過失割合0:100の交通事故について解説!過失割合と修正要素(その1)

過失割合が被害者0:加害者100となる場合、被害者にはまったく責任はないと考えられ、損害賠償については加害者が全額を支払うことになります。

過失割合が0:100となる事故態様としては、交差点の赤信号無視追突事故などが該当します。

これらの事故に遭遇してしまった場合、基本的には過失割合について考える必要はありません。

通常は、損害額は過失相殺されることなく、全額の賠償を相手方に請求することができます。

ただし、上記のような事故態様だとしても、全てにおいて過失割合が0:100になるわけではありません。

過失割合は、過去の裁判例をもとに、車両の種類や事故態様や発生状況ごとに、基本となる過失割合が定められています。

また、様々な事情により基本割合を修正する要素修正割合も定められています。

そこで、基本割合が0:100になる事故態様の具体例と、その事故態様の修正要素などについて説明したいと思います。

ここでは、①歩行者と自動車の事故、②自転車と四輪車の事故についてお話します。

1.歩行者と自動車の事故

(1)横断歩行者の事故

<車:赤信号、歩行者:青信号>
直進車と歩行者との事故で、直進車が赤信号、歩行者が青信号の場合、過失割合は0:100となり、特段修正される要素はありません。

<車:赤信号、歩行者:青→黄信号>
青信号で横断を開始した歩行者が、黄信号に変わった時点で、赤信号で進行してきた車に衝突された場合も、過失割合は0:100となります。
なお、青色点滅信号は黄信号と同一に扱われます(道路交通法施行令2条1項、4項)。

<車:赤信号、歩行者:青→黄→赤信号>
青信号で横断を開始した歩行者が、途中で黄信号に、更に赤信号に変わった時点で、赤信号で進行してきた車に衝突された場合を想定しています。
この場合の基本的な過失割合は0:100となります。

ただし、上記2つの例とは異なり、衝突時点で歩行者信号も赤に変わっていることから、以下の修正要素がある場合には、歩行者の過失割合が修正されることになります。

ア 幹線道路              +5%
※幹線道路
歩車道の区別があり車道幅員がおおむね14m以上(片道2車線以上)で、車両が高速で走行し、通行量の多い国道や一部の都道府県道が想定されています。

イ 直前直後横断、佇立・後退      +5%
※直前直後横断、佇立・後退
歩行者が、車両等の直前・直後で道路を横断すること(道路交通法13条1項)、特段の事情なく立ち止まったり、後退したりすることをいいます。

ウ 児童・高齢者、幼児・身体障害者等  -5%

エ 集団横断              -5%
※集団横断
歩行者が集団で道路を横断・通行することをいいます。車からの発見の容易性が考慮され、歩行者の過失相殺率が減算修正されます。

オ 車の著しい過失           -5%
※車の著しい過失
著しい過失の例としては、脇見運転等著しい前方不注視、著しいハンドル・ブレーキ操作不適切、携帯電話等の無線通話装置を通話のため使用したり、画像を注視したりしながら運転すること、自足15km以上30km未満の速度違反、酒気帯び運転等があります。

カ 車の重過失            -10%
※車の重過失
重過失の例としては、酒酔い運転、居眠り運転、無免許運転、時速30km以上の速度違反、過労・病気及び薬物の影響等の理由により正常な運転ができないおそれがある場合等があります。

(2)横断歩行者以外の事故

① 歩行者用道路における事故

歩行者用道路においては、歩行者は、歩車道の区別の有無にかかわらず、道路のどの部分でも自由に通行できます。

したがって、原則として過失割合は0:100であり、歩行者は過失相殺をされることはありません。

ただし、通行を許された車両(緊急自動車や消防用車両など)との関係では、歩行者の通行権が絶対的なものとはいえないので、歩行者に対して安全確認義務が課される場合もあります。

通行を許された車両との関係では、歩行者に急な飛び出しや大きなふらつきがある場合、歩行者に+5~10%の過失修正がされます。

② 歩車道の区別のある道路における事故

車は、歩車道の区別のある道路においては、車道を通行しなければならず、道路外の施設又は場所に出入りするためやむを得ない場合において歩道等を横断するときや、駐車するため必要な限度において歩道等を通行するときに限り、歩道等を通行することが許されているにすぎません(道路交通法17条1項)。

しかも、車は歩道等に入る直前で一時停止し、かつ、歩行者の通行を妨げないようにしなければならないので(同条2項)、原則として過失相殺されるべきではなく、過失割合は0:100となります。

2 自転車と四輪車の事故

(1)交差点における直進車同士の出合い頭事故

信号機により交通整理の行われている交差点において、四輪車が赤信号、自転車が青信号であった場合、原則として過失割合は0:100となります。

ただし、以下の修正要素がある場合には、自転車の過失割合が修正されることになります。

ア 自転車の著しい過失      +5%
※自転車の著しい過失
著しい過失の例としては、酒気帯び運転、2人乗り、無灯火、並進、傘を差すなどの片手運転、脇見運転等の著しい前方不注視、携帯電話等の無線通話装置を通話のため使用したり、画像を注視したりしながら運転すること等があります。

イ 自転車の重過失       +10%
※自転車の重過失
重過失の例としては、酒酔い運転、いわゆる「ピスト」(ブレーキを装備していない自転車)等の制動送致不良があります。

ウ 児童・高齢者等        -5%

エ 自転車横断帯通行       -5%

オ 車の著しい過失        -5%

カ 車の重過失         -10%

(2)交差点における左折四輪車と直進自転車

四輪車が、同一方向を走行する自転車を追い越して左折しようとして、直進する自転車との間で事故が発生した場合です。

これは、交差点の手前30m以内の地点で四輪車が自転車の追越し、または追抜きを完了した場合が想定されており、原則として過失割合は0:100となります。

ただし、以下の修正要素がある場合には、自転車の過失割合が修正されることになります。

ア 自転車の著しい過失、重過失 +5~10%

イ 児童・高齢者等          -5%

ウ 車の大回り左折・進入路鋭角   -10%
※車の大回り左折・進入路鋭角
大回り左折とは、左折のためにいったん右に膨らむような左折方法です。また進入路鋭角とは、鋭角に左折(8時の方向)するような交差点での左折をいいます。これらの場合には、後行の自転車に誤解を与える要素が大きいので、四輪車がこのような左折をする場合にはいっそうの注意義務が課せられることになります。

エ 車の合図遅れ           -5%

オ 車の合図なし          -10%
※車の合図遅れ・合図なし
左折をする場合には30m手前で合図を出さなければなりません。合図は後行する自転車の注意を基礎付けるものとして重要なものであるため、過失修正がなされます。そこで、合図が著しく遅れ、合図がほとんど意味をなさないような場合は、合図なしに準ずることになります。

カ 自転車横断帯通行         -5%

キ 車の著しい過失、重過失   -5~10%

まとめ

ここでは、歩行者と自動車の事故、自転車と四輪車の事故についてお話しました。

基本的に過失割合が0:100と想定される場合でも、事故態様、発生状況などにより修正されることがあります。

保険会社から、「今回の事故は○○の事情があるので、1割の過失があります」と言われることもあるかもしれません。

しかし、事故状況は様々であり、加算要素もあれば減算要素もあります。

保険会社に言われるまま過失割合を決めてしまうと、損害額が大きくなったときに自身が負担する金額も大きくなってしまいます。

過失割合に納得がいかない場合、適切なものか判断に迷う場合など、過失割合などでお困りの際には、是非当事務所にご相談ください。

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