インプラント治療することになった場合の慰謝料請求について
交通事故で歯が欠けてしまった場合、医師からインプラント治療を勧められることがあります。
1.インプラントとは?
「インプラント」とは、簡単に言うと、金属製のネジをあごの骨に埋め込んで歯の根の代わりにし、その上から人工の歯を嵌め込む治療法です。
似た治療法に「差し歯」がありますが、差し歯は、もともとある歯の根に土台を作り、その上から人工の歯を被せる治療法です。インプラントは歯の根から人工のものにしますが、差し歯はもともとの歯の根を使うという点で異なります。
2.インプラントのメリット・デメリット
インプラントは、歯の根からしっかりとあごの骨に固定されるためしっかり噛むことができますし、見た目もとても自然で、かなり長持ちするため、治療方法として大きなメリットがあります。
しかし、例えば差し歯であれば使う素材によっては健康保険を適用して安く治療を受けることもできますが、インプラントは、健康保険が適用されないため、材料費を含めた治療費がすべて自由診療となり、治療費が高額になる傾向にあります。
自由診療なので、費用は病院ごとに異なりますが、大体1本あたり30~40万円くらいかかるのが一般的と言われています。
また、インプラントにした後は、長持ちさせるために定期的にメンテナンスをする必要があり、長持ちするといっても寿命があるため交換が必要になることもあります。
その度に費用がかかるのです。
3.インプラントの慰謝料の請求方法
交通事故でインプラント治療が必要となった場合、インプラントの治療費やその後のメンテナンス代等を損害として、加害者や加害者側の保険会社に賠償請求していくことになります。
この点、歯が欠けた場合の治療法としては、「インプラント」だけでなく、先ほど述べた「差し歯」その他にも「ブリッジ」や「(部分)入れ歯」など様々な治療法があります。
そこで、インプラントの治療費を加害者側に支払わせるためには、インプラント治療の必要性・相当性をこちらから主張立証していかなければならないのです。
なぜ今回、治療費の高いインプラント治療が必要なのか、他の治療法ではダメな理由などを医師への医療照会や医師面談等によって丁寧に裏付けしていくことになります。
さらに、将来のメンテナンス代等について請求する場合には、どういう理由でどのくらいのタイミングでメンテナンスや交換が必要か、その費用はいくらかについても、医療照会等によって明らかにし、具体的な金額を提示して請求していかなければなりません。
4.後遺障害が認められないと請求できないのか
交通事故によって歯が欠けてしまい、インプラントや差し歯など人工物によって補った(「補綴(ほてつ)」と言います)場合、後遺障害等級14級2号~10級4号に該当する可能性があります。
例えば、3本以上の歯を補綴した場合には14級2号、5本以上の歯を補綴した場合には13級5号といったふうに、欠けて補った歯の数が多くなるにしたがって高い等級が認められるのです。
では、2本の歯をインプラントで補綴した場合はどうでしょう。
残念ながら、後遺障害等級には当てはまらず、後遺障害の認定は下りません。
では、後遺障害認定が下りなかった場合、かかったインプラント費用は加害者側に請求できないのでしょうか。
インプラント費用は「治療費」ですので、「後遺障害」が認められなくても、加害者側に請求することができるものになります。
ただし、先ほど述べたように、その治療の必要性・相当性をしっかりと資料に基づいて主張立証していかなければなりません。
まとめ
以上のように、インプラントは治療法として優れている点も多いため、お怪我をされた方としてはぜひ選択したい治療法のひとつかと思います。
しかし、その治療費等について賠償を得るためには、しっかり資料を集めて主張立証していく必要があります。
また、後遺障害に関しても、「交通事故で歯が欠けたけれど、他にもともと差し歯にしていた歯があった」場合などは、補綴した歯の本数の数え方にちょっとしたコツも必要です。
交通事故で歯が欠けてしまい治療法で迷ってらっしゃる方、どの後遺障害等級に当たるか分からないという方は、どうぞお気軽に当事務所の弁護士にご相談ください。
ひとつひとつ説明させていただきながら、適正な賠償を受けるための道をご案内いたします。
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