交通事故の裁判とはどのようなものか?裁判に出廷しなくてはいけないのかについて解説
弁護士業務をしていると、「今回の件は裁判をすべきか。」という問題に直面します。私達は、「裁判になった場合にこうなるだろう。」ということを常に予測しなければいけない立場です。
事案や立場によって、「裁判になった場合にこうなるだろう。」という予測が異なることもありますし、一般の方には理解し難いような内容も含まれていると思います。
本稿では、交通事故被害者の皆様の立場に立って、交通事故の裁判とはどのようなものなのか解説をしようと思います。
1.裁判をする理由
裁判をすべき場合とは何か、ずばり、加害者側(保険会社や加害者本人)から得られる賠償金が低いときです。
何と何を比べて賠償金の低さを判断するかというと、「加害者側(保険会社や加害者本人)が支払える上限金額」と「裁判をした場合に見込まれる賠償金」を比べます。
そして、後者が高いといえれば、裁判をすべきです。
もっとも、「裁判をした場合に見込まれる賠償金」が高いからといって、常に裁判をすべきとはいえません。
私達は依頼者の皆様の利益を追求しますので、早期解決と増額の可能性を天秤に掛けて、早期解決を図った方が依頼者の利益に適うというときには、裁判をお勧めしません。
例えば、半年~1年の期間を裁判に要して、1~5万円しか増額しないというのであれば、裁判はお勧めできません。裁判所に納める印紙代や出廷の交通費で増額分が消えてしまう場合もあります。
では、半年~1年の期間を裁判に要して10万円増額が見込まれる場合、50万円の増額が見込まれる場合はどうか。とても悩ましいところですが、結局は、依頼者の皆様の利益は何か、それぞれの価値判断で決めていくことになります。
もちろん「金額ではない。気持ちの問題だ。」という方の代理人として裁判をすることもありますし、不本意にも加害者側から訴えを提起された方の代理人として裁判をすることもあります。
2.なぜ裁判をしない方が良いのか
裁判をしない方が良い場合とは、ずばり、裁判をした場合に賠償金が減額する可能性が高いときです。
半年~1年の期間を裁判に要して、「得られるものがない」、「減額してしまう可能性が高い」という場合に、裁判をお勧めすることはありません。
3.裁判と世間体
本稿でいう交通事故の裁判とは、いわゆる「民事裁判」と呼ばれるものです。
自身の罪を問われる「刑事裁判」とは全く異なり、「民事裁判」では適正な賠償額や責任割合を決するための裁判ですので、本来世間体を考える必要はありません。
純粋に上記の早期解決と増額の可能性の天秤を考えていただければ、それで大丈夫です。
たまに、「金銭の支払いを求めるばかりで卑しい気持ちになってしまう。」「裁判所が近所で、ご近所の方からどう思われるか不安になってしまう。」という声を聞くことがあります。
しかし、私達が正しいと考えているのは裁判基準であり、その裁判基準を個々の事案に当てはめて賠償額を決定するのは裁判所です。
「適切な賠償金を受け取るため」と割り切ってお考えいただくことが何より重要だと思います。
(なお、裁判基準について、本稿と別のコラム『「損害の算定基準」~自賠責基準?保険会社基準?裁判所基準?弁護士基準?~』参照)
4.裁判には出廷しなくてはいけないのか
裁判期日は、平日日中に、通常1ヶ月に1回程度設けられます。
依頼者の皆様に出廷していただく必要はありません。
裁判期日が2回、3回と進んでいった後に、本人尋問の機会が設けられることがありますので、その際は出廷していただきます。
本人尋問が実施されるかどうかは事案によって様々ですが、実施されずに裁判が終結することも多々ありますので、ご安心ください。
まとめ
私達は、交通事故被害者の皆様のため、適切な解決は何かを考えて仕事をしています。
適切な解決のために、時には裁判が必要な場合があります。私達は、皆様の利益に適うのであれば、裁判を厭うことはしません。
民事裁判は、書面上のやりとりが主であり、裁判期日前の書面準備が最も重要です。
裁判期日では「陳述します。」と法廷で発言するのみであることが多いですし、裁判期日を傍聴される方がいても、内容まではわからないということが大半です。
無駄な裁判はすべきではありませんし、裁判をして、加害者側の主張を聞くことで気分を害されたり、書面準備で長期の時間を要し不安が増長したりということもあるかもしれません。
ただ、裁判をすることに漠然とした抵抗感がある方には、適切な解決を図るために、裁判が必須になることがあるということと、少しでもご不安に思うことがあれば、その都度私達が解消に向けて努力するということをご理解いただければ幸いです。
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