弁護士費用特約を使えないケースとは?対処法と使えない状態でも弁護士に相談すべき理由

執筆者 実成 圭司 弁護士

所属 第二東京弁護士会

皆さまのご相談内容を丁寧にお聞きすることが、より的確な法的サポートにつながります。会話を重ねながら、問題解決に向けて前進しましょう。

「弁護士費用特約を使えないときってどんなケースなのか」
「弁護士費用特約を使えないときはどうしたらいいのか」

交通事故の被害に遭った方の中には、実際に弁護士費用特約を使えるか気になっている方もいるのではないでしょうか。

弁護士費用特約は、交通事故などで加害者に対して損害賠償請求を行う際の弁護士費用について保険会社から補償を受けることができる保険です。

弁護士費用特約を利用することで、費用負担を軽減して弁護士に相談や依頼をすることが可能になります。

もっとも、事故態様や特約の内容によっては、弁護士費用特約を利用できない場合があります。

本記事では、弁護士費用特約を使えないケースや主な対処法について解説します。

なお、弁護士費用特約の概要については、以下の記事もご参照ください。

2022.01.31

交通事故の際の弁護士特約とは?弁護士特約の活用法を解説!

1.弁護士費用特約を使えないケース

弁護士費用特約を使えないケースはいくつかあります。

主なケースは以下のとおりです。

弁護士費用特約が使えない主なケース

  1. 被害者に故意又は重大な過失がある場合
  2. 自動車・バイクがかかわっていない場合
  3. 事故の相手が親族等である場合
  4. 自然災害によって事故が発生した場合
  5. 事故後に弁護士費用特約に加入した場合

順にご説明します。

(1)被害者に故意又は重大な過失がある場合

弁護士費用特約は、被害者側に故意又は重大な過失がある場合は利用できない可能性が高いです。

たとえば、被害者が意図的に交通事故を起こしたり、加害者に対して悪質な煽り運転をしていたりすると、被害者側に故意又は重大な過失が認められる可能性があります。

単に自身に過失割合が発生するだけであれば問題ありませんが、わざと事故を起こしたような状況の場合には保険が使えなくなりますから注意が必要です。

(2)自動車・バイクがかかわっていない場合

自動車やバイクがかかわっていない事故も原則として弁護士費用特約を利用することはできません。

そのため、自転車同士の事故や自転車と歩行者の事故、その他例えば犬にかまれたといった場合は、弁護士費用特約の対象外となることが多いので注意が必要です。

もっとも、特約のタイプや内容によっては、弁護士費用特約が利用できる場合があるため、保険会社に確認するようにしましょう。

(3)事故の相手が親族等である場合

加害者側が親族等の場合も弁護士特約の対象外になることが多いです。

たとえば、父親や配偶者等が運転する車両に轢かれたようなケースです。

このような場合は、加害者に対して賠償請求をすることが困難であることが多く、弁護士費用特約の対象から外れています。

(4)自然災害によって事故が発生した場合

自然災害による事故は弁護士費用特約を使えないのが一般的です。

たとえば、以下のような自然災害によって引き起こされた事故は弁護士費用特約の対象外になります。

弁護士費用特約の適用対象外となる主な自然災害

  • 地震
  • 台風
  • 洪水
  • 津波
  • 噴火 など

これらは、誰かに賠償請求ができるというものではないため、賠償請求をする際に利用する弁護士費用特約は使えないこととなります。

(5)事故後に弁護士費用特約に加入した場合

交通事故の後に弁護士費用特約に加入した場合は、直前の事故で弁護士費用特約を利用することはできません。

保険は使えるための基準日というものを設けており、契約後の事故にしか使えないようになっています。

そのため、あらかじめ弁護士特約が付されていることが必要となるため、利用の際にはご自身の保険内容を確認し、付帯されているかどうかをチェックするようにしましょう。

2.弁護士費用特約を使えないときの対処法

保険会社から弁護士費用特約を利用できないと言われた場合には、利用できない理由を確認しましょう。

ご自身の保険に弁護士費用特約が付帯されているにも関わらず、利用できないと言われたときは、約款のどの条項に当てはまるのかを明確に示してもらうことが大切です。

仮に当該弁護士特約を利用できない場合であっても、他に加入している保険(医療保険、火災保険等)やクレジットカードに付帯している弁護士費用特約を利用できることもあります。

また、ご家族が、弁護士費用特約が付帯されている保険に加入している場合にも利用できるケースがありますので、ご家族や保険会社に確認してみましょう。

なお、弁護士費用特約が利用できる家族や親族の範囲については、以下の記事も参考になります。

2024.09.27

弁護士特約は家族も利用できる?利用できないケースと使い方

3.弁護士費用特約を使えなくても弁護士に相談すべき理由

弁護士費用特約を使えなくても弁護士に相談すべき理由はいくつかあります。

主な理由は以下のとおりです。

弁護士費用特約が使えなくても弁護士に相談すべき理由

  1. 専門的なアドバイスを受けられる
  2. 費用倒れの可能性について説明を受けることができる
  3. 示談金の増額が期待できる
  4. 示談交渉の負担を軽減できる

順にご説明します。

(1)専門的なアドバイスを受けられる

交通事故の相談対応を多く行っている弁護士に相談することで、専門的なアドバイスを受けることが可能です。

交通事故については、相談料を無料としている法律事務所が多くありますから、弁護士費用特約が使えなかったとしても費用負担が要らない可能性が高いです。

事故対応や保険会社との対応に不安がある場合には、まずは無料の法律相談を受けることをおすすめします。

なお、弁護士法人みずきも交通事故に関するご相談は無料で承っております。

(2)費用倒れの可能性について説明を受けることができる

仮に弁護士費用特約を使えない場合、費用倒れのリスクが生じます。

この場合の費用倒れとは、弁護士に依頼した場合よりも依頼しなかった場合の方が賠償金を多くもらえることをいいます。

しかし、このような費用倒れが生じる可能性を含めた経済的な見通しについては、契約前の法律相談の段階でしっかり説明を受けることができます。

なお、費用倒れが起こりやすいケースや対処法については、以下の記事でも詳しく解説していますので、併せてご覧ください。

2022.02.24

交通事故の対応を弁護士に依頼して費用倒れしないためには?対処法を解説!

(3)示談金の増額が期待できる

仮に弁護士費用特約を使えなくても、弁護士に交渉を依頼することにより、示談金、特に慰謝料の増額が期待できます。

交通事故の慰謝料の算定方法には自賠責基準、任意保険基準、裁判所(弁護士)基準の3つがあります。

自賠責基準は最低限の補償を行うことを目的としており、最も低い基準で慰謝料が算定されることになります。

また、任意保険基準は保険会社が示談交渉で慰謝料の算定に用いる基準ですが、自賠責基準により算定される金額と同等か少し上回る程度といわれています。

弁護士に依頼せずに、被害者がご自身で示談交渉を行うと、自賠責基準や任意保険基準が適用されることになります。

これに対し、裁判所(弁護士)基準は、過去の裁判例で認められた金額をもとに算出された基準であり、これにより算出される慰謝料は、一般に、3つの基準の中で最も高額な水準になります。

弁護士に示談交渉を依頼することで、裁判所(弁護士)基準での交渉を行うことができ、受け取ることができる示談金が大幅に増加する可能性が高くなります。

増額幅が大きければ大きいほど、3(2)で述べた費用倒れが生じる可能性は少なくなります。

(4)示談交渉の負担を軽減できる

仮に弁護士費用特約を使えなくても、弁護士に依頼することにより、示談交渉の負担を軽減することができます。

弁護士費用はかかるものの、示談交渉に関する負担から解放される点は大きなメリットです。

交通事故の怪我の治療を継続しながら加害者側の保険会社等と交渉をすることは、身体的にも精神的にも負担が大きいです。

弁護士に依頼すれば、示談金の増額を期待しつつ、示談交渉のストレスから解放され、治療や日常生活を送ることに専念できます。

まとめ

交通事故のケースや保険の加入状況によっては、弁護士費用特約を使えない場合があります。

まず、当該事故が弁護士費用特約が使える事故であるか把握した上で、被害者自身や家族の保険内容を確認することが大切です。

もし弁護士費用特約を使用することができない場合でも、まずは弁護士に相談することをおすすめします。

多くの法律事務所は交通事故に関する法律相談を無料で実施しており、事前に費用倒れのリスク等の説明を受けることが可能です。

また、弁護士に示談交渉を依頼すれば、賠償金の増額が期待でき、賠償金から弁護士費用を捻出することができます。

示談交渉の負担軽減にもつながるため、弁護士費用特約が使えない場合でも弁護士に相談してみることがおすすめです。

弁護士法人みずきでは、交通事故に関する相談を無料で受け付けておりますので、弁護士費用特約について困っている方はお気軽にご相談ください。

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