高速道路上における事故について|ケース別で解説(その2)

執筆者 金子 周平 弁護士

所属 栃木県弁護士会

法律は堅苦しいという印象はあるかと思います。しかし、そんなイメージに阻まれて、皆さんの問題や不安が解決されないのは残念でなりません。
私は、そんな法律の世界と皆さんを、柔和に橋渡ししたいと思っています。問題解決の第一歩は、相談から始まります。
皆様が勇気を振り絞ってご相談をしていただければ、後は私どもが皆様の緊張や不安を解消できるよう対応し、法的側面からのサポートができればと思います。敷居はバリアフリーです。あなたの不安を解消するために全力でサポート致します。

高速道路上における事故について|ケース別に解説(その1)では、主に進路変更時の事故や追突事故など、どちらかと言えば高速道路上の事故の中ではよく起こりうる事故について、過失割合を説明しました。

ここでは、高速道路上の事故の中で少し特殊な事故の過失割合について説明します。

高速道路と一般道路の違いについては、上記の記事を参照ください。

1.高速道路上の事故の過失割合について

 (1)落下物による事故

A:B=40:60

高速道路においては、一般道路に適用される積載物転落等防止義務(道路交通法71条の4)のほか、積載物の転落等による事故発生を防止するため貨物の積載状態を点検する義務(同法75条の10)が課されていますので、高速道路上に積載物等を落下させた前車の責任は一般道路の場合に比べて格段に重いといえます。

また、後続車としても、時速80kmを超える高速度で進行しながら落下物の危険性の程度を即座に判断し、適切な回避措置を講ずることは、少なからず困難を伴うものと考えられます。

したがって、後続車の前方不注視又はブレーキ・ハンドル操作不適切等の安全運転義務違反(同法70条)の過失よりは、やはり高速道路の本線車道上に積載物等を落下させた先行車の過失の方が大きいとされています。

これらを考慮して、過失割合は、A:B=40:60となります。

ただ、後続車には、軽度の前方不注視があることが前提となっていますので、200m手前から発見が容易であるにもかかわらずこれに気付かなかった場合などは、後続車に著しい過失又は重過失が認められ、10%から20%が加算されます。

なお、高速道路においては、高速度での走行が許容されているので、落下物自体には接触しなくても、運転者が適切な回避措置をとることができず、事故に至ることも十分あり得ます。

したがって、非接触型の事故についても、落下物の存在と事故の発生との間に因果関係が認められる限り、上記の基準に従って判断されます。

(2) 歩行者と自動車の事故(原則)

歩行者:80%

高速自動車国道法17条1項では、何人もみだりに高速自動車国道に立ち入り、又は高速自動車国道を自動車による以外の方法により通行してはならないとされています。

ですので、高速道路上に歩行者がいることは法律上予定されていません。

したがって、高速道路上にいたこと自体、歩行者の重大な過失といわなければならず、相当大きな過失相殺がされるのはやむを得ません。

もっとも、高速道路の見通しが比較的よいことを考慮すると、自動車側にも前方不注視又はハンドル・ブレーキ操作の不適切等の安全運転義務違反(道路交通法70条)の過失があると考えられています。

このことを前提として、歩行者に80%の過失が認められています。

なお、自転車も、歩行者と同様に高速道路上にいることが法律上予定されていないので、高速道路上に進入した自転車が自動車に衝突された場合も本基準が適用されます。

(3) 歩行者と自動車の事故(高速道路上に歩行者がいることがやむを得ない場合)

歩行者:40%

上記のとおり、高速道路上に歩行者がいることは法律上予定されていません。

しかし、高速道路上で非常措置(停止表示器材の設置等)を講ずるために駐停車車両の近傍に人がいることがあります。

また、自動車の運転者としても、高速道路上に駐停車車両があれば、近傍に人がいることを容易に知ることができます。

したがって、このような場合には、上記(2)の原則よりも歩行者に有利に考えるべきであり、歩行者の過失は40%と考えられています。

※運転者以外の同乗者については、同乗していた自動車に火災・爆発等の危険がある場合等、車外に出ることがやむを得ない場合を除いて、原則として本基準が適用されます。
※高速道路上の工事現場付近にいた工事関係者の事故の場合も本基準が適用されます。

なお、「近傍」については、道路状況や駐停車の態様などにもよりますが、おおむね10m以内をいいます。

(4) 高速道路料金所エリアの事故

これまでの高速道路上の事故態様は、高速道路上における事故について|3つのケースの過失割合を解説(その1)を含め、「別冊判例タイムズNo.38」という書籍で類型化されています。

この書籍は、東京地方裁判所の民事交通訴訟研究会という裁判官を中心とした研究会で作成されたものです。様々な事故態様が類型化されており、基本的な過失割合が定められています。

もっとも、その中に載っていない事故態様もあり、高速道路料金所エリアでの事故も記載されていません。

ただ、料金所レーン前は、車線で区切られているわけではなく、自動車の進路変更が多い場所なので交通事故も発生しやすいです。

そこで、高速道路料金所エリアの事故での過失割合について説明したいと思います。

判例タイムズに載っていない事故態様の場合は、それに近い裁判例を参照するのがいいでしょう。

上記の図のような交通事故の場合、東京地方裁判所平成18年8月9日判決は、以下のように判断しています。

<東京地方裁判所平成18年8月9日判決>

「本件事故の現場は高速道路上であるから、原告車両が進路変更したり減速するに当たっては、一般道路以上に配慮が求められるべきではあるといえるが、他方、料金所の手前であって、車両が減速したり左右に進路を変更することは十分あり得る場所であること、基本的には追突事故であって、後方を走行していた被告車両の原告車両の動静に対する注視義務違反の過失が大きいものといわざるを得ないこと」から、双方の過失割合について、原告車両:被告車両=30:70と判断しました。

この裁判例では、料金所付近において、いったん左に進路を定めた後に右へ左へとハンドルを切るなどの迷い運転をした被追突車にも過失が認められました。

もっとも、料金所付近では、車両が変則的な動きをすることも十分にあるので、後続車は左右の車両の動きに注意する必要があります。

したがって、追突車の前方注視義務違反の過失が大きいと判断されました。

まとめ

高速道路に限らず、交通事故の過失割合で争いがある場合は、判例タイムズや裁判例を調べる必要があります。

相手方の保険会社から過失割合の話があっても、それが適切なものか判断に迷うこともあると思います。

過失割合などでお困りの際には、是非当事務所にご相談ください。

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執筆者 金子 周平 弁護士

所属 栃木県弁護士会

法律は堅苦しいという印象はあるかと思います。しかし、そんなイメージに阻まれて、皆さんの問題や不安が解決されないのは残念でなりません。
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