交通事故で頚椎を骨折したらどうなる?メカニズムや後遺障害等級について解説
「交通事故で頚椎を骨折した場合の後遺障害等級はどうなる?」
「適切な賠償を受けるためのポイントは?」
交通事故に遭い、頚椎を骨折した方の中には、このような疑問をお持ちの方もいるかと思います。
頚椎は首の部分の骨であることから、頚椎を骨折すると様々な後遺症が残る可能性があります。
本記事では、交通事故を原因とする頚椎骨折について、メカニズムや認定され得る後遺障害等級などについてご説明します。
1.交通事故による頚椎骨折の概要
頚椎骨折とは、首の部分にある頚椎を骨折した状態をいいます。
頚椎損傷と言うこともあります。
頚椎を骨折することで、頚部に強い痛みが発生する他、頚椎の中を通っている脊髄に損傷が生じて手足に障害が出たり、骨折が元通りに癒合せずに変形が残ったりすることもあります。
以下では、頚椎骨折の分類や頚椎骨折が生じやすい事故態様について解説します。
(1)頚椎骨折とは
頚椎は首の部分の骨であり、7つの椎骨から構成されています。
このうち、上の2つの椎骨はそれぞれ環椎、軸椎と呼ばれており、首の可動域を機能させる重要な役割を担っています。
また、頚椎骨折には、骨折が生じる部分によって、以下のような分類があります。
- 椎体骨折
- 突起骨折
順にご紹介します。
#1:椎体骨折
椎体とは、頚椎を構成する円柱状の骨をいいます。
語弊を恐れずに言えば、頚椎の本体部分です。
事故によって強い衝撃が椎体に加わることで、腹側あるいは背側にヒビや圧壊が生じた状態をいい、骨折の態様によって圧迫骨折や破裂骨折などとも呼ばれます。
どのような骨折が生じるかは、事故の衝撃によって決まります。
なお、交通事故における圧迫骨折の症状や後遺障害等級については、以下の記事で詳しく取り上げていますので、合わせてご覧ください。
#2:突起骨折
軸椎や椎体にある突起状の骨に骨折が生じた状態をいいます。
軸椎にある歯突起は、上の骨の環椎の窪みと合わさって、首の回旋の軸となる骨で、主に首の可動域に関する機能を担います。
なお、椎体の背側に伸びる棘突起、両側に伸びる横突起については、頚椎の保持および可動域の機能を直接支えているわけではありません。
このように、同じ突起部分に関する骨折でも、歯突起と横突起・棘突起とでは果たす機能が異なるため、後述する後遺障害等級でも認定される等級に違いがあります。
(2)頚椎骨折が生じやすい事故態様
頚椎に骨折が生じる原因としては、首の骨に強い衝撃が加わることが挙げられます。
そのため、質量の大きい大型車両との衝突事故や、直接身体が投げ出されてしまうバイクや自転車乗車中の事故などによって生じる場合が多いです。
なお、頚椎骨折が生じるような激しい事故態様の場合には、頚椎の中を通る脊髄を損傷することがあります。
脊髄を損傷してしまうと、上肢や下肢に麻痺や感覚障害等が生じる可能性もあるため、注意が必要です。
2.認定される可能性がある後遺障害等級
頚椎骨折による症状によって認定される可能性がある後遺障害等級について、ご説明します。
骨折の箇所や態様によって、以下のように分類ができます。
- 変形障害
- 運動障害
- 神経障害
症状や認定の基準などについて、把握しておきましょう。
(1)変形障害
骨折は多くの場合、時間経過によってくっつきます。
しかし、圧迫骨折等の場合には、元通りに治るわけではありません。
圧迫骨折は、円柱形の椎体がつぶされるように骨折してしまうことを言います。
この場合、骨が元通りに膨らむことはないため、どうしても本来の骨の形からすると変形が残ってしまいます。
このような場合、変形障害として後遺障害が認められる可能性があります。
頚椎骨折による変形障害で認定される可能性がある等級は、以下のとおりです。
後遺障害等級 | 認定基準 |
6級5号 | 脊柱に著しい変形を残すもの |
8級相当 | 脊柱に中程度の変形を残すもの |
11級7号 | 脊柱に変形を残すもの |
頚椎骨折により、変形障害が生じた場合には、以下の事情を考慮して具体的な後遺障害等級の認定が行われます。
- 後彎(背骨が後ろに曲がっている状態)の程度
- 骨折の状態をMRIやCT、レントゲン検査などによって確認できるか否か
- コブ法による側彎(背骨が横に曲がっている状態)の程度
そのため、事故直後からしっかりと画像検査をうけることが重要になります。
(2)運動障害
運動障害は、頚椎骨折によって首などの可動域に制限が生じた状態をいいます。
椎体骨折の他には、首の可動の軸として機能する歯突起骨折が生じた場合にも運動障害が残る可能性が高くなります。
頚椎骨折による運動障害で認定される可能性がある等級は、以下のとおりです。
後遺障害等級 | 認定基準 |
6級5号 | 脊柱に著しい運動障害を残すもの |
8級相当 | 脊柱に中程度の変形を残すもの |
8級2号 | 脊柱に運動障害を残すもの |
これらの等級の認定を受けるためには、首の可動域などの運動制限が生じているという事実に加えて、それが骨折に由来することがレントゲンなどの画像検査の結果から明らかになっていることが必要です。
そのため、むちうちによる炎症や頚部の筋肉の硬直による運動障害では、これらの等級の認定を受けることができませんので、注意が必要です。
(3)神経障害
頚椎の骨折によって神経を損傷したり、骨折した骨が変形癒合したことによって慢性的な痛みや痺れが生じた場合、神経障害として後遺障害等級に認定される可能性があります。
以下では、頚椎の骨折による頚髄損傷を原因とするものと、突起骨折を原因とするものに分類して認定されうる後遺障害等級をご紹介します。
#1:頚髄損傷
頚髄とは、脳から身体全体に伸びる神経の束である脊髄のうち、首の部分をいいます。
いわゆる「中枢神経」と言われる大事な神経であり、これが損傷した場合基本的には回復は難しいとされています。
頚髄は、頚椎によってカバーされていますが、頚椎が骨折するほどの衝撃が加わった場合、その中を通っている頚髄も損傷してしまうケースがあります。
頚椎骨折による頚髄損傷で認定される可能性がある後遺障害等級は、以下のとおりです。
後遺障害等級 | 認定基準 |
1級1号
(要介護等級) |
神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの |
2級1号
(要介護等級) |
神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの |
3級3号 | 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの |
5級2号 | 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に簡易な労務以外の労務に服することができないもの |
7級4号 | 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、簡易な労務以外の労務に服することができないもの |
9級10号 | 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの |
12級13号 | 局部に頑固な神経症状を残すもの |
頚椎骨折のみならず、損傷が頚髄にまで及ぶことで、重篤な後遺症が残るリスクがあります。
なお、脊髄損傷による後遺障害等級の認定基準などについては、以下で詳しく述べていますので、合わせてご確認ください。
#2:突起骨折
突起骨折の中でも、棘突起あるいは横突起に骨折が生じることで、痛みなどの症状が残る場合があります。
具体的には、以下の後遺障害等級に認定される可能性があります。
後遺障害等級 | 認定基準 |
12級13号 | 局部に頑固な神経症状を残すもの |
14級9号 | 局部に神経症状を残すもの |
棘突起および横突起は、首や関節を支える機能を持たないため、この部分に骨折が生じても変形障害や運動障害の等級が認定されることはありません。
もっとも、棘突起あるいは横突起を骨折した場合、骨折片が元通りにくっつかない等を理由に、痛み等が残存してしまう場合があります。
このような場合には、末梢神経障害として、12級13号または14級9号が認められる可能性があります。
3.頚椎骨折で適切な賠償を受けるためのポイント
交通事故によって頚椎骨折が生じた場合、以下のポイントを押さえることで、適切な賠償金を受け取ることにつながります。
1.適切な治療・検査を受ける
2.後遺症がある場合には後遺障害等級の認定申請を行う
3.加害者側が提示する示談金額を確認する
順にご説明します。
(1)適切な治療・検査を受ける
交通事故によって頚椎骨折が生じた場合には、適切な治療や検査を受けることが何よりも大切です。
特に治療と合わせて適切な検査を受けることも後遺障害等級の認定との関係では重要な意味を持ちます。
適切な等級認定を受けるためには、頚椎骨折が画像所見上で明らかであることが必要です。
そのため、レントゲン検査だけでなく、必要に応じてMRIやCT検査を受けることが望ましいです。
また、頚椎骨折にとどまらず、頚髄にまで損傷が到達している場合には、MRI検査を受けることが必須です。
このように、事故直後から適切な治療や検査を受けることで、症状を和らげるだけでなく、後遺症が残った場合の後遺障害等級の認定申請に備えることができます。
(2)後遺症がある場合には後遺障害等級の認定申請を行う
治療を継続した後には、完治または症状固定の診断を受けます。
症状固定となった後にも何らかの障害が残っている場合には、後遺障害等級の認定申請を行いましょう。
後遺障害等級の認定を受けることで、等級に応じた後遺障害慰謝料と逸失利益を受け取ることができます。
例えば、変形障害と運動障害に関する後遺障害慰謝料の相場は以下のとおりです。
後遺障害等級 | 自賠責基準 | 裁判所(弁護士)基準 |
6級5号 | 512万円(498万円) | 1180万円 |
8級2号 | 331万円(324万円) | 830万円 |
11級7号 | 136万円(135万円) | 420万円 |
※()内は2020年3月31日以前に発生した交通事故の場合
認定される等級に応じて後遺障害慰謝料の金額は変動するため、適切な等級に認定されることが重要です。
もっとも、等級認定のために有効な証拠や説明を行うことは、交通事故の問題に精通している弁護士でないと難しい場合があります。
そのため、後遺障害等級の認定申請を行う場合には、まずは弁護士に相談することがおすすめです。
(3)加害者側が提示する示談金額を確認する
示談交渉を行う際には、加害者側が提示する示談書の内容を確認することが大切です。
特に示談金には様々な損害項目が含まれ、項目ごとに算定方法も異なります。
加害者側の保険会社は、損害額を低く見積もって交渉を行う場合が多いため、提示された金額が適切であるかどうかを必ず見極める必要があります。
損害額の算定方法や示談交渉に少しでも不安がある場合には、弁護士に交渉を依頼することがおすすめです。
弁護士は法的交渉の専門家であるため、示談交渉の時点から最も高額な算定基準である裁判所(弁護士)基準を用いて交渉を行うことができます。
そのため、弁護士に示談交渉を依頼することで、高額かつ適切な賠償を得られる可能性が高まります。
まとめ
本記事では、交通事故における頚椎骨折の態様や認定される可能性がある後遺障害等級、適切な賠償を受けるためのポイントについて解説しました。
頚椎は頭部や体幹を支える重要な部位であるため、この部分に骨折が生じると、様々な後遺症が残る可能性があります。
交通事故によって頚椎に骨折が生じた場合には、なるべく早期に弁護士へ相談することをおすすめします。
弁護士法人みずきでは、これまでに交通事故による後遺障害等級の認定手続や示談交渉に対応してきました。
経験豊富な弁護士が丁寧にお話を伺いますので、交通事故による怪我や法的手続にお悩みの方はお気軽にご相談ください。
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