慰謝料が増額する場合について解説!
1.慰謝料とは
交通事故で怪我を負うと、慰謝料を請求できます。
たまに「イシャリョウ」を「医者料」と思い、医者にかかった費用のことだと勘違いしている人がいますが、違います。
慰謝料とは、お怪我を負ったことに対する、精神的肉体的損害を金銭に換算したものです。
分かりやすくいえば、「怪我を負って辛かったよね。ごめんなさい」という意味合いを持つものです。
2.慰謝料の基準とは
同じ程度の怪我を負っても、すごく気に病む人もいれば、へっちゃらだという人もいるかもしれません。
そうすると、被害者がどんな人かによって、慰謝料の金額が変わってくる可能性がありますが、実際はそうはなりません。
これは、加害者の側から見ると分かりやすいと思います。
自分が怪我を負わせてしまった人がたまたま繊細な心を持っていたら慰謝料が高くなる、たまたま豪胆な人だったら慰謝料が低くなる、そんなことでは加害者間での公平が保てなくなります。
したがって、裁判所は、怪我の内容と治療期間である程度の相場感を決めています。
これが俗に言う、「裁判所基準」というものです。
3.どんな場合でも慰謝料は変わらないのか
裁判所基準で見てみると、例えばむち打ちで6ヶ月間通院した場合には、慰謝料は89万円になります。
では、絶対にこの金額なのでしょうか?
それぞれ被害者には個別の事情があるでしょう。
怪我の痛みを押して仕事を頑張った。
怪我の痛みのせいで、可愛い我が子を抱っこできなかった。
怪我の傷みのせいで、婚活に遅れが生じた、などなど。
しかし、裁判所基準は、ある程度想定できる事情は抽象化して加味されたものとなっています。
したがって、個別に「自分はこれだけ大変だったんだ」「自分はこんなに辛い思いをしたんだ」と主張しても、裁判所基準を大きく変動させることは、なかなか難しい場合が多いです。
しかし、絶対に変わらないかといえばそうではありません。
過去の判例上、裁判基準を数割増額して認定したものがありますので、これをご紹介します。
(1)加害者に故意もしくは重過失があるような場合
これは、加害者の運転行為について、下記のように法規違反の程度が著しい場合を指します。
・無免許運転
・ひき逃げ
・酒酔い運転、酒気帯び運転
・著しいスピード違反
・ことさらに信号無視
・薬物等の影響により正常な運転ができない状態での運転
これは、被害者の怪我の程度云々ではなく、加害者の義務違反が大きいため、大きな責任を問うという発想です。
(2)加害者に著しく不誠実な態度等がある場合
事故の原因を偽ったり、取調べや賠償に応じないような態度を取り続ける加害者に対しては、重い責任を負わせることがあります。
場合によっては、加害者側が、客観的な事故態様から認められないほどの大きな過失相殺率を主張することは、相当な権利主張の範囲を逸脱するものと判断され、慰謝料増額事由に該当する場合があります。
(3)被害者の親族が精神疾患に罹患した場合
例えば被害者が死亡してしまい、その両親がうつ病等で精神科に通院をしているような場合には、精神的損害の大きさを考慮して、慰謝料が増額される場合があります。
もっとも、むち打ち程度の傷害結果では、事故との因果関係を認めることは難しいので、単純に親族が精神的に参れば慰謝料が増額されると形式化することはできません。
(4)その他
上記以外でも、事案によってさまざまな検討がなされています。
例えば、妊娠2週目と気づかないうちに追突事故に遭いレントゲン撮影をしてしまったために人工妊娠中絶を余儀なくされた場合や、かなりの重症で長期入院や複数回の手術を繰り返したような場合には、慰謝料が増額されているものがあります。
4.場合によっては別の不法行為になることもある
上記は、あくまで「事故による慰謝料の増額」という観点でしたが、場合によっては、事故による損害とは別個の損害を観念できることもあります。
例えば、弁護士を立てた被害者につき、加害者側の保険担当者が被害者及び被害者側の弁護士を通さずに、被害者の金先へ架電した上で、被害者が代理人を選任したことを非難する言動をした事案では、これが受忍限度を超える独自の不法行為を構成するとして、20万円の賠償義務を認めました(東京地判H17.9.13)。
このように、加害者や加害者側の人間、保険担当者の不誠実すぎる行為は、別途不法行為が成立することがあります。
例えば加害者が脅迫的な言葉遣いをした、加害者の保険担当者が無理やり家まで押しかけてきた等のような場合には、別途請求を検討すべきです。
まとめ
以上のように、慰謝料増額事由は簡単に認められるものではありませんが、それでも訴訟となれば認められる場合もあります。
加害者側の保険会社はこの辺りについて、自ら認めてくることはありません。
上記のような事情がある場合には、加害者の提案を鵜呑みにせず、一度弁護士にご相談ください。
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