交通事故の慰謝料はいつ受け取れる?支払いが示談後となる理由や早く受け取るための方法をご紹介

執筆者 野沢 大樹 弁護士

所属 栃木県弁護士会

私は、法律とは、人と人との間の紛争、個人に生じた問題を解決するために作られたツールの一つだと考えます。法律を使って紛争や問題を解決するお手伝いをさせていただければと思いますので、ぜひご相談ください。

「交通事故の加害者からの慰謝料はいつもらえるの?」
「交通事故の慰謝料をできるだけ早く受け取るための方法はあるの?」

突然の交通事故に遭い、加害者に請求した治療費や慰謝料を受け取れるタイミングを知りたい方も多いのではないでしょうか。

交通事故の慰謝料を含む示談金が支払われるのは、治療終了後に示談が成立してから1〜2週間後が一般的です。

本記事では、交通事故の慰謝料が支払われる時期のほか、示談が成立するまでの期間、慰謝料の支払いが示談後となる原因と対処法、できるだけ早く慰謝料を受け取るための方法をご紹介します。

1.交通事故の慰謝料が支払われるタイミング

休業損害を自賠責保険に請求できるのか

交通事故の慰謝料は、一般的に加害者との示談成立から1〜2週間経ってから支払われます。

交通事故の慰謝料が支払われるタイミングと示談が成立するまでの期間についてご説明します。

(1)示談成立後

交通事故の慰謝料などの示談金は、加害者側との示談が成立してから1~2週間後となることが一般的です。

交通事故における慰謝料を受け取るためには、示談書の内容を確認した上で署名、捺印をし相手側の保険会社へ返送する必要があります。

示談書は、承諾書、免責証書という名称となっていることもあります。

保険会社がこの示談書を確認した時点で、正式に示談の手続が完了したことになります。

保険会社は、示談書を確認した後、支払いの手続を行い、指定の口座へ慰謝料を含む示談金が入金されます。

ですので基本的には、示談書が保険会社に届いてから1~2週間後に示談金が支払われるのです。

示談書を返送してから1~2週間経っても保険会社から慰謝料の支払いが確認できない場合は、一度保険会社へお問い合わせください。

(2)示談が成立するまでの期間

交通事故の慰謝料が支払われるのは、加害者側との示談が成立してから1~2週間後になるとご説明しました。

交通事故の示談交渉を開始してから示談が成立するまでの期間は、争点が金額のみで事実関係に争いがない場合、およそ1か月程度です。

しかし、争点が事実関係にあったり、ほかにも争点が存在したりする場合は、交渉が長引く可能性が高くなります。

交通事故における示談交渉は通常、症状が治癒した時もしくは症状固定となり後遺障害等級の認定結果が出た時から開始されます。

症状固定とは、それ以上の治療を続けても症状の改善が見込まれない状態を指し、医師の診断を参考にして判断します。

交通事故で負った怪我が治癒と診断されるまでの目安は、以下のとおりです。

怪我 期間
打撲 1か月
むちうち 3か月
骨折 6か月

なお、上記の期間はあくまで目安であり、症状の程度によってはさらに長期化することもあります

また、後遺障害等級認定を受ける際は、症状固定までに6か月以上の期間を要することが一般的です。

どれくらいの期間治療を続けるべきかどうか、できるだけ早く慰謝料を受け取ることを優先するのか、それとも後遺障害等級認定を受けるために治療を続けるかどうかなどを判断するのは専門的な判断が必要になります。

適切な期間治療を受けるためにも、交通事故の対応について経験のある弁護士にご相談いただくことをおすすめします。

2.示談成立や慰謝料の支払いが遅れるケースと対処法

後遺障害等級の認定の流れとは

交通事故において示談成立や慰謝料の支払が遅れるケースとその対処法についてご説明します。

(1)加害者が任意保険会社に加入していない

交通事故の加害者が任意保険会社へ加入していない場合、示談成立や慰謝料の支払いを受けるまでに時間がかかる可能性があります。

自動車の運転手は、自賠責保険への加入が強制されていますが、任意保険は強制ではないため未加入であるケースがあります。

自賠責保険は被害者に対する最低限の補償を確保しているものであるため、怪我そのものに対する保険金や、後遺障害に対する保険金の金額に上限があります。

そのため、加害者が任意保険に未加入の場合、自賠責保険の上限を超える賠償を求めるときは、加害者本人に請求することになります。

しかし、加害者が任意保険に未加入である場合、まとまったお金がない、そもそも賠償をする気がないなどの理由で示談交渉が思うように進まないケースがあります。

こうなると、訴訟を提起して判決を取得した上で、強制執行をするといった手段が必要になり、慰謝料を受け取るまでに時間がかかってしまうのです。

加害者が任意保険に加入していない場合、弁護士に対応をお任せいただくことで、被害者一人で行うよりも、上記のような手続を迅速に進めることができるようになります。

(2)怪我の治療が長引いている

被害者様自身の怪我の治療が長引いている場合は、示談交渉の開始が遅くなり、必然的に慰謝料を受け取るタイミングも遅くなる可能性があります。

交通事故における示談交渉は、症状が治癒もしくは症状固定と判断され治療が終了した時点から行うことができます。

これは、上記の時点まで、治療費の金額や、慰謝料算定の基礎となる治療期間などが確定せず、損害額自体も確定させることができないためです。

そのため、治療中は、示談交渉を開始することができないのです。

事故後は交通事故による怪我の治療に専念していただくことが最も重要ですので、焦らないことが大切です。

また、もし相手側の保険会社から治療費の打ち切りを打診された場合は、必ず主治医にご相談ください。

安易に打ち切りに承諾してしまうと、本来受け取れるはずの慰謝料を受け取れなくなる可能性がありますし、何より適切な怪我の治療を受けられなくなってしまうことになります。

(3)後遺障害等級認定の結果に納得がいかない

後遺障害等級認定の結果に納得がいかず、異議申立てをする場合も、示談交渉が開始されず慰謝料の支払いが遅くなる可能性があります。

後遺障害等級の認定に対しては異議申立てを行い、審査のやり直しを求めることができます。

異議申立てのためには、医師の意見書などの追加の資料を準備する必要がありますし、異議申立て後の審査にも2~3か月の時間が必要になります。

後遺障害等級の認定結果が確定しなければ後遺障害部分の損害の有無が確定せず、損害額全体が確定しません。

そのため、この場合も損害全体についての示談交渉を開始することができませんので、示談成立が遅れる原因になります。

ただし、このような場合は、後遺障害部分を除いた怪我の部分についてのみ先行して示談をすることは可能です。

納得のいくまで後遺障害等級の認定手続を進めつつ、示談交渉を行うのは負担が大きいものになります。

後遺障害等級の認定結果に納得がいかず異議申立てをお考えの際は、一度弁護士にご相談ください。

3.交通事故における慰謝料を早く受け取るには

自賠責保険に請求する方法

交通事故における慰謝料をできるだけ早く受け取るために、4つの方法をご紹介します。

(1)弁護士に相談する

交通事故の慰謝料を含む示談金を早く受け取るためには、交通事故の対応に精通している弁護士に相談することが一つの方法です。

ここまでにご説明した交通事故の示談成立や慰謝料の支払いが遅れる原因については、専門家である弁護士にご相談いただくことで解決できる可能性があります。

例えば、後遺障害等級の認定申請の段階では、後遺障害診断書を医師に書いてもらう必要があります。

しかし医師は医学的専門家であっても交通事故については詳しくない場合が多く、後遺障害等級認定のために被害者にとって有用な情報が何かを把握できていないケースがあります。

このような場合に弁護士にご相談いただくことで、後遺障害等級申請で必要な客観的証拠を揃えることができ、異議申立ての必要なく認定を受けられる場合があります。

また、加害者側との示談交渉において相手側の保険会社は、専門用語などを用いて交渉を進めることがあります。

このような場合でも、弁護士は保険会社と対等に交渉を進められるため、示談交渉自体にかかる時間を短縮することができます。

交通事故における慰謝料を早く受け取るためには、交通事故の対応に精通している弁護士にご相談いただくことをおすすめします。

(2)治療費を一括対応してもらう

治療費など一部の損害については、加害者側の保険会社に一括対応してもらうことによりそもそも負担をしないようにすることができます。

一般的に交通事故では、加害者が任意保険に加入している場合、任意保険会社が被害者の通院する病院に治療費を直接支払います。

この対応を、一括対応といいます。

一括対応をしてもらうことで、交通事故の怪我の治療にかかる費用を心配することなく治療そのものに専念することができます。

ただし、任意保険会社の一括対応は法令で義務付けられているものではなく、あくまでサービスの一つであるため一括対応を断られるケースもあります。

ですので、治療費を一括対応してもらうためにはまず、加害者側の任意保険会社にお問い合わせすることをおすすめします。

(3)内払金請求を行う

任意保険会社によっては、治療費以外の損害賠償金を示談前に支払ってもらうことができます。

このような賠償金の先払いを、「内払い」といいます。

内払い交渉により、慰謝料についても示談前に支払いを受けられる可能性があります。

ただし、内払いを受けた場合、当然ながらその金額は、最終的な示談金額から既払い金として差し引かれることになります。

通院交通費や休業損害などの項目に関しては、任意保険会社が内払いに応じる可能性が高いものです。

この場合、通院交通費であれば通院交通費明細書(書式は通常の場合保険会社が用意してくれます。)領収書などを、休業損害を請求する場合は休業損害証明書や前年度源泉徴収票などの書類を保険会社に提出することになります。

(4)自賠責保険の仮渡金制度を利用する

交通事故による損害額が確定する前でも、加害者側の自賠責保険会社に対して仮渡金を請求できる制度もあります。

仮渡金制度で支払われる金額は、入院の有無や怪我の程度などによって異なり、40万円・20万円・5万円を受け取ることができます。

例えば入院14日以上かつ治療期間が30日以上必要な場合や足などの骨折の場合は40万円、腕などの骨折の場合は20万円、治療期間が11日以上必要な場合は5万円などと条件が定められています。

ただし、仮渡金は賠償金の一部の先払いですので、仮渡金を受け取って損害賠償額が確定した場合は、そこから仮渡分が差し引かれます。

また、自賠責保険会社に仮渡金請求を行えるのは一回のみという点に注意が必要です。

まとめ

交通事故における慰謝料は、基本的に加害者側と被害者側の示談が成立してから1~2週間後に支払われます。

示談が成立するためには、症状が治癒か症状固定となり治療が終了していることが必要になります。

場合によっては示談成立や慰謝料の支払の時期が遅くなる可能性もあります。

本記事では、交通事故の慰謝料を早く受け取る方法や注意点をご説明しました。

交通事故の対応に関して疑問がございましたら、弁護士法人みずきへ一度ご相談ください。

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