交通事故の際の弁護士特約とは?弁護士特約の活用法を解説!

執筆者 野沢 大樹 弁護士

所属 栃木県弁護士会

私は、法律とは、人と人との間の紛争、個人に生じた問題を解決するために作られたツールの一つだと考えます。法律を使って紛争や問題を解決するお手伝いをさせていただければと思いますので、ぜひご相談ください。

「交通事故に遭ってしまい、加入している任意保険会社の担当者から弁護士特約を使えると説明があった」
「弁護士特約を使うとどんなメリットがあるの?」

交通事故に遭って混乱しているところに弁護士特約を使えると言われて、何の役に立つのかと疑問に思われる方もいらっしゃると思います。

実は、交通事故の際に弁護士特約を利用できる場合、これを利用することには様々なメリットがあるのです。

本記事を読んでいただき、弁護士特約の利用を考える際の参考にしていただければ幸いです。

1.弁護士特約の内容

弁護士特約は、交通事故の際の弁護士費用を保険会社が支払ってくれるという、自動車の任意保険に付帯することのできる特約です。

保険会社の約款やパンフレットでは弁護士費用特約という名称となっていることが多いです。

各保険会社によって、保険の内容の詳細が異なることはありますが、ほとんどの場合は以下のような特徴が共通しています。

(1)支払ってもらえる費用

弁護士特約を利用することにより、交通事故の被害について弁護士へ相談した際の相談料と、加害者への請求などを弁護士に依頼した際の着手金・報酬金を保険会社に支払ってもらうことができます。

つまり、弁護士特約を利用すれば、交通事故の際に弁護士に依頼しても、被害者本人は弁護士費用を負担せずに済むということです。

なお、弁護士への着手金・報酬金には、加害者への請求のために訴訟提起が必要になった場合の費用や、後遺障害の認定のための画像鑑定等の費用も含まれていることが多いです。

(2)弁護士特約を利用できる主体の範囲

弁護士特約によって弁護士費用の補償を受けられるのは、以下のような方です。

  • 被保険者本人
  • 被保険者の配偶者
  • 被保険者または配偶者と同居している親族
  • 被保険者または配偶者と別居の未婚の子
  • 契約自動車の所有者
  • 契約自動車に乗車中の方

以上のうち、被保険者本人やその家族については、歩行中の自動車との事故など、自動車の運転中以外の自動車に関わる被害事故であれば、弁護士特約を利用することができます。

例えば、被保険者と同居している親族が、契約自動車以外の自動車に乗車している際に事故に遭った場合や、横断歩道を歩行中に信号無視の自動車に接触される事故に遭った場合などは、弁護士特約を利用できます。

一方、歩行中の自転車との接触事故などは、自動車に関わる事故ではないため弁護士特約の対象にはなりません。

もっとも、弁護士特約に、日常生活事故にも対応するとのオプションがついている場合は、このような事故についても弁護士特約を利用することができます。

上記のほか、各保険会社は、事故の発生について被保険者の故意または重大な過失がある場合、天変地異によって事故が発生した場合などを弁護士特約を利用できないケースとして定めています。

そのため、弁護士費用特約を利用できるケースに当たるかどうかは、保険会社に確認することが必要になります。

このように、被保険者本人ではなく、被保険者のご家族等であっても弁護士特約を利用できるようになっています。

しかし、交通事故に遭ったとき、ご家族が任意の自動車保険に加入しており弁護士特約が付帯していても、ご自身が本当にその弁護士特約を利用できるかどうかや、弁護士特約を利用できないケースに当たるかどうかについて、判断できないということも多いと思います。

使えるはずのものを使わず弁護士費用を負担することになってしまってはもったいありませんので、交通事故に遭ったご自身が保険に加入していない、または、加入しているものの弁護士特約が付帯していない場合でも、ご家族の保険に弁護士特約が付帯されているかどうかや、その事故について特約を利用できるどうか、保険会社に確認した方がよいでしょう。

(3)弁護士特約の上限

弁護士特約によって支払われる費用には上限があり、相談料については10万円、着手金・報酬金については300万円となっています。

この上限を超えた部分については被害者本人が負担することになりますが、死亡事故や、重度の後遺障害が残った事故でなければ、上限を超えるケースは多くありません。

つまり、上限があるとはいえ、多くの場合これを気にすることなく弁護士特約を利用することができるということになります。

(4)保険の等級への影響

交通事故に遭ったために保険を利用すると保険の等級が上がってしまうことがほとんどです。

しかし、弁護士特約の利用では、等級に対する影響はありません。

弁護士特約を利用することにデメリットはないといえるでしょう。

(5)自動車保険以外の弁護士特約

弁護士特約が付帯されているのは、自動車保険だけに限られません。

火災保険、建物・家財保険、自転車保険、医療保険、傷害保険などにも、弁護士特約を付帯できるものが増えており、契約時に勧められて弁護士特約を付帯していた、ということもあります。

そして、これらの保険に付帯されている弁護士特約も、交通事故の被害を受けた際に、加害者へ損害賠償を請求するための弁護士費用を負担してくれるものがほとんどです。

これらの保険の弁護士特約の中には、自動車保険の弁護士特約と比較して費用の上限額が低く設定されていたり、費用の一部について自己負担をしなければならなかったりすることもありますが、弁護士費用の負担を軽減できることには変わりありません。

このように、自動車保険に加入していない場合であっても、弁護士特約を利用することにより、弁護士費用の負担を軽減できることがあります。

交通事故に遭った際は、自動車保険以外の保険に弁護士特約が付いていなかったか、その弁護士特約は交通事故の場合にも使えるか、補償の上限はいくらまでになっているかなどの点について、保険会社に確認してみるとよいでしょう。

2.弁護士特約を利用するメリット

弁護士特約を利用することにより、交通事故に遭っても、費用のことを気にせず弁護士に交渉を依頼することができます。

それでは、交通事故に遭ったとき、弁護士に依頼することにはどのようなメリットがあるのでしょうか。

以下、ご説明します。

(1)加害者との間に入って示談交渉を行ってくれる

交通事故に遭った場合でご自身にも過失割合が認められる場合、ご自身の任意保険会社も事故の相手方の損害を賠償する必要があるため、相手方との示談交渉を行ってくれることがあります。

しかし、追突された場合や、横断歩道上を歩行していて車に接触された場合など、ご自身に過失がない場合は、加害者の任意保険会社の担当者と損害賠償について直接話をしなければなりません。

しかし、特に怪我をしてしまった場合、通院と日常生活で手一杯であり、保険会社の担当者との話し合いなどしていられない、ということが多いと思います。

このような場合に、弁護士特約を利用し、弁護士に依頼すれば保険会社の担当者との交渉を任せ、通院や生活に集中することができます。

もちろん、その弁護士から、損害賠償を請求するために必要な資料の提出を求められることもあるでしょうが、加害者側の関係者と直接やり取りをするよりは、気分が楽になることでしょう。

(2)後遺障害等級の認定申請を代行してくれる

交通事故によって怪我を負い、治療を続けたものの、症状が残ってしまい、治療を続けても効果が上がらない状態(「症状固定」といいます。)となった場合、その症状について、後遺障害等級の認定を求めることができます。

後遺障害等級の認定申請には主に二つの方法があります。

一つは被害者請求、もう一つは事前認定です。

被害者請求は、被害者本人が加害者の自賠責保険会社に対して、書類を提出して行うものです。

提出書類を工夫することにより、後遺障害等級の認定を受ける確率を高めることができますが、一方で、その準備を被害者本人が行わなければならないことは負担となります。

事前認定は、加害者の任意保険会社が被害者に代わって手続を行うというもので、被害者は後遺障害診断書を医師に作成してもらい、加害者の任意保険会社に提出するだけで足ります。

手続を任せることができるため負担が軽い一方、被害者請求に比べて最低限の書類で申請が行われてしまうことがあると言われており、認定を受ける確率が下がってしまう可能性があります。

後遺障害等級の認定を受ける確率を上げるのであれば被害者請求の方法がよいのですが、負担が大きいのが難点です。

しかし、弁護士に依頼すれば、被害者請求の手続を任せることができますし、経験のある弁護士であれば、適切な資料収集により、認定を受けやすくすることもできるでしょう。

このように、後遺障害等級認定の場面でも弁護士に依頼するメリットがあります。

(3)賠償金が増額する可能性がある

任意保険会社と直接交渉している場合、保険会社から提示される損害賠償の金額は、任意保険基準という基準によって算定されています。

この基準は、保険会社ごとに定められていると言われていますが、いずれの会社においても、訴訟の際に用いられる裁判所基準(弁護士基準ともいいます。)よりも低い金額とされています。

依頼を受けた弁護士が保険会社に請求する場合、任意保険基準よりも高額な裁判所基準で請求し、その基準に近づけるように交渉をします。

そのため、弁護士に依頼することにより、損害賠償額の増額が見込めるのです。

3.弁護士特約利用の流れ

弁護士特約を利用する場合の流れについて、ご説明します。

(1)事故発生の連絡

保険利用の前提として、まず、ご加入の任意保険会社に事故発生の連絡を入れる必要があります。

(2)保険会社への弁護士特約利用の連絡

次に、弁護士特約を利用することを、任意保険会社に連絡します。

この連絡については、次の(3)のあとに、(4)とともに行っていただいてもかまいません。

(3)弁護士への依頼

弁護士へ依頼します。

このとき、依頼する弁護士は自由に選ぶことができます。

(4)保険会社への依頼内容の連絡

任意保険会社に対し、弁護士へ依頼したことを連絡します。

このとき、弁護士と任意保険会社との間でも、連絡を取り合い、弁護士特約の利用についての確認が行われていることが多いです。

(5)その他

任意保険会社から弁護士特約の利用について、書類の提出を求められることがあります。

この場合には、速やかに書類を作成し、提出するようにしましょう。

まとめ

弁護士特約についてご説明しました。

弁護士特約を利用しても、保険の等級が上がってしまうなどのデメリットが生じることはありません。

一方で、弁護士特約を利用することにより、弁護士費用の負担を気にせず弁護士に示談交渉を依頼できるメリットはとても大きいものといえます。

ご自身やご家族が加入している自動車保険に弁護士特約が付いており、利用が可能な場合は、迷わずこれを利用して弁護士に依頼されることをおすすめします。

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