過失割合の計算方法とは?適切に計算するポイント

執筆者 実成 圭司 弁護士

所属 第二東京弁護士会

皆さまのご相談内容を丁寧にお聞きすることが、より的確な法的サポートにつながります。会話を重ねながら、問題解決に向けて前進しましょう。

「過失割合はどうやって計算するのか」
「適切な過失割合にするために何に気をつけたらいいのか」

交通事故の被害者の中には、過失割合をどうやって計算するのか気になっている方もいるのではないでしょうか。

本記事では、過失割合の計算方法や計算のポイントについてご紹介します。

1.過失割合の計算方法

交通事故における過失割合とは、各々の当事者が、その事故についてどの程度の責任を負うのかを示す割合のことをいいます。

自分の過失割合が大きければ大きいほど責任が重いことになります。

この過失割合を計算する流れについてご紹介します。

主な流れは以下のとおりです。

過失割合を計算する流れ

  1. 事故の態様を整理する
  2. 事故の類型を確認する
  3. 基本過失割合を出す
  4. 修正要素を加味する

実際の過失割合は様々な要素を加味して判断されますので、計算した結果がそのまま反映されるわけではありませんが、どのようにして計算されるのか一通りチェックしておきましょう。

(1)事故の態様を整理する

まずは、事故の態様を整理します。

過失割合を判断するためには、被害者と加害者がどこでどのように衝突したのかなどの情報が必要です。

事故の態様の例として以下のようなものがあります。

・横断歩行者と車の事故
・交差点における直進車同士の出合頭の事故
・道路外から出入りする車と直進車の事故
・同一方向に進行する車両同士の事故
・交差点における左折四輪車と直進自転車との事故

これらの例のようにどのような事故態様なのかを確認します。

この他、事故現場の信号や一時停止線の有無、道路の幅員の違いや進入方向等も、確認しておきます。

(2)事故の類型を確認する

次に、事故の類型を確認します。

事故の類型とは、簡単に言うと交通事故の当事者間の関係のことです。

事故類型の確認は、別冊判例タイムズ第38号「民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準」全訂5版という書籍を参照します。

この書籍は、通称「判例タイムズ」「判タ」などと呼ばれており、裁判でも参考にされている書籍です。

この書籍を用いて、ご自身の事故態様がどの類型にあてはまるのかを確認します。

(3)基本過失割合を出す

判例タイムズでは、類型ごとに「基本過失割合」というのが記載されています。

この基本過失割合は、過去に蓄積された裁判例を分析した結果、類型化された過失割合で、適切な過失を検討するにあたっての基礎となります。

たとえば、以下のケースの基本過失割合は10対0です。

過失割合10:0のケース

・交差点における直進車同士の事故で、赤信号側:青信号側
・対向車同士の事故で、センターオーバーした車:センターオーバーしていない車
・同一進行方向の事故で、停止中の車に後続車が追突した場合の、追突した車:追突された車
・駐車場内の事故で、駐車スペースに駐車している車に他車が衝突した場合の、衝突した車:駐車している車

以下の記事でも過失割合の代表例をまとめていますので、そちらも参考にしてください。

自動車事故の過失割合とは?過失割合に納得がいかないときの対処法

(4)修正要素を加味する

基本過失割合がわかったら、修正要素に該当するかを調べます。

修正要素とは、最終的な過失割合を算定するために加味される、個別の事故態様に応じた変動要素のことをいいます。

たとえば、次のような要素が修正要素になります。

修正要素されるケース

・速度違反
・ウィンカーなし
・歩行者が児童、高齢者
・脇見運転

また、被害者と加害者の事故直前の動きも修正要素になることがあります。

たとえば、以下のような動きはドライブレコーダー等の映像を見ながら確認しましょう。

・信号無視
・優先道路
・一時停止・徐行
・センターラインオーバー
・右折・左折のタイミング

該当する修正要素がある場合、対応する割合を加除します。

たとえば、駐停車車両に対する追突事故では、追突車VS被追突車の基本過失割合は、1000:0ですが、被追突者が駐車禁止場所に駐停車していた場合(-10%)、過失割合は90:10となります。

【計算式】
基本過失割合:追突者:被追突者=100%:0%
修正要素  :-10%
追突車   :100%-10%=90%
被追突車  :0%+10%=10%

なお、「著しい」などの抽象的表現が使われている修正要素もあります。

該当しうるか過去の事例に基づいて判断しなければならないケースもありますので、詳しくは弁護士に相談することをおすすめします。

2.過失割合における損害賠償金の計算方法

過失割合における損害賠償金の計算方法についてご紹介します。

被害者が無過失の場合は、損害額を全額請求することができますが、被害者にも過失がある場合は、過失相殺が行われます。

これは、以下のような例のことをいいます。

交通事故によって、被害者に100万円の損害が生じていたとします。そして、被害者に30%の過失割合が認められるとします。

このとき、加害者の過失割合は、70%になります(100%-30%)。

この場合、加害者は、被害者に対し、70万円の損害を賠償しなければなりません。

すなわち、100万円×70%=70万円という計算方法です。

3.適切に過失割合を計算するコツ

これまでご説明してきたように、過失割合がどの程度になるかによって、賠償金の金額は大きく変わることから、適切な過失割合を計算することが重要です。

適切な過失割合かを判断するためには客観的な資料が役に立ちます。

たとえば、ドライブレコーダーや監視カメラの映像、事故直後の写真、目撃者の証言のメモなどがあります。

特に有益なのはドライブレコーダーですが、ドライブレコーダーの映像は保存期間が短いため、データが消える前に、別の記録媒体に移すなどして保存しておくことをおすすめします。

ドライブレコーダーや監視カメラの映像などがない場合は、実況見分調書のような刑事記録も客観的な資料となります。

過失割合の判断は複雑になる場合が多いため、弁護士に相談することをおすすめします。

まとめ

過失割合は、事故の当事者や状況によって大きく変わるので、正確に計算するためには、事故の情報を正確に収集する必要があります。

特に基本過失割合から修正要素を加味して計算する段階が重要です。

過失割合によって請求できる損害賠償金も変わりますので、過失割合は示談交渉においてとても重要な要素になります。

弁護士法人みずきでは、過失割合に関するご相談も無料で受け付けておりますので、過失割合や賠償金の計算等でお困りの方はお気軽にご相談ください。

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執筆者 実成 圭司 弁護士

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