交通事故で圧迫骨折になったらどうする?弁護士が徹底解説!

執筆者 西村 賢二 弁護士

所属 第二東京弁護士会

私は、症状の大小に関わらず気軽に受診できる身近なお医者さんのような弁護士でありたいと思っています。まずは、直面された法的問題についてご遠慮なくご相談ください。
個人の方の日常生活や法人の方の事業活動の中で生じるご相談に幅広く適切に対応できるように努め続けたいと思っております。

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「交通事故に遭い、背骨を圧迫骨折してしまった」
「交通事故で圧迫骨折になったら、どうすればいい?」

交通事故に遭い、圧迫骨折による強い痛みや日常生活への影響にお悩みの方の中には、このような不安や疑問をお持ちの方もいらっしゃると思います。

交通事故を原因とする圧迫骨折による症状が続く場合には、後遺障害等級の認定を受けることによって、適切な賠償を受けることが可能です。

本記事では、交通事故を原因とする圧迫骨折について、メカニズムや症状、認定される可能性がある後遺障害等級とその認定基準、示談交渉におけるポイントなどについてご説明します。

1.交通事故による圧迫骨折の症状

交通事故で背中を強く打ちつけると、その衝撃で背骨が骨折することがあります。

背骨は、脊柱とも呼ばれることから、脊柱骨折とも呼ばれる場合もあります。

また、脊柱は首の骨である頚椎、胸部の骨である胸椎、腰の骨である腰椎から構成されます。

そのため、どこの部分で骨折が起こったかによって、症状が発生する部位も異なってくることに注意が必要です。

(1)圧迫骨折とは?

圧迫骨折とは、強い衝撃が外部から加わったことによって、脊柱を構成する骨である椎体が上下に圧迫されて起こる骨折をいいます。

追突事故や衝突事故など、強い衝撃が人体に加わる事故態様において生じることが多いです。

(2)主な症状

圧迫骨折の主な症状は強い痛みです。

骨折が起こった場所によって痛みが発生する場所に違いが出てきます。

たとえば、腰椎を骨折した場合には腰に痛みが生じます。

日常生活においては、起き上がるときや寝返りをうつときなどに強く痛みが生じる場合が多いです。

また、症状が進行すると神経症状が現れ、下肢に痛みや痺れが出てくることもあります。

2.認定される可能性がある後遺障害等級とその基準

休業損害を適切に計算するポイント

圧迫骨折による症状で後遺障害等級に認定される可能性があるのは、以下のような症状です。

  • 変形障害
  • 運動障害
  • 荷重機能障害
  • 神経症状

それぞれの症状ごとに、認定される可能性がある等級とその内容は異なります。

以下で症状ごとに見ていきましょう。

(1)変形障害

背骨を骨折すると、骨折した椎体が元どおりに癒合せず、歪なかたちで癒合することになります。

変形障害とは、そのような歪な癒合によって背骨が変形したものを指します。

後遺障害等級として認定される可能性があるものは以下のとおりです。

 

認定等級 認定基準
6級5号 脊柱に著しい変形を残すもの
8級相当 脊柱に中程度の変形を残すもの
11級7号 脊柱に変形を残すもの

 

これらの等級の認定を受けるためには、圧迫骨折が残っていることをCTやレントゲン、MRIなどの画像検査によって判断できることが必要です。

そのため、交通事故によって目立った外傷がない場合にも整形外科などを受診して、画像検査を受けることが重要になります。

また、6級5号や8級相当の認定を受けるためには、圧迫骨折による椎体の高さの減少の程度や関節の運動制限について細かな基準が設けられています。

たとえば、6級5号では、減少した腹側の椎体の高さの合計が、背中側の椎体1個あたりの高さ以上であることなどが要求されます。

そのため、画像検査においては、これらの細かな基準も満たしていることを客観的に示せるかどうかで認定の可否が変わります。

(2)運動障害

運動障害とは、脊椎の圧迫骨折によって首や背中が曲がりにくくなったものを指します。

後遺障害等級として認定される可能性があるものは以下のとおりです。

 

認定等級 認定基準
6級5号 脊柱に著しい運動障害を残すもの
8級2号 脊柱に運動障害を残すもの

 

これらの等級の認定を受けるためには、運動制限が生じているという事実に加えて、圧迫骨折が生じていることがX線写真などの画像所見から明らかになっていることが必要です。

また、6級5号や8級2号の認定が受けられる可能性がある後遺障害には、軟部組織の損傷による症状も含まれます。

骨折の程度が比較的軽度であっても、軟部組織が損傷している可能性があります。

しかし、骨折が軽度であれば近位関節のMRI検査までは実施されず、結果として見逃されてしまう場合もあり、注意が必要です。

そのため、事故直後にはレントゲンだけでなく、CTやMRI検査まで受けておくことが望ましいでしょう。

(3)荷重機能障害

荷重機能障害とは、脊椎の圧迫骨折によって、頭や腰を支えることができなくなったものを指します。

具体的には、体幹を支えるために硬性補装具が必要となった状態です。

後遺障害として認定される可能性があるのは、以下の等級です。

 

認定等級 認定基準
6級相当 頸部及び腰部の両方の保持に困難があり、常に硬性補装具を必要とするもの
8級相当 頸部又は腰部のいずれかの保持に困難があり、常に硬性補装具を必要とするもの

 

これらの等級の認定を受けるためには、頸部と腰部の両方あるいはいずれか一方の保持に困難があり、常に硬性補装具を必要とすることに加えて、荷重機能の障害の原因が明らかに認められることが必要です。

「原因が明らかに認められる」とは、具体的には、脊椎の圧迫骨折や脱臼、脊柱を支える筋肉の麻痺または項背腰部軟部組織に明らかな器質的変化がX線写真などで確認できることをいいます。

(4)神経症状

圧迫骨折によって神経に損傷が生じると、痛みや痺れの症状が出る場合があります。

圧迫骨折による痛みや痺れの症状については、以下のような後遺障害等級が認定される可能性があります。

 

認定等級 認定基準
12級13号 局部に頑固な神経症状を残すもの
14級9号 局部に神経症状を残すもの

 

12級13号と14級9号の認定基準の差は、文言上は「頑固な」の有無だけですが、具体的には大きな差があります。

12級13号では、痛みや痺れなどの症状がCTやレントゲンといった画像検査などから医学的に証明できるかどうかが基準とされます。

一方、14級9号では、症状が画像所見では判断できないものの、神経学的検査の結果から判断・説明ができるかどうかが基準とされます。

神経症状の有無を判断する画像検査や神経学的検査は医師から積極的に提案されない場合もあるため、自発的に事情を話して検査を受けることも重要です。

また、例えば頚椎の場合、神経学的検査には、患者の頭部を受傷部分に近づけて痛みや痺れなどの反応を検査するスパーリングテストやジャクソンテストなどが行われます。

その中でも、患者の意思に左右されない腱反射テストの結果が重視される場合があります。

神経学的検査を受ける際には、複数のテストを受けることがおすすめです。

3.示談交渉において注意すべきポイント

交通事故による圧迫骨折では、示談交渉において以下の内容が争いとなる場合が多いです。

  1. 圧迫骨折と交通事故の因果関係
  2. 逸失利益

これらのポイントを押さえることで、示談交渉を有利に進めることができます。

(1)圧迫骨折と交通事故の因果関係

圧迫骨折が交通事故を原因として生じたものであるか否かがしばしば争われます。

これは、骨折が事故前より生じていた陳旧骨折であるか、それとも事故によって新たに生じた新鮮骨折であるかの判断の難しさに起因しています。

もっとも、新鮮骨折であるかどうかは、事故直後にMRI検査を受けることによって証明できる場合が多いです。

骨折が事故前からすでに生じていたものであれば、骨の表面にある骨皮質に連続性が保たれますが、事故による骨折の場合には骨皮質の連続性が保たれていません。

そのため、事故直後のMRI検査などで骨皮質の連続性が保たれていない椎体の圧壊が確認できれば、圧迫骨折が交通事故によって生じたものであると認められる可能性が高くなります。

また、骨内部に生じた骨挫傷についてはレントゲンで撮影することができないため、事故直後にはMRI検査を受けることの検討をお勧めします。

(2)逸失利益

逸失利益とは、後遺症を負ったことによる将来の収入の減少に対する損害の補償を指します。

逸失利益の計算では、後遺障害等級に応じた労働能力の喪失率が定められており、基本的には認定された等級に応じて算出されます。

また、労働能力喪失期間の終期は、原則として67歳とされています。

逸失利益については、以下の点が問題となります。

#1:労働能力喪失率を低く見積もることによる逸失利益の減額

ところが、圧迫骨折については後遺障害等級に認定されていても、基準どおりの労働能力喪失率が認められなかった裁判例もあり、示談交渉では相手方の保険会社がそれを引用して逸失利益を不当に減額することがあります。

後遺障害等級に応じた労働能力喪失率に基づく適切な逸失利益を主張するためには、圧迫骨折によって業務や日常生活にどのような影響が生じたのかを具体的に説明できることが重要です。

たとえば、圧迫骨折によってどのような業務を行うことができなくなったのか、日常生活のどのような動作に困難が生じるようになったのかなどについては、事故後から記録に残しておくのがよいでしょう。

#2:労働能力喪失期間を短く見積もることによる逸失利益の減額

さらに、労働能力が喪失されることは認め、一定の範囲で逸失利益の発生が認められる場合であっても、労働能力喪失期間が67歳までの期間より短い期間で認定されることにより、逸失利益が不当に減額される場合もあります。

このような場合には、逸失利益の発生そのものを否定された場合と同様、圧迫骨折によって業務や日常生活にどのような影響が生じたのかを具体的に説明する必要があります。

また、変形障害は時間の経過により状態が回復するような障害ではなく、労働能力の喪失状態が回復することはないため、喪失期間を短期とすることに合理性がないと主張することが必要となります。

まとめ

本記事では、交通事故を原因とする圧迫骨折について、症状や認定される可能性がある後遺障害等級とその基準、示談交渉において注意すべきポイントなどについてご説明しました。

後遺障害等級の認定を受けるための基準はあいまいな表現である場合が多く、自分の症状と照らし合わせてどの等級に認定されるかを検討するのは困難な場合があります。

後遺障害の等級認定の手続でお悩みの方は、まずは弁護士へ相談してみることをおすすめします。

弁護士法人みずきでは、これまでに数多くの交通事故の問題やその後の後遺障害等級の認定申請の手続に対応してきました。

経験豊富な弁護士が丁寧にお話を伺いますので、ご検討の方はお気軽にご相談ください。

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執筆者 西村 賢二 弁護士

所属 第二東京弁護士会

私は、症状の大小に関わらず気軽に受診できる身近なお医者さんのような弁護士でありたいと思っています。まずは、直面された法的問題についてご遠慮なくご相談ください。
個人の方の日常生活や法人の方の事業活動の中で生じるご相談に幅広く適切に対応できるように努め続けたいと思っております。