後遺障害等級認定後の損害賠償の支払いはいつ?申請方法について

執筆者 青山 侑源 弁護士

所属 東京弁護士会

法律トラブルというものは、いつも身近に潜んでいるものです。
はじめのうちは「大したことないだろう」と思っていたことが、そのうち大事になってしまうというケースも多くありますので、少しでも「法律トラブルに巻き込まれたかもしれない」と感じている場合には、お早めにご相談いただくことをおすすめいたします。
法律トラブルへの対処方法や解決方法は、個人の方、法人の方ごとに千差万別ですが、お早めにご相談いただくことで、選べる選択肢も多くなります。
どのような解決方法があなたにとって最適な選択となるのか、一緒に検討していきましょう。

「後遺障害等級が認定されたらいつ損害賠償金をもらえるのか」
「後遺障害等級認定からどのような流れで損害賠償の支払いを受けるのか」

交通事故で後遺症が残ってしまった方の中には、いつ損害賠償金をもらえるのか気になっている方もいるのではないでしょうか。

本記事では、後遺障害等級の認定から損害賠償の支払いを受けるまでの流れについてご紹介します。

1.後遺障害等級認定後の示談金の支払いまでの流れ

後遺障害等級認定後の示談金の支払いまでの流れ

後遺障害等級が認定されたからといって、すぐに損害賠償金が支払われるわけではありません。

示談金として損害賠償金が支払われるまでの流れは以下のとおりです。

損害賠償が支払われるまでの流れ

  1. 後遺障害等級認定の申請
  2. 相手方保険会社との示談交渉
  3. 示談書の受領・返送

どのような流れで示談金が支払われるのか確認しておきましょう。

(1)後遺障害等級認定の申請

まずは、後遺障害等級の認定を受けるために申請をしなければなりません。

医師から症状固定の診断を受けたら、必要な書類等を揃えて申請の準備をしましょう。

後遺障害等級認定の申請については後述します。

(2)相手方保険会社との示談交渉

後遺障害等級が認定されたら、相手方保険会社と示談交渉を行います。

相手方保険会社が示談金を提示してくるので、納得がいかない場合は示談金の交渉を行いましょう。

なお、保険会社は交渉のプロであり、損害を抑えるために加害者側に有利な示談金を提示することもよく見られるため、弁護士に交渉を依頼するのがおすすめです。

弁護士に依頼することで高い金額での示談交渉ができるだけでなく、交渉に関する様々な手間を大幅に削減できます。

(3)示談書の受領・返送

保険会社から送られてきた示談書の内容を確認して、納得ができる場合は必要事項を記入し返送します。

示談書を相手方保険会社が受領したら、示談成立です。

示談成立後、1週間程度で示談金が支払われることが多いです。

2.後遺障害等級認定の申請方法

後遺障害等級認定の申請方法

後遺障害等級認定の申請方法についてご紹介します。

主な申請方法は以下の2つです。

後遺障害等級認定の申請方法

被害者請求

事前認定

基本的には被害者請求を検討することになりますが、事前認定によって申請することができる点も押さえておきましょう。

(1)被害者請求

被害者請求とは、被害者が主導となって後遺障害等級認定を申請する手続です。

後遺障害等級の認定がおりたら、認定結果が出た直後と示談成立後の2回に分けて慰謝料等が支払われます。

具体的な流れは以下のとおりです。

  1. 後遺障害等級の申請・認定
  2. 自賠責保険からの支払い
  3. 必要な場合は異議申立て
  4. 認定等級に応じた任意保険会社との示談交渉
  5. 自賠責保険の支払い分を差し引いた残りの賠償金の支払い

ポイントは、示談交渉でまとまった示談金の全額が加害者側の任意保険会社から支払われるのではなく、先に受け取った自賠責保険会社からの賠償金が差し引かれる点です。

つまり、「自賠責保険会社からの支払い+成立した示談金」を受け取れるのではなく、自賠責保険会社と任意保険会社から支払われる金額のトータルが示談成立時の示談金となります。

被害者自ら申請しなければならないため、申請にかかる負担は大きいですが、適切な認定をしてもらいやすく、速やかに手続を進められるので、被害者請求を行うのがおすすめです。

(2)事前認定

事前認定は、加害者側の任意保険会社が主導で行う手続です。

以下のような流れで後遺障害慰謝料が支払われます。

  1. 後遺障害等級の申請・認定
  2. 必要な場合は異議申立て
  3. 認定された等級をもとに示談交渉
  4. 示談成立後、後遺障害慰謝料の支払い

被害者請求との大きな違いは、被害者は手続にほとんど関与しない点です。

また、損害賠償金は示談成立後にまとめて支払われます。

主なメリットとして申請者の負担が少ない点が挙げられますが、被害者に必ずしも有利な形で認定が進められるわけではない点に注意しましょう。

3.後遺障害等級認定の具体的な申請手続

後遺障害等級認定の具体的な申請手続

実際にどのように申請を行うのかご説明します。

基本的には被害者請求をおすすめしますが、事前認定も1つの選択肢です。

先ほど述べたメリット・デメリットを比較した上で、どちらの手続を行うか検討しましょう。

(1)被害者請求

被害者請求で損害賠償金を請求する場合は、相手方自賠責保険会社に必要な資料を全て被害者が揃えなければなりません。

主な必要資料は以下のとおりです。

  • 交通事故証明書
  • 後遺障害診断書
  • 医師による診断書
  • 診療報酬明細書

また、追加資料の提出を適宜求められることがあります。

特に診断書の書類に不備等があれば、適切な等級が認定されないことがあるので、後遺障害の状態がより詳しく伝わる内容になっているか提出前に確認しておくことが大切です。

必要な資料を提出したら結果通知が送られてくるまで待ちましょう。

(2)事前認定

事前認定をする場合は、相手方任意保険会社に後遺障害診断書を提出するだけです。

その後の必要な手続は相手方任意保険会社が行ってくれます。

被害者請求の場合は被害者自ら必要な資料を用意しなければなりませんが、事前認定の場合はその必要はありません。

後遺障害診断書を提出したら、結果通知が届くのを待ちましょう。

4.後遺障害慰謝料の金額

後遺障害慰謝料の金額

後遺障害慰謝料の金額は、後遺障害等級に応じて定められています。

今回は自賠責基準と弁護士基準の後遺障害慰謝料を等級ごとに表にまとめました。

等級 自賠責基準(万円) 弁護士基準(万円)
2020年4月1日
以降の事故
2020年3月31日
以前の事故
要介護第1級 1,650 1,600 2,800
要介護第2級 1,203 1,163 2,370
第1級 1,150 1,100 2,800
第2級 998 958 2,370
第3級 861 829 1,990
第4級 737 712 1,670
第5級 618 599 1,400
第6級 512 498 1,180
第7級 419 409 1,000
第8級 331 324 830
第9級 249 245 690
第10級 190 187 550
第11級 136 135 420
第12級 94 93 290
第13級 57 57 180
第14級 32 32 110

弁護士基準を採用すると、後遺障害慰謝料を多く請求できることが分かります。

しかし、弁護士基準で示談交渉をするには、弁護士に交渉を依頼しなければなりません。

少しでも多く後遺障害慰謝料を請求したい場合は、弁護士に相談してみましょう。

まとめ

後遺障害等級認定を受けると、必要な手続が終わり次第、後遺障害慰謝料が支払われます。

ただし、被害者請求と事前認定では支払われるタイミングが異なるので注意が必要です。

また、弁護士基準で示談交渉をするには弁護士に依頼しなければならない点も押さえておきましょう。

弁護士法人みずきでは、後遺障害慰謝料に関する相談を無料で受け付けておりますので、お気軽にご相談ください。

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執筆者 青山 侑源 弁護士

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