逸失利益とは?計算方法について弁護士が解説

執筆者 青山 侑源 弁護士

所属 東京弁護士会

法律トラブルというものは、いつも身近に潜んでいるものです。
はじめのうちは「大したことないだろう」と思っていたことが、そのうち大事になってしまうというケースも多くありますので、少しでも「法律トラブルに巻き込まれたかもしれない」と感じている場合には、お早めにご相談いただくことをおすすめいたします。
法律トラブルへの対処方法や解決方法は、個人の方、法人の方ごとに千差万別ですが、お早めにご相談いただくことで、選べる選択肢も多くなります。
どのような解決方法があなたにとって最適な選択となるのか、一緒に検討していきましょう。

この記事の内容を動画で解説しております。

あわせてご視聴いただければと思います。

「自分は逸失利益を請求できるか知りたい」
「逸失利益の計算方法を知りたい」

交通事故被害に遭われた方の中には、逸失利益という言葉を初めて知ったという方も多いのではないでしょうか。

本記事では、交通事故の被害に遭われてしまった方が適正な損害の賠償を受けるためにも、逸失利益とはどういうものを指すのか、どういう方が請求できるのか、逸失利益の計算方法、そして弁護士に交渉を依頼することのメリットについて詳しくご説明していきます。

本記事を読むことで、交通事故によって被ってしまった損害について正しく計算し、適正な損害の賠償を受けるための助けになれば幸いです。

1.逸失利益について

(1)逸失利益とは

逸失利益とは、交通事故が無ければ将来得られたであろう利益のことをいいます。

治療費などのように、交通事故によって支出を余儀なくされてしまったという損害を積極損害といい、逸失利益のように、交通事故が無ければ得られたはずの利益が減少してしまったという損害を消極損害といいます。

(2)逸失利益の種類

逸失利益には、以下の2種類があります。

#1:後遺障害逸失利益

交通事故によって後遺障害が残ってしまった場合の逸失利益を、「後遺障害逸失利益」といいます。

後遺障害として認定された場合に、労働能力の全部又は一部が喪失してしまったために、将来得られるはずであった収入が喪失したり、減少した分の金額を逸失利益として加害者側に請求することができます。

#2:死亡逸失利益

交通事故によって死亡してしまった場合の逸失利益を、「死亡逸失利益」といいます。

交通事故によって亡くなってしまった場合、その方の収入は一切発生しないこととなってしまいますので、その分を逸失利益として加害者側に請求することができます。

(3)休業損害との違い

逸失利益と同じように、収入の減少に対する補償としては「休業損害」があります。

休業損害とは、交通事故によって怪我を負ってしまったために、仕事を休んだり労働時間を短縮したことで収入が減少してしまったことを理由とする損害をいいます。

逸失利益との違いとしては、完治又は症状固定までの収入の減少が休業損害、症状固定後の収入減少(将来の収入減少)が逸失利益となります。

(4)慰謝料との違い

交通事故における慰謝料は、入通院慰謝料、後遺障害慰謝料、死亡慰謝料の3種類があります。

そのうち、後遺障害慰謝料は、後遺障害が残ってしまったことによる精神的苦痛に対する賠償金です。

慰謝料は、精神面の損害であるため、事故によって収入が減少してしまったことによる逸失利益とはその性質が異なります。

2.逸失利益の計算法

それでは、以下で逸失利益について具体的な計算方法をみていきましょう。

(1)後遺障害逸失利益の場合

後遺障害逸失利益は、

「基礎収入」×「労働能力喪失率」×「労働能力喪失期間に対するライプニッツ係数」

によって算定されます。

基礎収入は、被害者の立場によって異なってきますので、以下の⑶で詳しく見ていきます。

労働能力喪失率は、事故前と比べてどの程度労働能力が低下してしまったのかということを数値に表したもので、後遺障害等級に応じて大体の目安が決まっています。

例えば、後遺障害等級14級の場合の労働能力喪失率は5%、12級の場合の労働能力喪失率は14%とされることが一般的です。

労働能力喪失期間は、基本的には67歳までの就労可能な年数となりますが、後遺障害の内容によっては、5年から10年程度に制限される場合もあります。

ライプニッツ係数とは、中間利息を控除するための係数です。

将来得られるはずであった収入を、その全てをまとめて先に得られるとすれば、貯蓄や運用によって本来得られるはずでなかった利息まで得られることになってしまうため、このような中間利息を控除する必要があるのです。

例えば、後遺障害等級が9級で労働能力喪失期間が15年の場合、

「基礎収入」×「労働能力喪失率:35%」×「労働能力喪失期間15年に対応するライプニッツ係数11.9379」

をかけて後遺障害逸失利益を計算します。

(2)死亡逸失利益の場合

死亡逸失利益は、基本的には後遺障害逸失利益と同様ですが、死亡したことによって労働能力は100%失われます。

他方で、その後の生活費はかからなくなるため、死亡逸失利益を算定するにあたっては、生活費分を控除する必要があります。

そのため、「基礎収入」×「1-生活費控除率」×「就労可能年数に対応するライプニッツ係数」によって算定されます。

生活費控除率は、被害者の立場(一家の支柱だったかどうか、被扶養者は何人か、など)によって異なってきます。

(3)職業別の逸失利益の計算方法

#1:サラリーマン

サラリーマンの場合、原則として事故前年の源泉徴収票をもとに基礎収入を算定します。

ただし、若年労働者(概ね30歳未満)の場合、一般的に賃金が低く抑えられていることが多いため、公平の観点から賃金センサスの全年齢を対象にした平均賃金を基礎収入として算定することになります。

#2:自営業

自営業の場合、原則として事故前年の確定申告の所得額をもとに基礎収入を算定します。

#3:主婦(主夫)

主婦(主夫)の場合、実際の収入は無くとも、家事労働をしているため逸失利益を請求することができます。

賃金センサスの女性労働者の全年齢平均を基礎収入として算定することになります。

兼業主婦(主夫)の場合には、実収入と、女性の全年齢平均賃金とで、高い方を基礎収入とします。

#4:失業者・無職者

事故当時、収入が無かった者については、原則として逸失利益は認められません。

ただし、例えば転職活動中であった場合など、就労意欲や労働能力があり、就労の可能性が高いといえる場合には、失業前の収入や平均賃金を参考にして基礎収入をを算定する場合もあります。

#5:高齢者

高齢者であっても、働いていれば会社員や自営業者と同様に、家事をしていれば主婦や主夫と同様に基礎収入を算定します。

ただし、年金生活をしており、就労する可能性がない場合には、逸失利益を請求することはできません。

年金は事故の有無にかかわらず受け取れるため、後遺障害が残っても減収がないからです。

#6:子ども

まだ働いていない子どもであっても、将来働くはずであったといえるため逸失利益を請求することができます。

子どもの場合、原則として将来の収入については予測が困難であるため、賃金センサスの男女別の全年齢平均を基礎収入として算定することになります。

3.逸失利益の請求を弁護士に相談するメリット

(1)後遺障害等級の申請がしやすい

後遺障害逸失利益は、後遺障害が認められなければ請求することはできず、後遺障害の等級によっては労働能力喪失率や労働能力喪失期間にも影響しますので、後遺障害等級の認定は極めて重要となります。

後遺障害等級認定の申請の際は、適正な認定を受けるためにも、必要書類を準備するところから専門的知識を有する弁護士に任せることをおすすめします。

(2)相手方との交渉を任せることができる

上記⑶の記載は、あくまで原則・一般的な計算方法であり、被害者の事故当時の具体的な立場や状況に応じて、個別に逸失利益を算定する必要があります。

弁護士であれば、被害者の立場や事故当時の状況を詳しく聞き取ったうえで、適切な逸失利益の算定方法を相手方に主張することができ、また、そのために必要な資料収集についてのアドバイスをすることもできます。

(3)納得のいく金額を請求できる

逸失利益に限りませんが、弁護士であれば、過去の裁判例をもとに、被害者の個別具体的な状況に応じて適切な損害額を算定し、請求することができます。

自賠責や保険会社の独自の基準に基づく算定額よりも、公平な立場である裁判官の基準をもとに損害額を算定し請求することで、より納得はしやすいと言えます。

まとめ

本記事では、交通事故に遭った場合の逸失利益について、その計算法や弁護士に相談するメリットをご説明しました。

交通事故に遭い、納得のいく逸失利益を得るために、まずは弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。

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執筆者 青山 侑源 弁護士

所属 東京弁護士会

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はじめのうちは「大したことないだろう」と思っていたことが、そのうち大事になってしまうというケースも多くありますので、少しでも「法律トラブルに巻き込まれたかもしれない」と感じている場合には、お早めにご相談いただくことをおすすめいたします。
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