後遺障害等級14級の主な症状と認定のポイント

後遺障害等級14級は、14段階に分類された後遺障害等級の14番目にあたる等級です。

交通事故による受傷の中で最も多いとされているムチウチの場合に認定され得る後遺障害等級が14級9号と12級13号の2種であることから、後遺障害等級14級は後遺障害等級の中でも比較的認定されることが多い等級だといえます。

ここでは、どういう症状が後遺障害等級14級に該当するのか、14級が認定されることでどのような賠償を受けることができるのかについてご紹介します。

1.後遺障害等級14級に認定されるメリット

「後遺障害」とは、交通事故による受傷で治療の末に残ってしまった症状のうち、将来においても回復が難しく、労働能力の喪失・低下を伴うもので、自賠法施行令(自動車損害賠償保障法施行令)に定められている障害のことをいいます。

後遺障害は被害者の将来に影響を及ぼすものであるため、治療の末に残ってしまった症状がある方は、自賠責保険に後遺障害等級認定申請を行い、その症状が後遺障害に該当するかの調査を行う必要があります。

そして、後遺障害等級の認定を受けた場合は、その等級に応じて「後遺障害慰謝料」と「逸失利益」とういう項目について、加害者に対し賠償を求めることができます。

後遺障害慰謝料と逸失利益の詳細については、「交通事故で後遺障害等級14級に認定された場合に請求できる内容と計算方法」で後述します。

2.後遺障害14級の各症状について

後遺障害等級14級は、自賠法施行令の後遺障害別等級表において次のような症状だと定められています。

1:1眼のまぶたの一部に欠損を残し又はまつげはげを残すもの
2:3歯以上に対し歯科補綴を加えたもの
3:1耳の聴力が1メートル以上の距離では小声を解することができない程度になったもの
4:上肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとを残すもの
5:下肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとを残すもの
6:1手のおや指以外の手指の指骨の一部を失ったもの
7:1手のおや指以外の手指の遠位指節間関節を屈伸することができなくなったもの
8:1足の第3の足指以下の1又は2の足指の用を廃したもの
9:局部に神経症状を残すもの

(1)1眼のまぶたの一部に欠損を残し又はまつげはげを残すもの

14級1号は、目のまぶたの障害に関するものです。

まぶたの障害は、「欠損障害」と「運動障害」の2種類があり、この内14級1号に該当するのはまぶたの欠損障害です。

14級1号は、交通事故によって左右いずれか片方のまぶたに次のいずれかの障害が残った場合に該当します。

【まぶたの一部に欠損を残すもの】

「まぶたの一部に欠損を残すもの」とは、まぶたを閉じた時(閉瞼時)に、角膜を完全に覆うことはできるけれども、しろめ(球結膜)が一部露出している程度にまぶたが欠損しているものを指します。

【まつげはげを残すもの】

「まつげはげを残すもの」とは、まつげ縁(まつげのはえている周縁)の1/2以上にわたってまつげがはえてこない状態となっていることを指します。

(2)3歯以上に対し歯科補綴を加えたもの

14級2号は、歯の障害(歯牙障害)に関するものです。

「歯科補綴(しかほてつ)を加えたもの」とは、喪失した歯または著しく欠損した歯に対する補綴をいいます。

著しく欠損した歯とは、歯冠部(歯肉から露出している部分)が4分の3以上欠損している歯を指します。

14級2号は、交通事故によって歯科補綴を加えた歯が3歯以上ある場合に該当することになります。

なお、交通事故によって受傷した歯に加え、歯科技工上必要でけずった歯も判断の対象となります。

(3)1耳の聴力が1メートル以上の距離では小声を解することができない程度になったもの

14級3号は、耳の聴力障害に関するものです。

聴力障害には、純音を聴き取る「純音聴力レベル」の純音聴力検査と、語音を聞き分ける「明瞭度」を調べる語音聴力検査の2種類があり、14級3号に関係するのは純音聴力検査です。

14級3号の「1耳の聴力が1メートル以上の距離では小声を解することができない程度になったもの」とは、交通事故による受傷を原因として、純音聴力検査で左右いずれか片方の平均純音聴力レベルが40dB以上70dB未満となった場合に該当します。

(4)上肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとを残すもの

14級4号は、上肢の醜状障害に関するものです。

醜状は原則としてひと目につく程度以上のものである必要があるため、衣服や毛髪等で完全に隠れる部位に生じたものは評価の対象とはなりません。

14級4号は、交友事故による受傷により、上肢にてのひらの大きさの醜状痕が残った場合に該当します。

なお、「てのひらの大きさ」とは、てのひらから指の部分を除いた面積をさし、計測の際は、被害者のてのひらを使用します。

(5)下肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとを残すもの

14級5号は、下肢の醜状障害に関するものです。

醜状は、上肢と同様に、衣服や毛髪等で完全に隠れる部位に生じたものは評価の対象とはなりません。

14級5号は、交友事故による受傷により、下肢にてのひらの大きさの醜状痕が残った場合に該当します。

「てのひらの大きさ」の定義や計測方法は上肢の場合と同様です。

(6)1手のおや指以外の手指の指骨の一部を失ったもの

14級6号は手指の障害に関するものです。

手指の障害には、指の一部を失う等の欠損障害と、指の可動域制限に関する機能障害の2種類があり、14級6号に該当するのは手指の欠損障害です。

14級6号は、交通事故による受傷により、左右いずれか片方の手指ののうち親指を除いた指4本のいずれか1本について、指骨の一部を失っていることがレントゲン画像等により確認できる場合に該当します。

(7)1手のおや指以外の手指の遠位指節間関節を屈伸することができなくなったもの

14級6号は手指の機能障害に関するものです。

14級6号の「1手のおや指以外の手指の遠位指節間関節を屈伸することができなくなったもの」とは、交通事故による受傷により、左右いずれか片方の手指のうち親指を除いた指4本の中のいずれか1本について、第一関節を屈伸することができなくなったものを指します。

屈伸することができないというのは、関節自体が硬直している場合、または、屈伸筋の損傷等の器質的な原因があることが明らかにわかっていて、それによって自動で屈伸ができないか、それに近い状態である場合を指します。

(8)1足の第3の足指以下の1又は2の足指の用を廃したもの

14級8号は足指の機能障害に関するものです。

「第3の足指以下」とは、親指から数えて3番目にあたる中指と、薬指、小指のことを指します。

14級8号は、交通事故による受傷により、中指、薬指、小指のうち1または2本の足指が用を廃する場合に該当します。

#1:「用を廃する」とは

次のいずれかの状態のことを指します。

用を廃するものに「該当する状態

・中節骨(第一関節と第二関節の間の骨)もしくは基節骨(第二関節と第三関節の間の骨)を切断したもの

・遠位指節間関節(第一関節/DIP関節)または近位指節間関節(第二関節/PIP関節)を離断したもの

・中足指節関節(第三関節/MTP関節)または近位指節間関節(第二関節/PIP関節)の可動域が健側(怪我をしていない側)の可動域確度の1/2以下に制限されるもの

(9)局部に神経症状を残すもの

14級9号は、神経系統の障害に関するものです。

「神経症状」とは、神経に異常をきたしたことによって生じる症状全般をさします。

多くは痛みやシビレなどとして現れることが多いです。

14級9号の「局部に神経症状を残すもの」とは、自覚症状が他覚的所見(検査結果や画像所見によって外部から認識できること)までは得られないものの、交通事故の状況や診療経過からわかる症状に連続性・一貫性があり、事故による症状として説明可能であり、医学的に推定できる場合をいいます。

交通事故による受傷の中でもっとも多いとされているムチウチで痛みやシビレ等の症状が残ってしまった場合、この14級9号が認定される可能性があります。

3.後遺障害認定を受けるまでの流れ

後遺障害に該当する可能性がある症状が残った場合は、自賠責保険に後遺障害等級認定申請を行い、それが後遺障害に該当しているという認定を受ける必要があります。

(1)自賠責保険への申請

後遺障害等級認定申請の方法は、加害者側の任意保険会社を通じて自賠責保険に申請する「事前認定」という手続きと、被害者本人が自賠責保険へ直接申請手続きを行う「被害者請求」という方法の2つがあります。

#1:事前認定

事前認定は被害者の負担が少ない手続きです。

被害者は医師が作成した後遺障害診断書のみを加害者側の任意保険会社へ提出すればよく、その他の申請に必要な書類は全て加害者側の任意保険会社が準備をします。

しかし、加害者側に任意保険会社は、被害者に後遺障害等級が認定された場合はその認定結果に応じた示談金を支払わなければならない立場であるため、被害者にとって積極的なサポートを行ってくれるわけではありません。

加えて、被害者は、事前認定を使う場合、自賠責保険に何を提出するかを加害者側の任意保険会社に委ねることになります。

もし、加害者側の保険会社が等級認定に影響を及ぼすような医師の意見書を添付していたとしても被害者はそのことを関知することができまません。

そのため、これから後遺障害等級認定申請を行うことを考えている方は、被害者請求を使うことをおすすめします。

#2:被害者請求

被害者請求は、被害者本人が自賠責保険へ直接申請手続きを行う手続きです。

自賠責保険に提出する書類は後遺障害診断書だけではないため被害者にとって負担の大きい手続きではありますが、この負担は後遺障害等級認定申請に精通している弁護士に依頼することによって解消することができます。

(2)損害保険料率機構による調査

自賠責保険に提出された申請書類は、自賠責保険で提出書類の不備がないかを確認された後、損保料率機構(損害保険料率算出機構)という機関へ回付されます。

損保料率機構は、自賠責保険による適正な保険料の支払いを担保することを目的とした機関で、自賠責保険の支払いの算定に関する調査全般を公正かつ中立な立場で行います。

損保料率機構は、後遺障害に関する調査を行い、その調査結果を自賠責保険へ通知します。

(3)結果の通知

損保料率機構での調査結果は自賠責保険を通じて被害者へ通知されます。

なお、事前認定を用いた場合、自賠責保険は申請者である加害者側任意保険会社へ結果を通知するため、被害者は加害者側任意保険会社から結果の通知を受けることになります。

自賠責保険へ申請を行ってから結果の通知を受けるまでにかかる期間は、申請内容によって異なりますが、ムチウチ等の場合は1~3か月程度であることが多いように見受けられます。

4.後遺障害等級14級の認定を受けるためのポイント

後遺障害14級1号から8号までは、上述したとおり、他覚的所見(検査結果や画像所見によって外部から認識できること)が認定のために必要な要件となっています。

一方で、9号の神経症状においては、他覚的所見が必ずしも伴うわけではありません。

そのため、後遺障害等級に該当するかの判断においては、本人の自覚症状の存在を間接的な証拠によって説明付けることが必要となります。

ムチウチのつらい神経症状があるにも関わらず、それを裏付けるための証拠を何も収集できないがために後遺障害等級の認定を受けることができなかったというケースは存在します。

ここでは、14級の中でもムチウチで後遺障害等級14級9号の認定を受けるために必要なポイントを解説します。

(1)治療中の場合は、通院を途中で止めない

まずは症状固定に向けて治療を継続します。

このときに大切なのは、通院を途中でやめたりしないこと、医師に自覚症状を正確に伝えること、医師の指示にしたがった服薬を継続することです。

なぜならば、神経症状で後遺障害等級認定を得るためには、交通事故発生から症状固定までの症状の「連続性・一貫性」が判断のポイントとなるからです。

被害者が医師に何を訴えていたか、どの程度の頻度で病院に通っていたか、どのような薬を処方されていたか等の事実が反映された資料、具体的には、診断書や診療報酬明細書等が被害者に自覚症状が連続して存在していたことを客観的に把握するための有力な証拠となります。

また、後遺障害等級の調査にあたっては医師の見解が重要視されます。

そのため、整形外科への通院が重要となります。

ムチウチの場合、「電気治療やマッサージの方が楽になる」「夜遅くまでやっているから働きながらでも通いやすい」等の理由から、整形外科よりも整骨院や接骨院をメインで通っている被害者の方は多いです。もちろん、整骨院や接骨院に通うこと自体は問題ないことです。

しかし、後遺障害等級認定のためには、整形外科へ通院することを疎かにしないように気をつけていただく必要があります。

(2)症状固定時期の判断に気を付ける

ムチウチで通院している方の症状固定の時期は、だいたい交通事故発生から6か月程度であることが多いです。

ムチウチで通院をしていると、治療開始から3か月程度のタイミングで加害者側の保険会社から治療費の内払いの打ち切るという連絡をもらうことがあります。

その時点で治療が必要ない程度の症状となっているのであれば、治療を終了して示談交渉へ進むことになりますが、症状が残っているのであれば、治療を終了してしまうことは望ましくありません。

症状固定時期の判断は、医師の見解をもとに、適切な時期を見極めなければなりません。

(3)後遺障害診断書の作成する

後遺障害診断書は、後遺障害等級認定にあたってもっとも重要な書類です。

後遺障害診断書は医師に作成してもらうことになります。

症状固定日に医師の診察を受け、その時点での症状等について後遺障害診断書に記してもらうことになります。

ムチウチの場合、①自覚症状、②画像所見、③神経学的検査の3点の整合性が後遺障害等級の認定にあたってのポイントとなっているとされています。

#1:自覚症状

自覚症状を医師に伝える際は、正確に伝えるようにしましょう。

ムチウチで被害者の方に生じる症状は様々なものがあります。

一般的な自覚症状は、痛み(疼痛)、シビレであることが多いですが、他にも頭痛、吐き気、めまいや耳鳴り等の症状を併発される方もいらっしゃいます。

医師に全部伝えないといけないと過敏になる必要はないのですが、事故後に悩むようになった症状についてはなるべく医師に伝えるようにすることをお勧めします。

そして、多くの方が悩む痛み(疼痛)については、伝え方にもひと工夫が必要です。

なぜならば、ムチウチにおいては後遺障害に認定され得るのは「常時疼痛」といって断続的に続いている痛みであるとされているからです。

私たちが交通事故被害者の方に自覚症状をおたずねする際、「天気が悪いとき」「疲れたとき」「重いものをもったとき」など、痛み感じる時は限定的だとお答えくださる方は珍しくありません。

もちろん、それが事実であれば問題はありません。

しかし、常に痛みを抱えている方は痛い状態を当たり前のことと捉えてしまっているため、特に痛いときだけを伝えているというケースは少なくありません。

医師に「最近どうですか。」とたずねられて、「そうですね。やっぱり天気が悪くなると(特に)痛いです。」とお答えしているような方は注意していただく必要があります。

#2:画像所見

後遺障害等級認定申請にあたっては、医師による画像所見を後遺障害診断書に記載することになります。

また、申請時は医師がみたその画像も提出することになります。

ムチウチによる神経症状は、受傷部位の神経や筋肉に異常が生じることによって発現します。

したがって、レントゲン画像だけではなく、骨以外の神経根等の組織も確認できるMRI画像を撮影しておくことをお勧めします。

しかし、MRI画像があったとしても、神経症状が生じている全てのケースで画像所見が得られるというわけではありません。

むしろ、かなり重篤な神経症状を抱えている方でもない限り明確な画像所見は得られないことのほうが多いように見受けられます。

画像診断後に医師から「この骨と骨の間が狭くなっているので、おそらく、ここの神経が圧迫されてシビレが生じているのでしょう。」というような曖昧な説明を受けたことがある方もいると思います。

もっとも、14級9号は自覚症状が事故による症状として説明可能であり、医学的に推定できる場合に認定されるため、画像所見が得られなかったからといってただちに後遺障害等級を得られないと諦める必要はありません。

#3:神経学的検査

後遺障害等級認定を受けるためには、症状を裏付ける他覚所見の存在が重要となりますが、ムチウチの場合は、画像等によっては原因や症状の程度を判断できないことが少なくありません。

そこで重要となるのが神経学的検査です。

神経学的検査も被害者本人の主観に依存するテストではあるため、陽性所見が得られれば必ずしも後遺障害に該当するというものではありませんが、認定を判断する有力な材料として扱われています。

頸椎捻挫の場合

  • ジャクソンテスト

頚椎捻挫や頸部挫傷といった、いわゆる「首のむち打ち」の場合に行われるテストです。

頚部の神経根が圧迫されているかどうかを確認するためのもので、座った状態で頭を後ろに逸らし、これを検査実施者に上から下に押してもらいます。

この際に肩や腕、指先などに痛みやシビレが誘発されるかどうかを確認します。

  • スパーリングテスト

ジャクソンテストと同様に、「首のむち打ち」の場合に行われるテストです。

頭を後ろに逸らしたうえ、左右に傾け、検査実施者が上から下に押し下げます。

この際に方や腕、指先などに痛みやしびれが誘発されるかどうかを確認します。

腰椎捻挫の場合

  • SLRテスト(ラセーグテスト)

腰椎捻挫後の痛み、特に坐骨神経痛を調べるために行われるテストです。

平らな場所に仰向けになり、ひざを伸ばしたまま片足を上にあげていきます。

30度以上痛みなくあがった場合には、陰性となりますが、30度までの間で痛みや痺れが生じたり、30度まであげることができなかった場合には、陽性となります。

このテストは腰椎のL4・L5部位の神経及び仙骨のS1・S2・S3の部位の神経に負荷をかけることによって、当該部位の神経圧迫があるかどうかを確かめることが目的です。

腰椎捻挫に伴って、これらの部位の椎間板ヘルニアが疑われるようであれば、このテストの実施を検討しましょう。

  • FNSテスト

腰椎捻挫後の痛み、特に坐骨神経痛を調べるために行われるテストです。

ラセーグテストとは逆に、平らな場所にうつぶせになり、臀部を手で固定された後、膝を90度曲げます。

そして、そのまま検査実施者に、膝を持ってふとももを持ち上げながら股関節を伸ばしてもらいます。

このとき、ふとももに痛みや痺れが生じる場合には陽性となります。

このテストは、L2・L3・L4の間で神経圧迫があるかどうかを確かめることが目的です。

腰椎捻挫に伴って、これらの部位の椎間板ヘルニアが疑われるようであれば、このテストの実施を検討しましょう。

5.認定された場合に請求できる内容と計算方法

交通事故被害にあった方が相手に請求できる内容は、治療費、入通院慰謝料、休業損害、交通費、付添費、入院雑費等の症状固定までに発生した損害に対するものと、後遺障害慰謝料、逸失利益等の症状固定日以降に発生するであろう損害に対するものの2つがあります。

後遺障害慰謝料と逸失利益については、後遺障害等級認定を受けた場合に請求することができます。

このうち、入通院慰謝料、後遺障害慰謝料、逸失利益については、保険会社と弁護士との基準が大きくことなるため、弁護士に依頼することによって増額をはかることができます。

(1)入通院慰謝料

入通院慰謝料の計算方法は、自賠責保険が用いる自賠責基準と、裁判所が用いる裁判基準との2つがあります。

この他、任意保険会社が用いる任意保険会社の基準もありはしますが、公表されていないのと、多くは自賠責保険基準とほとんど同等であるため、ここでは言及しません。

#1:自賠責基準

自賠責保険の慰謝料の計算方法は、以下の計算式によって求めます。

もっとも、自賠責保険には治療費や休業損害等の他の支払いを含めて総額120万円という上限があります。

したがって、治療費等が120万円に近づくほど、慰謝料として支払われる額は少なくなります。

1日あたり4300円(※1×通院日数×2(※2

※1 2020年3月31日以前発生事故の場合は4200円
※2 通院日数×2が総期間に対応する日数を超える場合は総期間にて計算

例)実通院日数10日、総期間30日の場合:10×2=20 →20日で計算

実通院日数18日、総期間30日の場合:18×2=36 →30日で計算

#2:裁判基準(弁護士基準)

裁判基準は、交通事故の裁判例の蓄積の中で生まれた基準です。

弁護士が用いるため、弁護士基準と呼ばれることもあります。

裁判基準の入通院慰謝料は、以下の別表Ⅰ、別表Ⅱという表を使って計算します。

原則は別表Ⅰを使いますが、ムチウチで他覚所見がない場合等は別表Ⅱを用います。

入院の場合は横軸、通院の場合は縦軸で、それぞれ対応する枠内に書かれた数字が金額(万円単位)に基づいて計算をします。

たとえば、別表Ⅰのケースで1か月通院した場合の慰謝料は、28万円です。

もっとも、計算方法は、入院と通院の両方がある場合や実日数が少ない場合等、各種の決まりごとがあるうえに、事故態様によっては過失割合も影響するためやや複雑です。

ご自身の裁判基準の入通院慰謝料を把握したいという方は弁護士にご相談ください。

入院 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 13月 14月 15月
通院 B \ A 53 101 145 184 217 244 266 284 297 306 314 321 328 334 340
1月 28 77 122 162 199 228 252 274 291 303 311 318 325 332 336 342
2月 52 98 139 177 210 236 260 281 297 308 315 322 329 334 338 334
3月 73 115 154 188 218 244 267 287 302 312 319 326 331 336 340 346
4月 90 130 165 196 226 251 273 292 306 316 323 328 333 338 342 348
5月 105 141 173 204 233 257 278 296 310 320 325 330 335 340 344 350
6月 116 149 181 211 239 262 282 300 314 322 327 332 337 342 346
7月 124 157 188 217 244 266 286 304 316 324 329 334 339 344
8月 132 164 194 222 248 270 290 306 318 326 331 336 341
9月 139 170 199 226 252 274 292 308 320 328 333 338
10月 145 175 203 230 256 276 294 310 322 330 335
11月 150 179 207 234 258 278 296 312 324 332
12月 154 183 211 236 260 280 298 314 326
13月 158 187 213 238 262 282 300 316
14月 162 189 215 240 264 284 302
15月 164 191 217 242 266 286
(別表Ⅰ)
入院 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 13月 14月 15月
通院 B’ \ A’ 35 66 92 116 135 152 165 176 186 195 204 211 218 223 228
1月 19 52 83 106 128 145 160 171 182 190 199 206 212 219 224 229
2月 36 69 97 118 138 153 166 177 186 194 201 207 213 220 225 230
3月 53 83 109 128 146 159 172 181 190 196 202 208 214 221 226 231
4月 67 95 119 136 152 165 176 185 192 197 203 209 215 222 227 232
5月 79 105 127 142 158 169 180 187 193 198 204 210 216 223 228 233
6月 89 113 133 148 162 173 182 188 194 199 205 211 217 224 229
7月 97 119 139 152 166 175 183 189 195 200 206 212 218 225
8月 103 125 143 156 168 176 184 190 196 201 207 213 219
9月 109 129 147 158 169 177 185 191 197 202 208 214
10月 113 133 149 159 170 178 186 192 198 203 209
11月 117 135 150 160 171 179 187 193 199 204
12月 119 136 151 161 172 180 188 194 200
13月 120 137 152 162 173 181 189 195
14月 121 138 153 163 174 182 190
15月 122 139 154 164 175 183
(別表Ⅱ)

(2)後遺障害慰謝料

後遺障害慰謝料とは、後遺障害を負ってしまったことに対する慰謝料です。

後遺障害慰謝料にも、自賠責基準と裁判基準があります。

後遺障害等級14級の認定を受けた場合、自賠責保険から支払われる後遺障害慰謝料は32万円です。

他方で、裁判所基準の場合の後遺障害慰謝料は110万円です。

(3)逸失利益

逸失利益とは、後遺障害を負ったことによって将来に亘って発生する損害に対する賠償です。

後遺障害等級14級の認定を受けた場合、自賠責保険からは、43万円が支払われます。

裁判基準の場合は、賠償額の計算は以下の計算式によって算定されることとなるため、被害者の収入や年齢によって請求できる金額が変わります。

賠償額の計算式

基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数

#1:労働能力喪失率

労働能力喪失率とは、後遺障害が労働能力へ及ぼす影響を割合で表したものです。

自賠法施行令によって、後遺障害等級ごとに定められた割合があります。

後遺障害等級14級の場合、労働能力喪失率は5%です。

#2:労働能力喪失期間

労働能力喪失期間を何年とするかは認定された障害の内容によって異なります。

原則は67歳までの年数を用いることとなっていますが、ムチウチで14級9号の認定を受けた場合は5年で計算されます。

#3:ライプニッツ係数

交通事故で加害者側から賠償を受ける場合、被害者は生涯かけて稼いだはずの金額を一括で受け取ることになります。

ライプニッツ係数とは、一括で受け取ったことによって生じる利益を控除し、実態に即した賠償額に近づけるための指数です。

「中間利息控除」ともいいます。

なお、逸失利益とは労働能力の喪失・低下によって生じる損害に対する賠償であるため、歯牙障害や醜状障害で後遺障害等級の認定を受けた場合は、障害が就労に影響しないのではないかという理由から、加害者側が逸失利益について争ってくることが少なくありません。

裁判所は、このようなケースにおいて、逸失利益として認めないかわりに後遺障害慰謝料に調整金を加えるという形で解決を図っていることが多いです。

このように、裁判基準の逸失利益の計算は考慮すべき点が多く複雑です。

ご自身の逸失利益がどの程度かを把握したいという方は弁護士にご相談ください。

(4)加害者側の任意保険会社から示談金の提示を受けた方

加害者側の任意保険会社は、治療が終了し後遺障害等級が確定すると、その任意保険会社の基準にしたがって計算した金額をもとに示談を提案してきます。

この時、任意保険会社が提案してくる金額のポイントは、次のとおりです。

#1:入通院慰謝料

1日4300円という数字が書いてある場合は、自賠責基準です。裁判基準に計算しなおすことによって増額をはかることができる可能性が高いです。

#2:後遺障害慰謝料、逸失利益

多くの保険会社は、後遺障害慰謝料と逸失利益を「後遺障害に関する慰謝料」というような名称を用いて合算で記載しています。

金額は自賠責基準の32万円と43万円を足した合計75万円が書いてあることが多いです。

裁判基準の場合、後遺障害慰謝料だけで110万円であることから、逸失利益も含めると大幅な増額を見込めることが多いです。

6.14級に認定された裁判例

(1)【頚椎捻挫】後遺障害等級14級で、163万円の増額した事例

<事故態様>車vs車

被害者は、車で走行中に加害車両に後ろから追突されました。

<認定された後遺障害等級>

  • 14級9号 局部に神経症状を残すもの

<解決に至るまで>

被害者は、病院で頚椎捻挫と腰椎捻挫の治療を受けていましたが、約7ヶ月経過したところで、相手方保険会社から治療費の前払い対応の打ち切りにあいました。

痛み等の神経症状がまだ残っていたため、後遺障害認定申請を行い、14級9号の認定を受けました。

その後、相手方保険会社から示談金の提示を受けましたが、示談金の金額に納得がいかず、当事務所に相談にみえました。

当事務所が依頼を受けて交渉した結果、相手方保険会社が提示していた示談額から、163万円増額しました。

(2)【頚椎捻挫 等】異議申立で併合14級を獲得。420万円の支払いで解決した事例

<事故態様>バイクvs車

被害者が駐車場内で停車していたところ、旋回してきた相手方車両に衝突されました。

<認定された後遺障害等級>

併合14級

  • 14級9号 局部に神経症状を残すもの(頚部)
  • 14級9号 局部に神経症状を残すもの(膝)

<解決に至るまで>

被害者は、この事故により頸椎捻挫、膝関節挫傷等の怪我を負いました。

これらの怪我の治療のため、半年以上の通院を続けましたが、頭痛、首から頭にかけてのしびれ、足の痛みなどの症状が残ったまま、症状固定に至りました。

被害者は、相手方保険会社を通じて自賠責保険に後遺障害認定申請を行いましたが、結果は、残っている症状は後遺障害等級には該当しないという内容でした。

被害者はこの結果に納得がいかず、当事務所にご相談にみえました。

当事務所でご依頼を受けた後、追加の資料収集を行い、自賠責保険に異議申立を行いました。

結果は、首と膝の神経症状が後遺障害に該当するというもので、後遺障害等級として併合14級が認定されました。

認定された結果をもとに粘り強く交渉を続けた結果、総額420万円の支払いを受けて解決に至りました。

まとめ

後遺障害等級14級がどのようなものかについてご理解いただけたでしょうか。

特に、神経症状に関する後遺障害等級の認定を受けるためには治療段階からの準備が必要なこともあり、必要性を知らないことで適切な後遺障害等級の認定を受けられない、ひいては適切な賠償を受けることができないという方が後をたちません。

怪我の痛みを我慢して働き、病院にはほとんど通わず、数万円の示談金の提示を受けたという方のお話をきくと、本当に残念でなりません。

日々交通事故事件を担当している弁護士としては、交通事故被害者の方には少しでも早くご相談いただき、適切な賠償を受けることができるように備えていただきたいと心から願っております。

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