怪我をしたけれど、治る可能性がある場合も後遺障害になるの?~逸失利益の制限期間~
1.後遺障害とは
交通事故でお怪我を負った結果、無事に完治すれば問題ないですが、不幸にも症状が残存してしまった場合には、後遺障害の認定を受けることとなります。
つまり後遺障害は、簡単にいえば、治療を尽くしてもこれ以上改善が見込めない症状が残存しているということになります。
2.永続しなくても後遺障害なのか
後遺障害と聞いてイメージしやすいのは、失明や腕の切断などではないでしょうか。
これらは、現在の医学では、ほとんど改善が見込めません。
では、いわゆるむちうち後の頚部痛などはどうでしょうか。
一般に、骨折や中枢神経損傷などの器質的損傷を伴わない疼痛は、永続はしないと考えられています。
人間の体には自然治癒力がありますし、慣れもありますから、徐々に体が痛みを感じない動きを覚え、徐々に痛み自体を感じなくなっていきます。
10年もすれば、事故に遭ったことも忘れられるのではないでしょうか。
しかし、治るからといって加害者との示談を10年後にするというのは、非常に迂遠です。
加害者や保険会社との関係を継続するのは、双方ともに負担が大きいですし、精神的に参ってしまいます。
そこで、このような、すごく長期的に見れば治っては行くけれど、短期的には症状が残ってしまうという場合にも、後遺障害として認めるということになっています。
中には、「治るのに後遺障害というのはおかしいのではないか」と思われる方もいるかと思います。
しかし、後遺障害は、上述のように、治療を尽くしてもこれ以上改善が見込めない症状が残存しているという状態を指します。
そして、疼痛は、自然治癒力や慣れによって軽減していきます。
つまり、治療行為の結果として症状が軽快しているというわけではないので、後遺障害と考えてもおかしくはないのです。
当然、その前提として、一定期間の適切な治療は必要となりますが、一般的には半年以上治療を継続してもなお疼痛が残存している場合には、症状固定として、治療が功を奏しない状態となっていると考えられます。
3.逸失利益が制限されることはあるのか
さて、後遺障害が認められた場合には、労働能力の喪失を伴いますので、逸失利益の請求が可能となります。
ここで問題となるのが、逸失利益の計算方法です。
通常、後遺障害は永続することが予定されていますので、就労可能年数(原則67歳まで)を基準に逸失利益が算出されます。
しかし、上記で見たような、治る後遺障害については、永続しないため、逸失利益の算定期間が制限されることがあります。
疼痛が該当する後遺障害は14級9号か12級13号ですが、裁判例の多くは、
後遺障害14級9号の場合…労働能力喪失期間5年
後遺障害12級13号の場合…労働能力喪失期間10年
をひとつの目安としています。
つまり、5年から10年もすれば、痛みも治まり、以前と同じように仕事に打ち込め、収入を得ることができるだろう、ということです。
(1)具体的事案における検討が必要
しかし、この5年から10年というのは、厳密な裏付けがあるものではありません。
一般的な話に過ぎないのです。
したがって、5年や10年での計算が妥当かどうかは、個別の事案ごとに検討することが必要です。
疼痛の強さや疼痛の部位、そして職業の内容によっては、到底5年で軽快するとは考え難い場合も容易に想像できます。
裁判例にも、14級で5年以上、12級で10年以上の期間を認めているものはあります。
当事務所の場合、たとえ14級であっても、5年で症状が軽快する確証はないため、5年を超える請求ができないかを検討することにしています。
12級の場合でも同様です。
具体的な事情と、裁判例の傾向を踏まえて、適切な賠償額の検討をすることが大切です。
(2)痛みでも、原因が分かれば大違い
さて、上では14級では5年、12級では10年がひとつの目安だといいましたが、これはあくまで、器質的損傷がない場合です。
つまり、痛みの原因自体ははっきりしないのだが、痛みが残っていることははっきりしているということです、
このような場合には、目立った損傷がないのだから、そのうち治るだろうと考えられます。
他方で、同じように痛みや痺れが残っている場合にも、原因がはっきりしていることがあります。
例えば、骨折をし、骨片転位が起こって神経を圧排している場合や、靭帯等を損傷して疼痛が発生している場合には、これらの原因が改善されない限り、疼痛は残存し続けることもあり得ます。
したがって、そのように器質的損傷を伴うような場合には、たとえ後遺障害が14級9号やや12級13号に該当するとしても、相当長期間の労働能力喪失を主張することが可能な場合があります。
まとめ
保険会社は、神経症状の後遺障害と見るや、3年や5年での示談を迫ってきます。
弁護士の中にも、画一的に5年、10年での請求しかしない場合もあるかもしれません。
もちろん、裁判所が目安としている年数を超えて認定されるためには、難しい立証を達成しなければなりません。
しかし、大切なのは、一件一件の事故について、具体的に検討をすることです。
不当に廉価な示談をしてしまう前に、あなたの適切な損害額がいくらなのか、是非弁護士にご相談ください。
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