自転車事故の場合に後遺障害等級の認定は受けられる?手続や注意点を解説
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「自転車事故に遭い、後遺症を負ってしまった」
「自転車事故の後遺症でも後遺障害等級の申請はできるの?」
自転車事故によって後遺症を負ってしまった方の中には、このような不安や悩みをお持ちの方もいると思います。
自転車には自賠責保険がないため、自動車事故のように中立な第三者機関がありません。
そのため、自転車事故で後遺障害の主張をする場合は、異なる手続や注意点があります。
本記事では、自転車事故による後遺障害等級の認定の流れやポイントについてご説明します。
1.自転車事故における後遺障害等級の判断までの流れ
自転車事故によって後遺症を負った場合でも、自動車事故と同様に「後遺障害」という考え方はあります。
そもそも、後遺障害とは、事故における賠償金を算定する上での目安となるものなので、加害者が自動車であっても自転車であっても考え方は変わりません。
後遺障害が残っていると判断されれば、その等級に応じた後遺障害慰謝料や逸失利益を受け取ることができます。
以下では、事故から後遺障害等級の認定申請までの流れを順にご説明します。
(1)事故の発生
自転車事故に遭った場合も、すぐに警察に通報しましょう。
また、自動車に比べれば、速度や質量が小さいため、軽傷であることが多いですが、怪我を負っているようであれば早めに通院することが大切です。
医療機関での治療が遅れてしまうと、交通事故と怪我の因果関係が立証できないリスクがあり、後述する後遺障害等級の認定申請に際して不利となります。
とくに、むちうちなどの症状は事故から時間が経過して現れる場合があります。
そのため、軽傷だから大丈夫と自己判断せずに、すぐに医療機関で治療を受けることがおすすめです。
(2)医療機関での治療の継続
診断を受けたら、医師の指示に従って通院を続けましょう。
自己判断で治療を中断したり、通院頻度が低いと症状が悪化したり、後遺障害の主張が認められないなどのリスクがあります。
必要な治療を継続し、まずは症状の改善に努めることが重要です。
(3)症状固定の診断
治療を継続していくと、最終的には完治あるいは症状固定の判断を受けることになります。
症状固定とは、これ以上治療を継続しても、症状の改善が見込めない状態のことを言います。
一般的に必要と考えられる期間・頻度の治療を行ってもなお症状が残存している場合、症状固定であると判断される可能性が高いです。
症状固定時に、後遺障害等級に該当するような症状が残存している場合には、後遺障害診断書という書類を作成してもらいましょう。
もっとも、症状固定の時期や後遺障害診断書の内容については、専門的な判断が必要になります。
重い症状が残っている場合には、これらの時期や内容について弁護士に相談・確認することをおすすめします。
(4)後遺障害等級の検討・主張
医師に作成してもらった後遺障害診断書に基づいて、後遺障害等級の判断をしていくことになります。
自動車事故の場合には、第三者機関である自賠責保険が後遺障害等級の判断を行いますが、自転車事故にはそのような機関がありません。
そのため、自転車事故では多くの場合、適切な賠償金を得るためには、自身で後遺障害等級に該当することを論理的に主張していく必要があります。
詳しくは、以下で見ていきましょう。
2.自転車事故に特有の事情
自転車事故は、自動車事故の場合とは異なる事情があります。
具体的には、後遺障害等級の判断に関して、以下のような違いが見られます。
1.申請すべき機関の不存在
2.認定結果に不服がある場合の対処法
自転車事故で後遺障害等級の認定申請を行う際には、以下の2点について押さえておきましょう。
(1)申請すべき機関の不存在
自転車には自賠責保険がありませんので、中立の立場で後遺障害等級該当性を判断してくれる機関がありません。
そのため、加害者側に対して、自身が後遺障害等級に該当することを主張、立証していく必要があります。
そうした主張をしていく際に活用できる方法の代表例が以下の3つです。
1.加害者の自転車保険
2.人身傷害保険
3.労災保険
順にご紹介します。
#1:加害者の自転車保険
加害者が自転車保険に加入している場合には、同保険会社の中に後遺障害等級の検討をする部署が存在することがほとんどです。
そのため、必要書類を加害者側の保険会社に渡すことで、後遺障害に該当するか否かを判断してもらうことができます。
また、自賠責保険の審査機関である損害保険料率算出機構に対して後遺障害の該当性判断をしてもらう後遺障害等級サポートサービスという制度もあります。
これは、保険会社しか利用することができないので、被害者が直接お願いをすることはできません。
加害者側の保険会社に審査してもらうのは、比較的労力が要らず、また審査結果をそのまま反映した示談交渉に進めるというメリットがありますが、相手方という立場である以上、適切な検討や審査が行われているかという点で不安は残ります。
#2:人身傷害保険
被害者が人身傷害保険に加入している場合には、自転車事故にも利用できる可能性があります。
人身傷害保険は、保険の加入者(被害者)が怪我を負った際に支払われる保険を指します。
契約内容によってその適用範囲は様々ですが、自動車事故以外の日常的な怪我に対しても利用できる内容のものも珍しくありません。
人身傷害保険を利用した場合の大きなメリットは、上記の損害保険料率算出機構に対する後遺障害等級サポートサービスを利用できる可能性がある点です。
自賠責保険のように拘束力があるわけではありませんが、第三者機関による判断が出ていれば、示談交渉においてもその後遺障害等級を前提として賠償金を算定することができる可能性がとても高くなります。
他方で、単に自身の人身傷害保険が自社認定をしたような場合は、加害者側の保険会社においても審査を受けることとなり、両社の結論が合わないということもあり得ます。
そのような場合には、人身傷害保険における後遺障害等級が正しいという主張を具体的に行っていく必要が生じます。
#3:労災保険
自転車事故が仕事中や通勤中に生じたものであれば、労災保険を利用することができます。
そしてその場合には、労災保険における後遺障害等級の認定を申請することが考えられます。
労災保険は基本的には自賠責保険における後遺障害等級と同様の基準によって判断されるため、労災保険で認定された後遺障害等級を踏まえて加害者と示談交渉を行っていくことが可能です。
もっとも、労災保険は後遺障害等級審査において原則として全件面接がある等、被災労働者に寄り添った運用となっており、一般的には自賠責保険における審査よりも緩やかであると言われています。
そのため、加害者側からは、労災保険における等級は実際の賠償における後遺障害等級よりも高く認定されている等と反論されることもしばしばあります。
(2)認定結果に不服がある場合の対処法
上記のとおり、自転車事故の場合、自動車事故における自賠責保険の認定のように、加害者側を拘束するような第三者による認定手続はありません。
そのため、最終的には、加害者が被害者の主張する後遺障害等級を認めるか否かということになります。
例えば、労災保険においては14級が認められているとしても、加害者側がこれを認めずに示談金を提示してくるということもあり得ます。
この場合、賠償においても後遺障害14級が認められるということを、証拠をもって再度主張していく必要が生じます。
もっとも、あくまで交渉にすぎないため、どうしても話が平行線となる場合には、訴訟によって決着をつけなければならない可能性があります。
裁判になると、被害者は医師が作成した後遺障害診断書や意見書などを提出して、具体的に後遺障害等級の主張をしていくことになります。
また、この際にはレントゲンやMRI検査の画像所見も提出することで、症状や原因について客観的な証明・論証を進めていくことが重要です。
このような裁判における主張・立証には、専門知識だけでなく実務経験も必要となります。
証拠上、裁判になった場合に認められる余地がどの程度あるのか等、交通事故に精通した弁護士に事前に相談し、方針を検討することがおすすめです。
3.適切な等級認定を受けるためのポイント
自転車事故による症状で適切な後遺障害等級の認定を受けるためには、以下のポイントがあります。
1.医療機関での治療を中断しない
2.医師に症状を正確に伝える
3.後遺障害診断書の内容をチェックする
順にご説明します。
(1)医療機関での治療を中断しない
自己判断で治療を中断したり、通院をやめることはしないようにしましょう。
適切な期間・回数の治療をしていないと、「本来はもっと改善の見込みがあった」等とみなされ、後遺障害該当性の判断にマイナスな影響が生じます。
また、通院をしない期間と頻繁にする期間等が混在するのもあまり好ましくありません。
なお、むちうちなどの比較的軽い症状の場合には、加害者の保険会社から早期に治療費の一括支払対応を打ち切られるケースもあります。
そのような場合であっても、治療が必要な状況であれば、打ち切り後も治療を中断することがないようにしましょう。
(2)医師に症状を正確に伝える
少しでも痛みや痺れなどがある場合には、医師に症状を正確に伝えるようにしましょう。
事故直後からこれらの症状があるにも関わらず、医師に申告しないでいると、後遺障害診断書の自覚症状の項目にこうした症状が記載されません。
時間が経ってから症状を訴えても、事故との因果関係を立証するのが難しくなります。
このことは、後遺障害等級の審査の場面だけでなく、裁判で争われる場面でも不利にはたらく可能性があります。
そのため、事故直後から痛みや痺れなどの違和感は正確に伝えることが重要です。
(3)後遺障害診断書の内容をチェックする
後遺障害診断書の内容については、作成の後に必ず確認しておきましょう。
記載漏れなどがあると、適切な等級判断を受けられない可能性があります。
また、記載内容が自分の症状を的確に反映した表現となっているかも確認しましょう。
さらに、事故発生から症状固定に至った期間も重要です。
症状固定に至るまでの期間が極端に短いと、症状が軽いと判断されて、低い等級で認定が行われる場合や等級非該当とされてしまう場合があります。
そのため、医師の意見も聞きながら、適切なタイミングで症状固定の診断を受け、後遺障害診断書を作成してもらう必要があります。
なお、交通事故対応に精通した弁護士であれば、等級認定のために最適な症状固定時期や後遺障害診断書の書き方などを把握しています。
後遺障害診断書の作成を受ける前に、弁護士に相談することで、認定に有利なアドバイスやサポートを受けることができます。
まとめ
本記事では、自転車事故による後遺障害等級の判断を受けるまでの流れや自転車事故に特有の事情、適切な等級の認定を受けるためのポイントについて解説しました。
自転車には、自動車と異なり、自賠責保険がないため、自動車事故とは異なった手続や対応が必要です。
自転車事故による後遺障害等級の認定申請を検討される場合には、なるべく早期に弁護士へ相談することをおすすめします。
弁護士法人みずきでは、これまでに交通事故の問題に数多く対応してきました。
経験豊富な弁護士が丁寧にお話を伺いますので、自転車事故による後遺障害等級の申請手続などにお悩みの方はお気軽にご相談ください。
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