交通事故の相手が無保険の場合の慰謝料はどうなる?対処法を解説
「交通事故の相手から、無保険なので慰謝料を支払えないと言われたけど、どうしたらよいの?」
「無保険で交通事故を起こしてしまった加害者は逃げ得になるの?」
交通事故の加害者が「無保険」であるケースも残念ながらあります。
一般に「無保険」とは、任意保険に加入していないことを指し、自賠責保険に加入している場合、自賠責保険すら加入していない場合の両方を含みます。
加害者が無保険である場合、自身の損害について賠償を受けられないのではないかと不安になると思いますが、状況に応じて打つ手はあります。
本記事では、交通事故の相手が無保険だった場合の対処法や慰謝料の請求方法などについて解説します。
1.無保険のドライバーは2つのパターンがある
事故の相手方が無保険であった場合、想定されるパターンは2つあります。
1つは自賠責保険にのみ加入していて、任意保険には加入していないケースです。
もう1つは自賠責保険にすら加入していないケースです。
2つのパターンについて具体的にご説明します。
また、以下の記事でも詳しく取り上げていますので、合わせてご確認ください。
(1)自賠責保険のみ加入している場合
自賠責保険とは自動車損害賠償保障法に基づき、すべての自動車に加入が義務付けられている保険です。
そのため、ほとんどの車が自賠責保険に加入していると言えるでしょう。
一方、任意保険はあくまで加入が任意なので、加入していない人もなかにはいます。
また、更新手続を失念していて、事故時には失効していたということもあります。
任意保険には入っていないものの、自賠責保険にのみ加入している状態も「無保険」と呼ぶことがあります。
それは、自賠責保険のみでは十分な補償を受けられないことが多いからです。
自賠責保険は、人身損害を対象にしており、物件損害について補償を受けることができません。
また、人身損害についても、賠償限度額が定められており、一般的には最低限度の補償しかされないことになります。
(2)自賠責保険と任意保険の両方とも未加入の場合
自賠責保険への加入は、法律で義務付けられています。
たとえ事故を起こしていなくても、自賠責保険に加入せずに運転した場合は違法になり、1年以下の懲役または50万円以下の罰金に処されます(自賠法第86条の3)。
さらに、自賠責保険の未加入は道路交通法違反により違反点数6点が付き、免許停止処分になります(道路交通法第103条、第108条の33)。
しかし、それにもかかわらず自賠責保険にすら加入していないケースはゼロではありません。
正規店舗から購入すれば自賠責保険の加入は当然行われますが、個人間の売買等の場合おざなりになっていることもあります。
また、加入していたものの、車検を忘れており同時に自賠責保険も失効したりという場合もあります。
このような場合には、自賠責保険からの最低限度の補償も受けることができなくなるため、損害の回収方法をよりいっそう検討する必要があります。
2.交通事故の相手が無保険の時の対処法
交通事故の相手方が自賠責保険のみ加入している場合と自賠責保険と任意保険いずれにも加入していない場合とでは、被害者が請求できる方法が異なります。
ここでは、相手方が自賠責保険のみ加入している場合と自賠責保険と任意保険いずれにも加入していないケースに分けて、被害者がすべき対処法についてご説明します。
(1)自賠責保険のみ加入している場合
交通事故の相手が自賠責保険にのみ加入している場合は、まずは自賠責保険に請求しましょう。
無保険の方が積極的に賠償をしてくるということはあまり考えられないため、まずは自賠責保険から少しでも損害を回収することが、被害回復につながります。
先述のように、自賠責保険では限度額が低く設定されているため、実際の損害額全てを回収することができないことも珍しくありません。
そのように自賠責保険の限度額を超える部分は、加害者に直接請求することになります。
#1:自賠責保険会社に請求する
自賠責保険に対して請求するには、必要となる資料を所定の書式でそろえなければなりません。
多くの場合必要となるのは
・保険金請求書
・事故発生状況報告書
・交通事故証明書
・診断書、診療報酬明細書等
・休業損害証明書、源泉徴収票等
などの資料です。
これらの準備や手続に不安がある場合は、交通事故に詳しい弁護士に相談してみましょう。
#2:自賠責保険会社の限度額を超える部分は加害者に請求する
自賠責保険の限度額を超える損害は、加害者に直接請求することができます。
しかし、相手方が保険に加入していないため、当然相手本人と直接交渉しなければなりません。
また、任意保険に加入せずに自賠責保険のみ加入している状況では、資力が十分でない可能性があります。
そのため、交渉や実際の支払が難航する可能性があります。
場合によっては、弁護士に依頼して、交渉を有利に進めることも検討しましょう。
(2)自賠責保険と任意保険の両方とも未加入の場合
交通事故の相手方が任意保険だけでなく自賠責保険にも加入していないケースでは、自賠責保険への請求ができません。
しかしこのような場合であっても、状況に応じていろいろな方法で損害の回収ができる可能性があります。
ここでは、政府保障事業、被害者加入の保険会社、労災保険にそれぞれ請求する内容について見ていきましょう。
#1:政府保障事業に請求する
政府保障事業とは、加害者の代わりに被害者の損害相当額を立て替えて被害者に支払う制度です。
これは、加害者が自賠責保険に加入していない場合のほか、ひき逃げ等で加害者の自賠責保険が分からない場合にも利用できます。
被害者からのみ請求でき、支払限度額は自賠責保険と同等ですが、自賠責保険より支払は遅くなってしまいます。
#2:被害者自身の保険会社に請求する
被害者自身が加入している任意保険の保険内容によっては、補償を受けられることもあります。
たとえば、人身傷害保険や搭乗者傷害保険、無保険車傷害保険といったサービスに加入していれば被害者自身の任意保険会社に請求できる可能性があります。
一度、ご自身やご家族の保険内容について確認してみてください。
#3:労災保険に請求する
勤務中や通勤中の交通事故であれば、被害者が加入している労災保険を適用することもできます。
労災保険では、慰謝料は支給対象にはなりませんが、治療費や休業損害などは一定の範囲で支給されます。
3.無保険の加害者が示談金を払わない時の2つの対処法
交通事故の加害者が無保険であれば、被害者は加害者と直接交渉する必要があります。
示談交渉が進まなかったり、加害者が約束した示談金を支払わない場合はどう対応したらよいのでしょうか。
ここではその対処法として、訴訟提起を行ったり強制執行手続を取ったりする方法についてご説明します。
(1)訴訟提起をする
示談交渉がすすまない、約束通りに示談金を支払ってもらえない等の場合は裁判所に対して訴訟を提起する方法があります。
裁判においては、加害者がずっと対応しなければ、被害者に有利な判決が下されることになるため、加害者側も対応を余儀なくされることとなります。
しかし、裁判を起こすことになるため、費用や時間がかかってしまいます。
裁判となれば、弁護士のサポートも必要です。
裁判が必要なケースなのか、裁判以外で解決できる方法はないかなどについて、弁護士に相談することをおすすめします。
(2)差押えのための強制執行手続
裁判所で判決または訴訟上の和解が成立すると、請求権が公的に認められることになります。
そうなれば、強制執行手続として、加害者の財産の差押えができるようになります。
一般的には、加害者の不動産や預金、給与等が差押えの対象として考えられます。
また、差押えについては、以下の記事も参考になります。
4.無保険の加害者が自己破産した時は
交通事故の加害者が損害賠償金を支払うことができず、自己破産するケースがあります。
自己破産をした場合、交通事故の賠償債務を含む全ての債務が、原則として免責(返さなくて良くなる)されることになります。
しかし、交通事故の賠償債務は、場合によっては非免責債権といって、破産後も残る可能性があります。
破産法上、以下に該当する場合には、加害者がたとえ自己破産しても請求することができます。
- 破産者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権
- 破産者が故意又は重大な過失により加えた人の生命又は身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権
例えば、居眠り運転によるセンターラインオーバーで起こした事故などは、「重大な過失により加えた」ものと判断されます。
自身の交通事故が、上記のケースに該当するのかについては、弁護士に相談してみましょう。
まとめ
交通事故の加害者側が無保険で、慰謝料を支払ってくれなかったり、自己破産してしまったりするケースに遭遇してしまうかもしれません。
まずは、専門家のサポートを得て交渉をスムーズに進めましょう。
損害賠償金を十分にもらえないかもしれないという理由で、怪我の治療を中断することは得策ではありません。
交渉は弁護士に任せ、治療に専念することをおすすめします。
交通事故でこんなお悩みはありませんか?
交通事故に遭ってしまったけど、
保険会社・相手方とどんな風に対応
すればいいのかわからない・・・
後遺症があるためきちんと賠償を
受けたいけど、後遺障害認定申請や
示談交渉などさっぱりわからない・・・
- ✓ 事故発生直後からのご相談・ご依頼に対応しています。どの段階の方でも安心してご相談いただけます。
- ✓ 治療中のアドバイスから後遺障害認定申請、その後の示談交渉や訴訟対応までサポートいたします。
関連記事