交通事故で負った怪我が軽症だった場合の慰謝料の相場は?
「交通事故で負った怪我が軽症だったんだけど、それでも慰謝料はもらえるの?」
「交通事故の被害に遭って軽く打撲した。慰謝料をいくら請求できるの?」
「交通事故に遭ったけど、軽い怪我だから弁護士に頼まなくてもいいよね?」
交通事故で負った怪我が軽症だった場合、わざわざ通院したり、弁護士に相談したりするほどのことでもないと思われる方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、軽症の場合であっても、その内容に応じて適切な慰謝料などの賠償を受け取るべきであることは言うまでもありません。
そして、軽症の場合だからこそ、争いが生じやすいポイントというのも存在します。
本記事では、交通事故で負った怪我が軽症であった場合の慰謝料の相場や算出方法、そして適切な賠償を受けるために事故後に必ずすべきことをご説明します。
1.交通事故における軽症と慰謝料の相場
交通事故においては、様々なお怪我をする可能性があります。
手術や入院を要する大きなお怪我から、擦過傷(かすり傷)や打撲、捻挫といった日常的な傷病までその内容は様々です。
また、たとえば、ひとくちに捻挫といっても、テーピングや装具によって固定を要するほどの捻挫もあれば、湿布を貼れば日常生活を送れるような捻挫もあります。
このように、交通事故で怪我を負った場合でも、事情によって治療の内容や頻度、期間等は全く異なってきます。
そこで、本記事では、他覚所見がない(医学的検査をしても異常がない)等の軽い症状の負傷で、かつ入院を要しないものを「軽症」として、このような場合の対応をご説明します。
(1)擦過傷、かすり傷
特段縫合などの処置を要しないかすり傷は、軽症の部類に入ります。
仮に、交通事故でかすり傷を負い、通院期間が2週間、そのうち3日間通院した場合の入通院慰謝料の大まかな相場は、後にご説明する自賠責基準で25,800円、弁護士基準で95,000円です。
(2)軽い打撲、挫傷
軽い打撲や挫傷は、リハビリ等が必要ないことも多く、軽症と言えます。
仮に交通事故で軽い打撲や挫傷を負い、通院期間が1か月、そのうち6日間通院した場合の入通院慰謝料の大まかな相場は、後にご説明する自賠責基準で51,600円、弁護士基準で190,000円です。
(3)軽いむちうち、捻挫
軽いむちうちや捻挫で、医学的検査をしても異常がないような場合は、一定期間の物理療法を行い改善していくと考えられています。
仮にこのような場合に、通院期間が6か月、そのうち30日間通院したときの入通院慰謝料の大まかな相場は、後にご説明する自賠責基準で258,000円、弁護士基準で890,000円です。
2.軽症でも加害者に慰謝料等を請求できるのか
(1)軽症でも慰謝料を請求できる
交通事故で負った怪我がたとえ軽症であったとしても、慰謝料を請求することができます。
ただし、軽症だからといって病院に行かなかった場合には慰謝料はもらえません。
なぜなら、怪我をした事実を立証できないからです。
そのため、たとえ軽い怪我だと感じていても必ず病院の診察を受けましょう。
また、事故から時間が経ってから病院に行ったり、通院の間隔が空きすぎたりしないように注意しましょう。
適切なタイミングで診察・治療を行わないと、症状が悪化しかねないだけでなく、交通事故と症状との間に関係がないのではないかと考えられて、適正な慰謝料が認められない可能性があります。
(2)慰謝料を算出するための3つの基準
慰謝料額を算定するための基準は、3つあります。
どの基準を適用して算定するかにより、慰謝料の金額が大きく異なります。
#1:自賠責基準
自賠責基準は、自動車損害賠償保障法等の法令に定められた基準をいい、最低限の損害賠償金額が算定されます。
交通事故は未だ大量に発生していますので、損害賠償金の算定処理を迅速かつ公平に行う必要があるとともに、多くの被害者を保護、救済する必要があるため、自賠責基準は定型的に定められています。
また、上限額も120万円までと定められています。
そのため、自賠責基準によると、3つの基準のうち最も低い金額となることがほとんどです。
通院慰謝料の場合、自賠責基準によると、1日につき4,300円です(令和2年4月1日以降に発生した事故の場合。令和2年3月31日以前に発生した事故の場合は、1日につき4,200円です。)。
#2:任意保険基準
任意保険基準は、加害者側の任意保険会社が、示談交渉で損害賠償金額を提示する時の基準です。
各保険会社は、統計に基づき独自に慰謝料の算出基準を策定していますが、その策定内容や金額は非公開です。
もっとも、任意保険基準に基づき算定された金額は、一般に、自賠責基準による算定金額と弁護士基準による算定金額の間に落ち着きます。
#3:弁護士基準(裁判所基準)
弁護士基準は、被害者側の弁護士が示談交渉で損害賠償金額を提示する時の基準です。
過去の判例をもとに設定されており、裁判所も用いる基準であることから、裁判所基準とも呼ばれます。
一般的には、弁護士基準によると、3つの基準のうち最も高い金額となります。
ただし、弁護士基準により損害賠償金を請求するためには、弁護士に交渉等を依頼する必要があります。
弁護士法人みずきは、交通事故の法律相談を無料で承っています。
どうぞご相談ください。
(3)軽症の慰謝料相場
慰謝料の相場は、上記の各基準により異なります。
以下では、算定基準が非公開である任意保険基準を除き、軽症の場合の自賠責基準及び弁護士基準の各相場についてご説明します。
#1:自賠責基準
前述した自賠責基準を適用する場合、重症であっても軽症であっても、令和2年4月1日以降に発生した事故について、慰謝料金額は、1日につき4,300円で算定されます。
加えて、自賠責基準では、この日額に、「入通院期間」か「実際に入通院した日数の2倍」かのいずれか少ない方をかけて計算するというルールがあります。
たとえば、通院期間が180日間、実際に通院した日数が60日だったとします。
この場合、「入通院期間」が180日に対して「実際に入通院した日数の2倍」は120日ですから、少ない方の120を採用して計算することになり、自賠責基準に基づく入通院慰謝料は、4,300円×120=516,000円になります。
#2:弁護士基準(裁判所基準):原則
これに対し、弁護士基準(裁判所基準)を適用する場合、重症の場合と軽症の場合とによって、通院慰謝料の金額が変わります。
下の表は、軽症の場合の弁護士基準を整理したものになります。
(一月は30日として考えます)
たとえば、交通事故による受傷が明らかに軽症で、通院期間が180日間だったとします。
この場合、弁護士基準(裁判所基準)で算定すると、890,000円が通院慰謝料として算定されます。
#3:弁護士基準(裁判所基準):例外
ただし、傷害が軽症で、かつ、通院が長期にわたる場合は、症状や治療内容、通院頻度を踏まえ、実際の通院日数の3倍程度が、慰謝料算定のための通院期間の目安とされることがあります。
たとえば、#2.の例で、実際の通院日数が10日しかなかったとします。
この場合、通院頻度が少ないため「半年間も完治までかかった辛い怪我」とはいえないのではないか、と考えられてしまうのです。
そのため、実通院日数の3倍を目安として、全治1ヶ月程度の怪我を負った場合と同等の慰謝料で十分であると判断されてしまう可能性があります。
自己判断で通院頻度を低くしてしまうと、治療の効果があがらないだけでなく、このような経済的不利益が生じる可能性もありますので、医師に相談しながら治療のペースを決めるよう注意しましょう。
(4)慰謝料以外に請求可能な主な費目
交通事故で軽症を負った場合に、慰謝料以外に請求が可能な主な費目についてご説明します。
#1:治療費
交通事故による怪我を治療するために要した費用を加害者側に請求するものです。
軽症であっても、必要かつ相当な範囲で実費全額が治療費として認められます。
#2:休業損害
休業損害は、原則として、交通事故の怪我によって休業を余儀なくされたときに、現実に収入が減った分の金額を、加害者側に請求するものです。
また、現実の収入減がなくても、有給休暇を使用した場合は、休業損害として認められます。
そのため、必要に応じて仕事を休み病院で治療を受けても、減少した収入分は補填されます。
特に交通事故に遭った直後は、症状が軽いと感じても、病院にかかることを強くおすすめします。
#3:通院交通費
通院交通費は、交通事故による怪我の治療のために通った病院等への往復の交通費を請求するものです。
自家用車を使用した場合であっても、1kmあたり15円の計算で、自宅と病院等の往復分のガソリン代を請求することができます。
#4:後遺障害慰謝料及び逸失利益
当初は軽症だと思っていたけれども後遺障害が残ってしまったような場合には、後遺障害認定を受けることによって、後遺障害慰謝料および逸失利益の請求もできます。
3.交通事故に遭ったらすべき5つのこと
交通事故に遭ったら、次のことを必ず行いましょう。
(1)警察へ届け出る
交通事故が発生したら、必ず警察へ連絡しましょう。
そして、怪我をしていたら、軽症でも、人身事故として届け出ることが大切です。
#1:まず110番
交通事故に巻き込まれたら、必ず警察へ連絡しましょう(110番通報)。
交通事故が発生して人が死傷した場合に、運転者が警察に連絡することは、法律上の義務(道路交通法72条1項後段)で、これに違反したときは、3月以下の懲役または5万円以下の罰金に処せられます(道路交通法119条1項10号)。
また、実際上も、交通事故を警察に届け出ていないと、請求相手が分からなかったり、事故事実自体を争われたりする等、損害賠償請求が困難になってしまう可能性があるため、気をつけましょう。
#2:人身事故として届け出ること
加えて、大切なことは、たとえ軽症であっても人身事故として届け出るということです。
交通事故により負傷しても軽症だった場合、加害者や警察から物損事故(物が壊れただけの事故)として届け出るように勧められることもあります。
しかし、物損事故として届け出てしまうと、場合によっては、相手方に「交通事故で怪我をしていなかっただろう」と後日主張されることもありますので、人身事故として届け出たほうが安心です。
(2)事故の加害者の連絡先を確認する
交通事故に遭ったら、加害者の連絡先を確認しましょう。
このとき、示談交渉はしない方がよいでしょう。
#1:連絡先を確認すること
加害者が誰であるかを把握するために、相手方の連絡先を確認しておきましょう。
事故直後には、保険利用に関して等、相互に連絡が必要になる場合がありますので、連絡先を知っておくと安心です。
#2:その場で示談交渉はしないこと
また、交通事故が発生したその場で示談交渉はしない方がよいでしょう。
事故直後は、興奮状態になっていることも多く、その場での話し合いは冷静に進められないことが珍しくありません。
また、一般的に事故の当事者は、法律や損害賠償について詳しくはないため、その場で合理的な判断はできないでしょう。
もっとも、加害者や保険会社との交渉は、後日冷静になったとしても、労力を要するものです。
弁護士法人みずきは、示談交渉のお手伝いも行っています。
交通事故の法律相談を無料で承っていますので、どうぞご相談ください。
(3)保険会社に連絡する
加害者も被害者も、自らが加入している保険会社に連絡すべき約款上の義務があります(普通保険約款)。
このとき、人身傷害保険や弁護士費用特約など、使える保険があるかどうかも確認しましょう。
保険会社に連絡しないと、相手方との示談交渉に支障が生じたり、受けられるはずの補償が受けられなくなったりする可能性がありますので注意が必要です。
(4)強い痛みがなくても病院へ行く
交通事故に遭ったら、身体に強い痛みがなくても、医師の診察を受けましょう。
#1:すぐに病院へ行くこと
交通事故に遭ったら、たとえ強い痛みがなくても、すぐに病院に行きましょう。
交通事故による怪我は、事故からしばらく経ってから症状が重くなる場合があります。
しかし、このような場合に治療費等を保険会社等に請求するためには、交通事故の直後または近接した日にちに医師にかかっていないと、交通事故と症状との因果関係が疑われる可能性があります。
そうすると、本当は交通事故が原因で重い症状が出ているのに、それが疑われて、最悪の場合、治療費等の請求が断られる可能性すらあります。
そのため、交通事故直後には、強い痛み等がなくても、大した怪我をしていないということを確認する気持ちで、病院の診察を受けることも大切です。
また、診察を受けるときは、少しでも普段と違う不調や違和感があれば、全て申告するようにしましょう。
#2: 接骨院や整骨院について
他方で、接骨院や整骨院に通いたいという方もいることでしょう。
しかし、たとえ接骨院や整骨院に通う場合であっても、並行して、病院にも通院しなければなりません。
接骨院や整骨院は病院ではありませんので、怪我についての診断ができません。
まずは、病院の医師の診察を受け、許可をもらってから通うようにしましょう。
医師の判断なしに接骨院等に通っても、治療費や入通院慰謝料が支払われない可能性があります。
また、病院への通院を自己判断でやめてしまうと、治療費や入通院慰謝料が減額されたり、請求できなくなったりする可能性がありますから、注意しましょう。
(5)弁護士に相談する
交通事故で負った怪我が軽かったとしても、示談交渉の段階で法的な争点が生じることは多くあります。
軽症の場合の示談交渉で、特に争点になりやすい代表的なものは、次のとおりです。
- 休業損害の必要性及び相当性
- 通院交通費の必要性及び相当性
なお、弁護士費用に心配がある方もいらっしゃることでしょう。
しかし、弁護士費用は相手方から受け取る賠償の中からのお支払いという内容の契約をとっている法律事務所も少なくありません。
また、ご本人やご家族が加入されている任意保険に弁護士特約を付けている場合は、弁護士への相談や依頼にかかる費用が保険会社から支払われます。
弁護士特約を利用しても、次年度の等級は下がりませんので、ご安心ください。
#1: 休業損害の必要性及び相当性
前述のとおり、休業損害は、原則として、交通事故の怪我によって休業を余儀なくされたときに、現実に収入が減った分の金額を、加害者側に請求するものです。
軽症の場合、自覚症状のみがあり医学的検査をしても異常が発見されないということが多くありますので、本当に仕事を休む程の怪我なのか、休業する必要性が争点になりやすいです。
特に、一定期間休み続ける(完全休業)場合には、かなり問題となりやすい傾向にあります。
そのため、お怪我の状況、仕事の内容、医師の見解等を総合的に整理して主張をする必要があります。
#2: 通院交通費の必要性及び相当性
通院交通費の金額についても、同様の理由から、争点になりやすいのです。
特に、タクシーの利用については、軽症の場合には争いになることがほとんどです。
なぜならば、一般的には、軽症の場合は自家用車や公共交通機関を利用して通院することができると考えられるからです。
そのため、公共交通機関の利用可能性、症状の内容、天候等を踏まえて、タクシーを利用せざるを得ない点を合理的に説明しなければなりません。
#3:弁護士に相談する
このように、たとえ怪我が軽くても、示談交渉の段階で法的な争点が生じることは多くあります。
実際に問題になってから解決を図るよりも、治療継続中から弁護士に相談をして、法的問題を一つ一つクリアにしながら進めていくことで、安心感をもって解決まで至ることができるでしょう。
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4.まとめ
本記事では、交通事故で軽症を負った際の慰謝料の相場、算出方法、事故後に必ずすべきことをご説明しました。
交通事故により怪我を負ってしまった場合、たとえ軽症であったとしても、精神的なダメージが強く残ってしまう可能性があります。
また、特に入通院慰謝料については、交渉者が弁護士か否かによって、金額が大きく変わってきます。
そうすると、困難な状況に直面している交通事故の被害者にとって、加害者や保険会社との交渉を弁護士に依頼することにはメリットがあるといえます。
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