。
そして、弁護士基準は、弁護士や裁判所が用いる基準で、過去の判例をもとにした金額が算出されます。
これによると、3つの基準のうちもっとも高額の賠償額が算出できます。
そのため、弁護士に交渉を依頼することが重要になってくるのです。
このように、交通事故の示談交渉を弁護士に依頼すると、弁護士基準で算定した示談金を受け取ることができるため、経済的なメリットがあります。
(3)示談交渉などを任せられる
弁護士に依頼することのメリットは、経済的な利益を得られるからだけではありません。
交通事故後には、休業損害を先払いして欲しい、治療費の一括対応の延長をしたいなど、示談交渉に至る前の段階でも、加害者側の保険会社との交渉の場面が多くあります。
また、後遺障害の申請においても、弁護士が行うことでスムーズに進む場合があります。
このような交渉事は、交通事故で予期せぬ被害に遭い、心身ともに不都合が生じている中で行うには、非常に困難といえます。
そこで、これらの示談交渉等を弁護士に依頼することで、治療に安心して専念することが可能にもなり、精神的なメリットも得られるといえます。
まとめ
本記事では、交通事故の示談書について記載内容や、示談書において注意すべきポイント、対応を弁護士に相談すべき理由をご説明しました。
交通事故の示談書は、基本的に加害者側が作成しますが、場合によっては被害者側が作成するケースもあります。
示談書を作成したり内容を確認したりするために、一度専門家である弁護士に相談することをおすすめします。
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