後遺障害13級とは?等級認定のポイントと示談金の金額について解説

執筆者 花吉 直幸 弁護士

所属 第二東京弁護士会

社会に支持される法律事務所であることを目指し、各弁護士一人ひとりが、そしてチームワークで良質な法的支援の提供に努めています。

この記事の内容を動画で解説しております。あわせてご視聴いただければと思います。

「後遺障害13級にはどんな症状があるのかを知りたい」
「後遺障害13級の認定の賠償金の相場を知りたい」

本記事は、このような方へ向け、後遺障害13級の認定要件は何なのか、認定を受ける際注意すべきポイント、そして後遺障害13級の認定を受けた場合に相手方へ請求できる項目や金額の相場についてご紹介します。

後遺障害等級13級は、14段階に分類された後遺障害等級の13番目にあたる等級です。

歯牙障害、手指や足指の機能障害、脚の短縮障害などの後遺症がある方は、後遺障害等級認定申請を行うことで、後遺障害13級の認定を受けることができる可能性があります。

後遺障害等級認定申請は、交通事故被害者の状況を適切に賠償に反映するための手続です。

交通事故被害者は、後遺障害等級を獲得することによって相手方に対して後遺障害慰謝料や逸失利益などを請求できるようになります。

交通事故被害者の方、中でも後遺症が残っている方には常に将来への不安が付きまといます。適切な賠償を受けることがまず第一歩となりますので是非読んでみていただければと思います。

なお、もし「14級を受けたけれども上の等級を狙いたい!」という方は、後遺障害14級と関連が強い上位等級は12級となりますので、下記12級の記事をご一読ください。

1.後遺障害13級の認定基準は11種類

「後遺障害」とは、交通事故による受傷で治療の末に残ってしまった症状のうち、将来においても回復が難しく、労働能力の喪失・低下を伴うもので、自賠法施行令に定められている障害のことをいいます。

後遺障害等級13級の認定要件は以下のとおりです。

13級1号 1眼の視力が0.6以下になったもの
13級2号 正面以外を見た場合に複視の症状を残すもの
13級3号 1眼に半盲症、視野狭窄又は視野変状を残すもの
13級4号 両眼のまぶたの一部に欠損を残し又はまつげはげを残すもの
13級5号 5歯以上に対し歯科補綴を加えたもの
13級6号 1手のこ指の用を廃したもの
13級7号 1手のおや指の指骨の一部を失ったもの
13級8号 1下肢を1センチメートル以上短縮したもの
13級9号 1足の第3の足指以下の1又は2の足指を失ったもの
13級10号 1足の第2の足指の用を廃したもの、第2の足指を含み2の足指の用を廃したもの又は第3の足指以下の3の足指の用を廃したもの
13級11号 胸腹部の臓器の機能に障害を残すもの

交通事故被害者は後遺障害等級の認定を受けることによって、認定された等級に応じて、後遺障害慰謝料や逸失利益といった項目を相手方へ請求できるようになります。

(1)1号:1眼の視力が0.6以下になったもの

13級1号は、片眼の視力障害です。

交通事故による怪我で片方の目の矯正視力が0.6以下になった場合、1号に該当することになります。

矯正視力とは、メガネやコンタクトレンズを使用した視力のことです。

(2)2号:正面以外を見た場合に複視の症状を残すもの

13級2号は眼の運動障害です。

複視とは、ひとつのものが二重に見えることをいいます。

複視の診断はヘススクリーンテストで行います。

ヘススクリーンテストとは、指標を赤緑ガラスで見たときの片眼の赤像、他眼の緑像から両眼の位置のずれを評価する検査方法です。

(3)3号:1眼に半盲症、視野狭窄又は視野変状を残すもの

13級3号は、片眼の視野障害です。

片方の目に半盲症、視野狭窄や変状を残した場合、3号に該当します。

  • 半盲症とは、視野の特定の領域が見えなくなることです。右半分、左半分、上側、下側などの様々な欠け方があります。
  • 視野狭窄とは、視野が狭くなることです。視野全体が狭くなる場合や、視野の一部が不規則な計上に狭くなる場合があります。
  • 視野変状とは、視野が部分的に欠けることです。視野の一部が点や班の形で欠ける「暗点」も視野変状に含まれます。

(4)4号:両眼のまぶたの一部に欠損を残し又はまつげはげを残すもの

13級4号は、まぶたやまつげの欠損障害です。

「まぶたの一部に欠損を残し」とは、目をとじたときに角膜を完全に覆うことはできるものの白目の部分(球結)が露出している程度のものを指します。

「まつげはげを残すもの」とは、本来まつげが生えている部分の2分の1以上にわたってまつげが生えない状態になっているものをいいます。

(5)5号:5歯以上に対し歯科補綴を加えたもの

13級5号は、歯牙障害です。

5歯以上に対して歯科補綴(しかほてつ)を加えたものが5号に該当します。

歯科補綴とは、歯が失われたり一部が欠けたりしたときに、入れ歯やかぶせ物で補うことをいいます。

自賠責保険の後遺障害を判断するには、歯科補綴をしている歯が何本かで判断します。

しかし、歯科補綴がされているすべての歯が判断の対象となるわけではありません。

判断の対象となるのは、歯がすべて失われている状態、または歯の見えている部分(歯冠部)の4分の3以上が欠損している歯です。

さらに、実際に交通事故によって喪失又は欠損した歯に加え、歯科技工上必要とされ削った歯の欠損が歯冠部の4分の3以上となった場合はその歯も判断の対象となります。

(6)6号:1手のこ指の用を廃したもの

13級6号は、小指の機能障害です。

用を廃したものとは、次のことを指します。

  • 指先の骨(末節骨)の2分の1以上を失ったもの
  • 指の根本(中手指節関節)または第二関節(近位指節関節)の可動域が事故による影響のない側(健側)と比べて2分の1に制限されたもの
  • 指先の腹と側面の深部感覚と表在感覚が完全に脱失したもの

(7)7号:1手のおや指の指骨の一部を失ったもの

13級7号は、親指の欠損障害です。

指骨の一部を失ったものとは、指骨の一部を失っていることがレントゲン画像等により確認できる場合をいいます。

(8)8号:1下肢を1センチメートル以上短縮したもの

13級8号は、脚の短縮障害です。

短縮障害は、長さを測定し、事故による影響がない側(健側)との比較で診断します。

長さを測るときは、上前腸骨棘(じょうぜんちょうこつきょく)という腰骨の一番高いところの骨から、足の内側のくるぶしの骨の下端(下腿内果下端)までの長さを測ります。

(9)9号:1足の第3の足指以下の1又は2の足指を失ったもの

13級9号は、足指の欠損障害です。

1足の第3の指とは中指のことです。

中指、薬指、小指の内1本または2本を失った場合が9号に該当します。

失ったものとは、中足指節関節という足指の根本からの欠損をいいます。

(10)10号:1足の第2の足指の用を廃したもの、第2の足指を含み2の足指の用を廃したもの又は第3の足指以下の3の足指の用を廃したもの

13級10号は、足指の機能障害です。

1足の第2の指とは人差し指、第3の指は中指のことです。

10号に該当するのは、次の#1:の指に対して#2:の状態があるものをいいます。

#1:対象となる指

  • 人差し指
  • 人差し指に加え、中指・薬指・小指のうちいずれか1本
  • 中指・薬指・小指の3本

#2:用を廃するとは

  • 指先の骨(末節骨)または指の根本の骨(基節骨)を切断したもの
  • 指の第一関節(遠位指節間関節)または第二関節(近位指節間関節)で離断したもの
  • 指の根本(中足指節関節)または第二関節(近位指節間関節)の可動域が事故による影響のない側(健側)と比べて2分の1に制限されたもの

(11)11号:胸腹部の臓器の機能に障害を残すもの

13級11号は胸腹部の臓器の機能障害です。

次のようなものが該当します。

#1:消化器系

  • 胃の噴門部(入口の部分)又は幽門部(出口の部分)を含む胃の一部を失ったもの
  • 胆のうを失ったもの
  • 脾臓を失ったもの

#2:泌尿器系

  • 腎臓の1つを失いGFRが91ml/分の場合
  • 腎臓を失ってはいないものの、GFRが71~91ml/分の場合

※GFRは、糸球体濾過値(しきゅうたいろかち)といって、腎臓の機能を数値化したものです。

腹部臓器の障害は症状固定後に症状が悪化する可能性が高く、また治癒した場合も再発しやすいという点です。

この点を考慮して、検査結果は残しておく必要があります。

2.後遺障害13級で請求できる賠償金の項目と金額

ここまでは後遺障害13級にはどのような症状が該当するのかについてご説明しました。

ここでは、後遺障害等級の認定を受けることで賠償面にどのような変化があるのかについてご説明します。

後遺障害等級が認定されると、それぞれ認定等級に応じて「後遺障害慰謝料」と「逸失利益」というものを請求することができるようになります。

13級の認定がある場合とない場合とでは、賠償額が300万円程度異なる可能性があります。

(1)後遺障害13級の後遺障害慰謝料

後遺障害慰謝料は、後遺障害を負ったことによって生じた精神的苦痛に対する賠償です。

後遺障害を負ったことによる精神的苦痛は他者からはわからないものです。

そこで、賠償のうえでは各等級に応じた基準が設けられています。

気をつけなければならないのは、この基準がひとつだけではない点です。

自賠責保険基準、任意保険基準、弁護士基準の3つの基準があります。

#1:自賠責保険基準の後遺障害慰謝料は57万円

自賠責保険の後遺障害13級の後遺障害慰謝料の金額は57万円です。

#2:任意保険基準は公表されていない

任意保険の後遺障害慰謝料の基準は公表されていません。

しかし、自賠責保険基準と同額もしくはこれに近い金額であることがほとんどです。

#3:弁護士基準の後遺障害慰謝料は180万円

弁護士基準は別名裁判基準といい、裁判所が裁判の積み重ねの中で参考にしている目安です。

弁護士が交渉のときに用いることから弁護士基準といわれることが多いです。

弁護士基準の後遺障害13級の後遺障害慰謝料は、180万円です。

(2)後遺障害13級の逸失利益

後遺障害等級を獲得することによって逸失利益を請求できるようになります。

交通事故における逸失利益は、後遺障害を負ったことによって将来にわたって発生する減収を指します。

逸失利益の計算方法は、

基礎収入 × 労働能力喪失率 × 労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数

です。

#1:労働能力喪失率

労働能力喪失率とは、後遺障害の労働能力への影響を割合で表したものです。

労働能力喪失率は、自賠法施行令によって後遺障害等級別に定められています。

後遺障害13級の労働能力喪失率は原則9%です。

一律この労働能力喪失率となるというわけではありません。

実際は、被害者がどのような仕事をしているのかや、後遺障害の症状が就労にどのような影響を及ぼすかに応じて判断されます。

たとえば歯牙障害の逸失利益はデスクワークの方の場合は争点となることが少なくありません。

こういったケースで裁判所は、逸失利益を正面から認めるのではなく、後遺障害慰謝料に対して調整金という形で上乗せをすることによって解決をはかる傾向にあります。

#2:労働能力喪失期間

労働能力喪失期間は、原則として、

  • 被害者の症状固定日時点の年齢から67歳になるまでの年数
  • 簡易生命表の平均余命の2分の1

上記のいずれか大きい数字を用いて計算します。

被害者の職種や地位、健康状態などの個別具体的な事情に応じて上記と異なる判断をすることがあります。

(3)相手方から示談金の提示があった場合に注意すべきポイント

後遺障害13級の認定を受けた方が、相手方保険会社から示談金の提示を受けた場合にまず確認していただきたいところは、後遺障害慰謝料と逸失利益です。

自賠責保険では、後遺障害慰謝料と逸失利益の合計の上限が設けられています。

そのため、任意保険会社は被害者に対して示談金の提示をする場合は、この自賠責保険から補填される金額をそのまま記載していることが少なくありません。

相手方保険会社が作成する書面の中では、後遺障害慰謝料と逸失利益が合算で記載されていることが多いです。

13級で後遺障害に該当する項目に139万円と記載されており、その他逸失利益に対する記載がない場合、それは自賠責保険基準の金額です。

弁護士に示談交渉を依頼することによって、示談金が増額する可能性が高いです。

(4)後遺障害13級の解決事例

ここでは、当事務所で後遺障害13級の認定を受けた方の事例をご紹介します。

#1 :下肢の短縮障害により670万円の賠償を受けて解決

被害者は、脛腓骨骨折などの怪我を負い、治療を継続しましたが、足の長さが左右で異なる状態となりました。

当事務所が依頼を受けて後遺障害認定申請を行った結果、13級8号の認定を受けました。

認定された等級を元に交渉を重ね、670万円の支払いで解決に至りました。

#2 :歯牙欠損により550万円の賠償を受けて解決

被害者は歯牙欠損により後遺障害13級5号の認定を受けました。相手方保険会社は、歯を失ったことは労働能力への影響はないとして、逸失利益について争ってきました。

当事務所の弁護士は、逸失利益ではなく後遺障害慰謝料に調整金を加算する形で550万円の支払いで解決に至りました。

3.後遺障害13級で弁護士に依頼するメリット

ここまで読んで、交通事故で適切な賠償を受けるためには、適切な後遺障害等級を獲得すること、そして弁護士基準で示談交渉をすることが大切だということがお分かりいただけたと思います。

(1)これから後遺障害等級認定申請をする方

後遺障害等級認定申請は弁護士に依頼することができます。

後遺障害等級認定申請を弁護士に依頼することのメリットは、被害者請求が利用しやすくなることと、後遺障害診断書作成時に弁護士のサポートを得られることの2点です。

#1:被害者請求を利用しやすくなる

被害者請求とは、2つある後遺障害等級認定申請の方法の内の1つです。

後遺障害等級認定申請は、加害者側から行うものを「事前認定」、被害者側から行うものを「被害者請求」といいます。

事前認定の場合、被害者が準備する必要があるのは後遺障害診断書という診断書のみです。

その他の必要な書類はすべて相手方保険会社が用意してくれます。

そのため、被害者からするととても使いやすい申請方法といえます。

しかし、事前認定は被害者側の負担が少ないという一方で、相手方保険会社は被害者の味方ではないため被害者側に寄り添った対応はのぞめないというデメリットがあります。

たとえば、後遺障害診断書に残存する症状についての言及が適切に盛り込まれていなかったとしてもアドバイスしてもらえることはありませんし、場合によっては後遺障害等級認定にマイナスに影響する意見書を添付して申請されていたとしても被害者はそのことを関知することができません。

このデメリットを解消できるのが被害者請求です。

しかし、被害者請求は、被害者側で必要な書類をすべて用意しなければならないため、被害者側の負担は大きいです。
この負担は弁護士に依頼することによって解消することができます。

#2:後遺障害診断書作成時のサポートを得られる

後遺障害等級認定申請においては、後遺障害診断書という書類が必要になります。

後遺障害診断書には、症状固定時にどのような症状が残存しており、将来的にどうなるのかという点について、医師の診断を記します。

後遺障害診断書は後遺障害等級認定申請において最も大切なものです。

ここで気をつけるべきは、医師は治療の専門家であって、後遺障害等級認定基準に精通しているわけではないという点です。

弁護士に依頼した場合、弁護士は後遺障害等級認定基準に精通しているため、医師にどのような検査をして欲しいのか、どのような所見がある場合は記載して欲しいのかのサポートができます。

(2)後遺障害等級の認定結果に納得がいかない方

後遺障害等級認定申請の認定結果に納得がいかない方は、一度弁護士にご相談いただくことをおすすめします。

弁護士は、認定結果を元に、どのような所見があれば認定されるのかについてアドバイスをすることができます。

ご自身で後遺障害等級認定申請をされた方や事前認定で後遺障害等級認定申請をされた方の場合、弁護士に依頼して異議申立という手続を行うことで認定される等級が変わることも少なくありません。

(3)示談金の提示があった方

ここまで、示談金にはある程度の相場があることと、弁護士基準が最も高額であることについてご紹介しました。

弁護士基準は、弁護士が「この金額で示談できなければ裁判をする」という姿勢で提案しているため、被害者個人の方が用いたとしても同じような流れにはならないことが少なくありません。

さらに、弁護士基準は、単に計算式を当てはめていくというわけではなく、被害者の方固有の事情に則して算定しなければなりません。

これは被害者個人の方にはハードルが高いことです。

せっかく適切な後遺障害等級を獲得してもそれを賠償に反映できなければ意味がありません。示談交渉を控えている方は、一度弁護士にご相談いただくことをおすすめします。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

本記事では、後遺障害等級13級には11種類の症状があてはまること、後遺障害等級を獲得した場合にどのような賠償額になるのか、そして弁護士に依頼すると何がいいのかについてご紹介しました。

交通事故の賠償では、知らなかったことで少ない金額で示談してしまうということが起きてしまいます。

後遺障害になると思っていなかった、そんなに増額するとは知らなかった、そのような理由で被害者の方が適切な賠償を受けることができないのはとても悔しいことです。

もしかしてと思われた方はお気軽にご相談ください。

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執筆者 花吉 直幸 弁護士

所属 第二東京弁護士会

社会に支持される法律事務所であることを目指し、各弁護士一人ひとりが、そしてチームワークで良質な法的支援の提供に努めています。