後遺障害等級認定を申請したが非該当となった場合の対処法
「交通事故で後遺症が残ったのに、後遺障害が認められないことがあるって本当?」
「後遺障害認定申請をしたら、非該当という結果が出てきたけど、この後どうすればいい?」
交通事故で怪我を負った後、残念ながら完治をしなかった場合、後遺障害認定申請という手続きをとるのが一般的です。
しかし、申請をすれば全ての場合で認められるというわけではありません。
残念ながら後遺障害認定申請の結果が非該当となり、納得いかないという方は多くいらっしゃるのではないでしょうか。
本記事では、交通事故における後遺障害等級認定の結果が非該当になった場合の原因や対処法の他に、異議申立て等を行う際のポイントについてご説明します。
この記事を読んで、後遺障害等級認定の結果が非該当になった場合の対処法を知っていただければ幸いです。
1.交通事故において後遺障害等級が非該当となる5つの理由
後遺障害等級は1級から14級まであり、残った障害の重さや被害者の労働能力が後遺障害によってどれだけ失われたかにより区分されています。
後遺障害等級の認定は基本的に書面審査ですが、その具体的な認定基準は公表されていません。
しかし、等級認定を担う自賠責損害調査事務所は、一般に、事故態様、通院及び治療状況、画像所見、症状の一貫性などの要素を総合的に考慮して判断しているとされています。
そこで、もし非該当の結果が返ってきた場合には、次の5つのポイントに当たっていないかを確認し、後で述べる異議申立手続き等に備えるようにしましょう。
- 後遺障害を裏付ける客観的所見が足りない
- 必要な検査を受けていない
- 医師へ自覚症状を正確に説明できていない
- 通院頻度が過度に少ない又は多い
- 交通事故と後遺障害の因果関係が証明できていない
(1)後遺障害を裏付ける客観的所見が足りない
後遺障害等級が認定されるには、たとえ後遺症が残っているとの自覚があってもそれだけでは足りず、自覚症状と整合する客観的所見によって、自賠責損害調査事務所を説得することが必要です。
この場合の客観的所見は、病院での検査や医師による診察により、医師が客観的に捉えることのできる症状のことをいいます。
ご自身の症状が後遺障害等級に該当することを、検査や診察で裏付けることができなかった結果、後遺障害等級認定が非該当の結果になった可能性が考えられます。
(2)必要な検査を受けていない
後遺障害等級認定において、検査結果などに基づく医師からの客観的所見は有力な証拠になります。
そのため、CTやMRI画像診断など、後遺障害等級認定に必要な検査をし、ご自身に残っている後遺障害が医学的に認められることを後遺障害診断書に記載してもらうことが大切です。
たとえば、椎間板ヘルニアによる神経症状があるときはMRI等、動揺関節があるときはストレスレントゲンテスト等、可動域制限ならレントゲン及び日整会方式による関節可動域検査等、ご自身の症状に相応した検査を行う必要があります。
このように医学的根拠となるような検査をしていない場合、後遺障害等級認定が非該当の結果になる可能性があります。
(3)医師へ自覚症状を正確に説明できていない
後遺障害は痛みや動かしづらさなど目に見えない症状が多くあります。
このような症状があるときは、まずは、自覚している症状を漏れなく医師に伝えて、日常的、継続的に苦痛や不自由が生じていることを、正確にわかってもらう必要があります。
非該当の結果が返ってきた場合、たとえば、本当は常に痛むのに、動かす時だけに痛むと勘違いされていないか、本当は肩が痛いのに、背中が痛むと勘違いされていたり、痛む場所を特定できていなかったりしないか等を、提出した書面で確認してみましょう。
(4)通院頻度が過度に少ない・多い
通院頻度は多すぎても少なすぎてもいけません。
通院頻度が過度に少ないと、実は大した症状ではないのではないか、または治療を積極的に行わなかったせいで症状が残っているのではないか、等の疑念が生じてしまいます。
また、反対に通院頻度が過度に多いと、過剰診療により詐病を疑われる可能性があります。
以上から、医師の指示に従って適切な頻度で通院していない場合には、後遺障害等級認定の申請結果が非該当になり得ます。
(5)交通事故と後遺障害の因果関係が証明できていない
後遺障害等級認定のためには「交通事故が原因で症状が出た」と認められる必要があります。
すなわち、交通事故の態様からそのような部位に後遺症が残るような受傷をすること(事故と受傷の因果関係)、また、交通事故でそのような強度の後遺症が残り得ること(事故と後遺障害の因果関係)をそれぞれ証明する必要があります。
交通事故が起こる前から症状が出ていたり、別の出来事によって発症したりしたものではないということを証明する必要があるのです。
そのため、事故態様と整合する怪我か、事故直後から一貫して症状を訴えているかといった点をきちんと整理する必要があります。
また、治療途中で転院した場合は、転院先の担当医師が異なる診断結果を示したことで症状の一貫性が認められない可能性がありますので、特に非該当の結果が出た場合には、提出した書類を再度確認するとよいでしょう。
以上のような因果関係の証明ができていないと、非該当の結果が出ることになります。
2.後遺障害等級が非該当になった場合の対処法
後遺障害等級が非該当になった場合の不服申立手続は、3種類あります。
1つ目は、異議申立手続です。
異議申立手続は、後遺障害等級認定手続を実施した機関の上位機関である自賠責保険審査会が行い、何度でも申立てをすることができます。
2つ目は、第三者機関である自賠責保険・共済紛争処理機構に対する調停の申立てです。
この申立ては、一度きりしかできません。
3つ目は、訴訟の提起です。
訴訟は裁判所に対して提起し、法律に基づいて後遺障害等級の該当性が判断されます。
一度判決が出て確定すると、同じ内容の訴訟を再度提起することはできません。
では、それぞれご説明します。
(1)異議申立を行う
異議申立とは、後遺障害等級の認定結果に不服がある場合に、もう一度、認定を求めて申請を行うことです。
この場合、初回の認定結果を踏まえ、再度必要書類を整え直して挑むことになります。
異議申立書の他に、認定に有利になるような新たな書類や医療機関による検査結果、医師の意見書等を併せて提出するとよいでしょう。
申立ての後、通常、2~3か月で審査結果が通知されます。
- 異議申立書の作成、必要書類の準備
- 保険会社へ必要書類を提出
- 損害保険料率算出機構による審査
- 保険会社からの結果通知
#1:異議申立書の作成、必要書類の準備
異議申立書は、特に定められた書式はありません。
しかし、異議申立手続きは書面審査であることから、従前の認定結果のどこが間違えているのか、どこが問題なのか、なぜご自身の主張が正しいのかということを、医師の意見書等の医学的根拠を基に、説得的に書く必要があります。
また、異議申立手続きは、何度でも申し立てをすることができます。しかし、やみくもに回数を重ねても、希望する等級の認定は得られないでしょう。
そのため、異議申立てをするに当たっては、なぜ後遺障害等級認定申請に対し非該当の結果が出たのか、どうすれば希望する等級が認定されるのかについて、分析・検討することが大切です。
そのうえで、たとえば、必要な検査が不足しているのであればその検査をしてもらったり、可動領域に測り間違いがあるのであれば、再度測定してもらったりということを通じて、非該当結果を覆せるような新たな追加資料を収集し提出するようにしましょう。
#2:保険会社へ必要書類を提出
異議申立書と、一度目の結果回答時に返却を受けた画像資料及び追加収集した資料を、後遺障害等級認定申請時に書類を提出した窓口に提出します。
#3:損害保険料率算出機構による審査
提出した書類の審査は、損害保険料率算出機構が行います。
#4:保険会社からの結果通知
異議申立ての後、通常2~3か月で審査結果が通知されます。
(2)紛争処理機構に審査を申請する
上記の通り異議申立ては何度でもすることができます。
しかし、審査を行うのは同じところですから、一般的には複数回申立てを行ったとしても覆る可能性はあまり高まりません。
そのような場合は、第三者に対して、自賠責によって認定された後遺障害等級の妥当性の審査を求める方法もあります。
それは、自賠責保険・共済紛争処理機構へ紛争処理の調停を申し立てるという方法です。
紛争処理の申請が同機構に受理されると、公平中立で専門的な知見を有する紛争処理委員が独自に審査・調査を行った上で、後遺障害等級認定につき調停結果が出されます。
- 紛争申請書などの書類作成・資料の収集
- 自賠責保険・共済紛争処理機構へ必要書類を送付
- 申請の受理通知・審査
- 紛争処理委員会からの結果通知
#1:紛争申請書などの書類作成・資料の収集
紛争処理機構への審査の申請にあたっては、紛争申請書などの書類を作成し、指定された送付資料とともに提出することになります。
もっとも、紛争処理機構は、自賠責保険会社・共済組合の結論の適確性を判断することから、新たな追加資料を収集し提出しても、審査対象にはなりません。
あくまで、「すでに行った自賠責保険会社・共済の判断が正しいのか」という点のみを判断することになります。
そのため、新たな追加資料の入手可能性がある場合は、紛争処理機構への申立てではなく、異議申立手続を利用すべきです。
#2:自賠責保険・共済紛争処理機構へ必要書類を送付
申請書を紛争処理機構の事務所へ送付します。
#3:申請の受理通知・審査
紛争処理機構は、申請書を受け付けた後、保険会社等から資料を取り付けたうえで、紛争処理の受理の可否判断を行います。
そして、調停の対象と判断されれば、申請者に受理通知が送られます。
紛争処理委員会が申請書類等を基に審査・調停を行います。
#4:紛争処理委員会からの結果通知
調停結果は、書面にて申請者等の当事者に通知されます。
(3)訴訟を提起する
自賠責保険・共済紛争処理機構の調停結果にも納得できない場合、同機構への再度の申立てはできないため、加害者や保険会社を相手に訴訟を起こすことになります。
訴訟提起前に出された自賠責保険・共済紛争処理機構等の等級認定の判断は、裁判所を拘束しないため、非該当結果を覆す可能性が残されています。
もっとも、裁判官は医療の専門家ではありません。
そのため、自賠責等の判断を重視する傾向があり、訴訟で結果を覆すのは簡単なことではありません。
訴訟提起によって有利になるか否かは専門的判断になりますので、弁護士にご相談ください。
3.後遺障害等級認定の非該当結果に対して異議申立てなどを行う際のポイント
(1)弁護士へ相談する
異議申立等を行うには、まず、後遺障害等級認定の非該当結果の原因を分析することが大切です。
しかし、身体的にも精神的にも困難な状態にある被害者にとって、非該当結果の原因の分析をおひとりで続けるには負担が重すぎる面があるといえます。
そもそも認定基準が不明確ですから、健康な人であっても、非該当結果の原因を分析することは極めて困難です。
そこで、異議申立等をご検討されている方には、弁護士がお手伝いさせていただきます。
個々人の後遺症の内容に応じ、後遺障害等級の認定を受けるためのポイントを押さえているかを弁護士が検討します。
弁護士法人みずきは、交通事故の無料相談を承っておりますので、是非ご相談ください。
(2)提出書類に不備・不十分があれば新たに補う
今一度、後遺障害等級認定の申請時に提出された資料を見返して、提出書類に改善する余地がないかを検討してみましょう。
しかし、何が不十分なのか、どこに不備があるのかを補うことは極めて難しい作業です。
また、どのような資料でこれらをカバーできるのかの検討をつけることも、一般的に困難といえるでしょう。
このような点においても、弁護士が代わりに検討することにより、異議申立て等のお手伝いすることができます。
(3)必要な検査を受ける
後遺障害等級が認定されるには、客観的証拠により、ご自身に残存する後遺障害を証明する必要があります。
すでに必要な検査は受けたのか、ご自身が自覚している症状を裏付けるための検査は全て行ったのか、主治医とお話になることがあるかもしれません。
しかし、主治医は臨床上診断に必要な情報を得るために医学的な検査をしますが、賠償に必要な情報を得るためには、より詳細な医学的検査をする必要がある場合があります。
そのため、後遺障害等級認定を受けるために、どのような医学的検査が有効、必要かを知るためには、弁護士にご相談になることが近道です。
まとめ
本記事では、後遺障害等級の認定結果が非該当になった場合に考えられる原因や対処法などをご説明しました。
交通事故において、後遺障害等級が認定されることで慰謝料の金額等が大きく変動します。
そのため、後遺障害等級の認定を受けられず非該当になった場合には、一度弁護士にご相談することをお勧めします。
弁護士法人みずきは、交通事故の無料相談を承っております。
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