交通事故で後遺症が残った場合の自賠責の後遺障害等級の認定はどうする?

交通事故で後遺症が残ったら、自賠責の後遺障害等級の認定はどうする?

執筆者 実成 圭司 弁護士

所属 第二東京弁護士会

皆さまのご相談内容を丁寧にお聞きすることが、より的確な法的サポートにつながります。会話を重ねながら、問題解決に向けて前進しましょう。

「交通事故で後遺症が残ってしまい、後遺障害等級と自賠責基準での保険金額について知りたい」
「後遺障害等級の認定手続はどのような流れで行われるのか」

交通事故で負った怪我によっては、入通院を続けても後遺症が残る可能性があります。

その場合は、後遺障害等級の認定を受けることで、必要な保険金を受け取ることが可能になります。

本記事では、後遺障害等級と自賠責基準での保険金額について詳しくご説明します。

1.後遺障害等級と自賠責基準での保険金額

1.後遺障害等級と自賠責基準での保険金額とは

交通事故により後遺症が残った場合、その症状の程度によっては、加害者の自賠責保険から後遺障害慰謝料及び逸失利益を受け取ることができます。

もっとも、これらを受け取るためには、後遺障害の等級認定を受けなければなりません。

後遺障害の等級認定とは、被害者の後遺症が、自動車損害賠償法上の後遺障害の基準に当てはまると公式に認定されることをいい、この基準は1級から14級までの等級に分類されています(自動車損害賠償保険法施行令2条別表第一及び第二)。

等級認定を受けられる交通事故の後遺障害は、例えば以下のような症状です。

  • 高次脳機能障害
  • 外貌醜状​​
  • 上肢機能障害
  • 下肢機能障害
  • 脊椎変形

こうした後遺障害については、後遺障害等級の認定を受けることで、等級に応じた保険金を受け取ることができます。

以下は後遺障害等級と自賠責の後遺障害慰謝料の一覧表です。

自賠責基準の金額は2020年4月1日以降の事故に適用される一覧ですので、それ以前の事故については金額が異なります。

後遺障害等級 後遺障害慰謝料
1級・要介護 1650万円
2級・要介護 1203万円
1級 1150万円
2級 998万円
3級 861万円
4級 737万円
5級 618万円
6級 512万円
7級 419万円
8級 331万円
9級 249万円
10級 190万円
11級 136万円
12級 94万円
13級 57万円
14級 32万円

2.後遺障害等級の認定の流れ

後遺障害等級の認定の流れとは

後遺障害等級の認定を受けるためには、必要書類を用意して申請する必要があります。

申請すると、提出した書類をもとに後遺障害等級の該当性が審査されます。

具体的な後遺障害等級の認定の流れは以下になります。

  1. 症状固定になるまで治療を行う
  2. 後遺障害診断書を医師に作成してもらう
  3. 後遺障害等級認定の申請をする
  4. 認定結果を受け取る
  5. 認定結果に納得がいかない場合は異議申立てを行う

以下で詳しくご説明します。

(1)症状固定になるまで治療を行う

後遺障害等級の認定申請を行うためには、症状固定の診断を受ける必要があります。

症状固定とは、治療を続けてもそれ以上症状の改善が望めない状態をいい、この有無は医師が判断します。

参考までに、たとえば、頸椎捻挫や頚部挫傷等むち打ちと呼ばれる症状の場合は、治療開始からおおよそ半年程度で症状固定になるといわれています。

もっとも、それも個々のケースにより異なりますので、医師に判断を仰ぎましょう。

仮に相手方の保険会社が治療を打ち切るよう伝えてきたとしても、医師が治療を継続するように求めたのであれば、治療を打ち切らずに継続することが大切です。

その際には、健康保険などを利用しながら治療を継続することになります。

(2)後遺障害診断書を医師に作成してもらう

症状固定後、後遺障害等級の認定申請を行います。

この申請には、後遺障害診断書が必要です。

症状固定を判断した医師に、自賠責保険会社が用意する後遺障害診断書を渡して、作成の依頼をします。

後遺障害診断書には、自覚症状や、自覚症状から医師が判断した内容も記載され、これは等級認定の重要な判断資料になります。

そのため、痛みやしびれなどを感じている場合は、その旨を余さず全て伝える必要があります。

後遺障害等級認定を適切に受けるためには、医師への症状の伝え方や後遺障害診断書への記載方法について、ポイントを押さえることが大切です。

弁護士法人みずきは、後遺障害診断書の作成を依頼する前に、どのような点に注意して医師に依頼すれば良いかのアドバイスも行っています。

どうぞご相談ください。

また、以下の記事でも詳しく取り上げていますので、合わせてご確認ください。

後遺障害診断書を適切に完成させるコツ、注意点について弁護士が説明

(3)後遺障害等級認定の申請をする

後遺障害等級の申請には、2つの方法があります。

#1:事前認定

事前認定とは、交通事故の加害者の任意保険会社が必要書類を収集して、後遺障害等級の認定申請を自賠責保険会社に行う方法です。

被害者は、後遺障害診断書を加害者の任意保険会社に提出すればよく、この保険会社が他の必要書類をそろえるため、被害者の負担が少ない制度です。

しかし、保険会社が収集する書類の内容や、添付された画像等の資料がどのような内容なのかを被害者が知ることはできないため、不安が大きい制度ともいえます。

このように、事前認定には、被害者が後遺障害等級認定に有利な書類を取捨選択できないというデメリットがあります。

以下の記事も合わせてご覧ください。

後遺障害の事前認定とは?メリット・デメリットと主な流れについて解説

#2:被害者請求

被害者請求とは、被害者が必要書類を収集して、加害者の自賠責保険へ後遺障害等級の認定申請を行う方法です。

事前認定とは異なり、被害者側が必要な書類を一式整える必要があり、後遺障害診断書等の依頼に加えて、レントゲン画像やCT画像等の添付資料の取得も行う必要があります。

被害者自身が提出すべき資料に不足がないか確認しながら進められるため、事前認定のような不安がありません。

ただし、必要書類を全部集めるのは大きな負担になります。

このような負担は、弁護士に依頼して任せることで解消できます。

弁護士法人みずきは、被害者請求のお手伝いをしています。

被害者のご負担を軽減するためにも、是非ご相談ください。

また、以下の記事も参考となりますので、合わせてご覧ください。

後遺障害等級認定の被害者請求とは?メリット・デメリットと主な流れを解説

(4)認定結果を受け取る

後遺障害等級認定の審査は、第三者機関である損害保険料率算出機構が行います。

これは、自賠責保険会社毎に損害額の認定が異なることを避け、被害者間の公平を図るためです。

認定審査には、後遺障害申請後、通常、1か月から2か月程度かかります。

審査が終了し、請求が認められれば、保険金が振り込まれます。

請求が認められなければ、その旨の通知があり、保険金は振り込まれません。

(5)認定結果に納得がいかない場合は異議申立てを行う

後遺障害等級の認定結果は、必ずしも納得のいく等級になるとは限りません。

また、該当の等級がない「非該当」という認定結果が返ってくる場合もあります。

このように、認定結果に不服がある場合には、まず、異議申立てを行うことができます。

#1:異議申立てとは

後遺障害等級認定手続きには、異議申立て制度が用意されています。

異議申立てとは、後遺障害等級の認定結果に不服がある場合に、もう一度、認定を求めて申請を行うことです。

この場合、初回の認定結果を踏まえ、再度必要書類を整え直して挑むことになります。

異議申立書の他に、認定に有利になるような新たな書類や医療機関による検査結果、医師の意見書等を併せて提出するとよいでしょう。

異議申立てをすると、損害保険料率算出機構で審査が行われます。

事前認定又は被害者請求の場合と異なり、通常は、上位機関での慎重な審査が行われることとなります。

申立ての後、通常、2~3か月で審査結果が通知されます。

#2:自賠責保険・共済紛争処理機構への申立てや訴訟も可能

異議申立てに対する審査結果にも納得がいかないような場合、新たに資料を収集し直して、何度でも異議申立てをすることができます。

しかし、より第三者的な立場から、認定された後遺障害等級の妥当性の審査を求める方法もあります。

それは、自賠責保険・共済紛争処理機構へ紛争処理の調停を申し立てるという方法です。

紛争処理の申請が同機構に受理されると、公平中立で専門的な知見を有する紛争処理委員が独自に審査・調査を行った上で、後遺障害等級認定につき調停結果が出されます。

この結果にも納得できない場合、同機構への再度の申立てはできないため、加害者や保険会社を相手に訴訟を起こすことになります。

仮に訴訟を起こしたとしても、判決が示される前に和解に至る場合もあります。

まとめ

後遺障害等級の申請方法や異議申立て手続、及び自賠責基準での保険金額についてご説明しました。

交通事故により後遺症を伴う怪我を負ってしまった場合、後遺障害等級認定を受けると、必要な保険金を受け取れる可能性があります。

しかし、適切な後遺障害等級の認定を不安なく申請するには、提出するべき書類がとても多くあります。

このため、身体的にも精神的にも困難な状態にある被害者にとって、おひとりで手続を進めるには負担が重すぎる面があるといえます。

そこで、被害者請求をご検討されている方には、弁護士がお手伝いさせていただきます。弁護士法人みずきに、是非ご相談ください。

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執筆者 実成 圭司 弁護士

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皆さまのご相談内容を丁寧にお聞きすることが、より的確な法的サポートにつながります。会話を重ねながら、問題解決に向けて前進しましょう。