高次脳機能障害とは?認定を受けた場合のその後の対応
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「高次脳機能障害ってどのような症状があるのか」
「高次脳機能障害に認定されたらどうなるのか」
交通事故の被害者やその親族の中には、医師から「高次脳機能障害」という診断名を聞かされた方もいるのではないでしょうか。
あまり聞きなじみがない病名なので、不安に思うことも多いかと思います。
本記事では、高次脳機能障害の概要や、認定される可能性の高い後遺障害などについてご紹介します。
1.高次脳機能障害とは
高次脳機能障害とは、事故などの何らかの原因により脳が損傷することで、日常生活や社会生活に支障が生じる状態をいいます。
脳は、様々な機能をつかさどっていますが、その中でも単純な知覚障害や運動障害ではなく、より高い次元でのネットワーク障害のことを高次脳機能障害といいます。
例えば、「歩くことができない」というのは単純な運動障害ですが、「歩くことはできるがごく簡単な目的地までたどりつけない」というのは高次脳機能障害と考えられます。
地図を確認したり、現在地を認識したり、目的地までの経路を想定したり、という作業は、脳のいろいろな機能を組み合わせて行うので、どこかでその機能が噛み合わなくなってしまうと、これまでできたことができなくなってしまうのです。
脳は、部位によってさまざまな機能を担っています。
そのため、どの部位にどのような損傷が生じたかによって、様々な症状が現れます。
症状 | 症条例 |
注意障害 |
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記憶障害 |
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言語障害 |
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行動障害 |
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失認証 |
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社会的行動障害 |
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遂行機能障害 |
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一言で高次脳機能障害といっても、とても多岐にわたっていることが分かると思います。
また、程度によっては、障害でなくとも苦手なことがある人は少なくありません。
例えば、もともと計画を立てるのが苦手な人、もともと地図を読むのが苦手な人、もともと怒りっぽい人などです。
そのため、ここで重要となるのは、「事故前から変わったのか」という点です。
医師は事故前のご本人を知らないことがほとんどですから、ご本人やご家族などが積極的に確認していく必要があります。
2.高次脳機能障害の後遺障害等級
交通事故により高次脳機能障害が残ってしまった際には、後遺障害等級を申請することとなります。
症状の程度により1級~9級として認定されることが多いです。
高次脳機能障害の認定基準を表にまとめました。
等級 | 認定基準 | 具体例 |
1級1号 | 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの | 身体機能は残存しているが、高度の痴呆があるために、生活維持に必要な身の回り動作に全面的介護を要するもの |
2級1号 | 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの | 著しい判断能力の低下や情動の不安定などがあって、1人で外出することができず、日常の生活範囲は自宅内に限定されている。身体的動作には排泄、食事などの活動を行うことができても、生命維持に必要な身辺動作に、家族からの声掛けや監視を欠かすことができないもの |
3級3号 | 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの | 自宅周辺を1人で外出できるなど、日常の生活範囲は自宅に限定されていない。また、声掛けや、介助なしでも日常の動作を行える。しかし記憶や注意力、新しいことを学習する能力、障害の自己認識、円滑な対人関係維持能力などに著しい障害があって、一般就労が全くできないか、困難なもの |
5級2号 | 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの | 単純くり返し作業などに限定すれば、一般就労も可能。ただし、新しい作業を学習できなかったり、環境が変わると作業を継続できなくなるなどの問題がある。このため一般人に比較して作業能力が著しく制限されており、就労の維持には、職場の理解と援助を欠かすことができないもの |
7級4号 | 神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの | 一般就労を維持できるが、作業の手順が悪い、約束を忘れる、ミスが多いなどのことから一般人と同等の作業を行うことができないもの |
9級10号 | 神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの | 一般就労を維持できるが、問題解決能力などに障害が残り、作業効率や作業能力などに問題があるもの |
高次脳機能障害は、人によって生じる症状もその程度も異なるため、上記のように幅広い等級に該当する可能性があります。
特に、等級の重さを決めるために重要なのは「何ができて何ができないのか」という点です。
しかし、高次脳機能障害は本人はその障害のために自身の症状を正しく認識できていないことも多いです。
そのため、ご家族や同僚などの協力を仰ぎ、適切に症状を判断することが大切になります。
3.高次脳機能障害かなと思ったら
実は、高次脳機能障害は見逃されやすい病気と言われています。
というのも、症状の程度が重篤でなければ「もともとこんな人なのかな」等と見過ごされてしまう可能性があるからです。
高次脳機能障害の可能性があると思ったら、以下の点を確認してみてください。
(1)事故直後の意識障害
事故後、意識があったのかなかったのか、そしてなかったとすればどのくらいの時間なかったのかという点が重要になります。
意識がない時間が長ければ長いほど、脳に及んだダメージが大きいと考えられるので、高次脳機能障害が生じている可能性が高まります。
(2)脳の画像検査
脳に損傷があるか否かは非常に重要な点です。
事故直後に脳内出血が見られたとしても、早期に出血が止まり吸収されれば、脳へのダメージはそこまで大きくないこともあります。
他方で、出血が長期間続けば血腫により脳が圧迫されたり、脳事態に大きな損傷が生じている可能性があります。
そのため、頭部のCTやMRI画像検査の結果はとても大切です。
(3)高次脳機能障害の対応病院か
高次脳機能障害は、未だ解明されつくしていない脳の損傷に関するものなので、残念ながら全ての病院で適切な治療を受けられるわけではありません。
多くの場合、都道府県のホームページなどで、高次脳機能障害の対応が可能な病院のリストが掲載されているので、通院先病院がそこに含まれているかも確認しましょう。
もしも万全な対応ができない病院であれば、転院を検討することも必要となります。
4.後遺障害申請について
高次脳機能障害の治療が一通り済んだら、後遺障害等級の申請をしましょう。
もっとも、高次脳機能障害の治療は一般的に1年~2年程度かかることも珍しくないため、必要な治療をきちんと行ってからという点に注意しましょう。
一般的なむち打ちや骨折などは半年程度で症状固定となることも多いですが、高次脳機能障害に関しては半年の治療期間では短すぎることがほとんどです。
十分な治療を行い担当医師に症状固定の診断をしてもらったら、後遺障害診断書を作成してもらいましょう。
そして、必要書類を揃えて相手方の自賠責保険会社に提出します。
高次脳機能障害は、必要となる書類が多いため、後遺障害申請を行う際には弁護士に相談していただくのが良いと思います。
以下の記事で後遺障害等級認定の申請方法についてまとめているので、あわせてご覧ください。
5.認定後に請求できる費用
後遺障害等級の認定を受けることができれば、後遺障害慰謝料と後遺障害逸失利益を請求できるようになります。
後遺障害慰謝料は、事故で後遺障害が残ったことによって受けた精神的苦痛に対する補償で、後遺障害逸失利益は、事故によって将来得られるはずだった収入の減少分に対する補償のことです。
特に後遺障害慰謝料は、認定等級によって相場が変わるため、適切に後遺障害等級認定の申請をしましょう。
具体的な慰謝料の金額については以下の記事でまとめているので、あわせてご確認ください。
まとめ
高次脳機能障害は、見逃されやすい上に、仕事や生活に大きな支障が生じる可能性のある、とても難しい障害です。
また、きちんと書類を集めて申請しなければ、適切な後遺障害等級を得ることも難しいです。
高次脳機能障害の可能性がある方は、是非お早めに一度弁護士へご相談ください。
弁護士法人みずきでは、高次脳機能障害の治療中のサポートから示談交渉、訴訟対応まで豊富な経験があります。
交通事故被害に遭って不安を感じている方は、お気軽にご相談ください。
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