可動域制限になった場合の後遺障害認定について
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「可動域制限になった場合に後遺障害認定を受けられるのか」
「後遺障害認定を受けるためにはどうすればよいのか」
交通事故で可動域制限になってしまった方の中には、後遺障害認定を受けられるのか、受けるためにはどうすればよいのかが分からず不安に思っている方もいることでしょう。
治療をしても可動域制限が残ってしまった場合には、制限の程度によって後遺障害認定を受けることができます。
もっとも、単に可動域に制限が生じているだけで認められるわけではないので、等級に該当するか否かについては弁護士にご相談いただくことをおすすめします。
ここでは、可動域制限になった場合に後遺障害認定を受けられるのかということや、後遺障害認定を受けるためにはどうすればよいのかなどについてご説明します。
本記事を読んで、可動域制限になった場合の後遺障害認定について理解し、皆様が納得のいく解決ができるようになっていただければ幸いです。
1.可動域制限について
まずは、可動域制限がどのようなものなのか、症状や原因を説明します。
(1)交通事故による可動域制限の症状
可動域制限とは、関節を動かせる範囲が狭くなってしまうことです。
可動域制限が残ってしまうと、物がつかみにくくなったり、歩行が困難になったりなど、日常生活に影響が出てしまいます。
そのため、仕事をする際にも労働能力が制限されてしまうため、後遺障害として賠償を得る必要があります。
(2)関節可動域が制限される原因
可動域制限が後遺障害として認められるためには、原因が重要です。
たとえば、単に痛くて曲げづらいという場合には、可動域制限とは認められません。
これは神経症状となります。
可動域制限として認定されるためには、器質的変化又は機能的変化が原因とされる必要があります。
#1:器質的変化
器質的変化とは、身体の構造に異常が生じ、その結果として可動域が制限されることをいいます。
具体的には、骨折や脱臼後の変形やや癒合不良、靱帯損傷などによって、可動域が制限されることです。
#2:機能的変化
機能的変化とは、身体の構造は正常だが、神経に異常が生じ、その結果として可動域が制限されることをいいます。
具体的には、神経の損傷などによって可動域が制限されることです。
2.可動域制限で後遺障害認定されるパターン
後遺障害が認められるのは以下の3つの場合です。
(1)関節の用を廃したもの
「関節の用を廃したもの」とは、3つの中で1番症状が重いもので、関節としての機能が失われた状態をいいます。
具体的には、健側(健康な側の関節)と比べて、可動域が10%以下になっている場合です。
(2)関節の著しい機能障害
関節の著しい機能障害とは、3つの中で2番目に症状が重いもので、健側と比べて、可動域が50%以下になっている状態をいいます。
(3)関節の機能障害
関節の機能障害とは、3つの中で1番軽度なもので、健側と比べて、可動域が75%以下になっている状態をいいます。
角度の測定の仕方も決まっているため、しっかりと整形外科などの専門医で測定を受ける必要があります。
3.後遺障害等級と慰謝料の相場
後遺障害の等級は、障害部位が上肢か下肢かで異なります。
(1)上肢
上肢とは、簡単に言えば肩から手にかけての範囲を意味します。
具体的には上腕、肘、前腕、手を指します。
両上肢という場合には、左右両方の上肢を指し、1上肢という場合には左右どちらか片方という意味になります。
上肢の3大関節とは、肩関節、肘関節、手(手首)関節のことを指します。
交通事故によってこれらの関節に可動域制限が残ってしまった方は、下記の表のいずれかに当てはまる可能性があるかチェックしてみましょう。
当てはまった場合、後遺障害の認定がされる可能性があります。
表に記載した慰謝料は、弁護士基準の慰謝料の目安です。
後遺障害等級 | 障害内容 | 後遺障害慰謝料 |
1級4号 | 両上肢の用を全廃したもの | 2800万円 |
5級6号 | 1上肢の用を全廃したもの | 1400万円 |
6級6号 | 1上肢の3大関節中の2関節の用を廃したもの | 1180万円 |
8級6号 | 1上肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの | 830万円 |
10級10号 | 1上肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの | 550万円 |
12級6号 | 1上肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの | 290万円 |
(2)下肢
下肢とは、簡単に言えば股関節の付け根から足先までの範囲を意味します。
具体的には、大腿、膝、下腿、足を指します。
両下肢、1下肢の意味は上肢と同様です。
下肢の3大関節とは、股関節、膝関節、足(足首)関節のことです。
交通事故によってこれらの関節に可動域制限が残ってしまった方は、下記の表のいずれかに当てはまる可能性があるかチェックしてみましょう。
後遺障害等級 | 障害内容 | 後遺障害慰謝料 |
1級6号 | 両下肢の用を全廃したもの | 2800万円 |
5級7号 | 1下肢の用を全廃したもの | 1400万円 |
6級7号 | 1下肢の3大関節中の2関節の用を廃したもの | 1180万円 |
8級7号 | 1下肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの | 830万円 |
10級11号 | 1下肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの | 550万円 |
12級7号 | 1下肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの | 290万円 |
4.可動域制限が後遺障害に認定されるためのポイント
可動域制限で後遺障害認定を受けるためには、3つのポイントがあります。
ポイントをしっかりと押さえておかないと、実際の制限よりも低い等級が認定されてしまう可能性があります。
通院中や後遺障害診断書作成の際に注意すべき点がありますので、以下で詳述していきます。
(1)可動域制限の原因が医学的に証明できること
後遺障害の認定を受けるためには、可動域制限の原因が特定できる必要があります。
上述したように、痛みによって動かしづらい状況である場合には、可動域制限ではなく神経症状と判断されます。
そのため、可動域制限の後遺障害と認定されるためには、レントゲンやMRIなどの画像診断によって器質的変化ないし機能的変化を明らかにする必要があります。
そのため、事故直後のみならず症状固定時点でどのような画像所見が見られるかというのも大切なポイントとなります。
(2)症状固定まで6か月以上治療を受けること
後遺障害の認定は、症状固定後にされます。そのため、まずは症状固定される必要があります。
症状固定と診断されたということは、これ以上症状が改善しないということです。
しかし、6か月以上治療を受けていなければ、必要な治療がなされていなかったと判断され、後遺障害の認定がされる可能性が低くなってしまいます。
そのため、上記の表に当てはまる症状のある方は、6か月以上の治療を受けておくようにしましょう。
(3)肩・肘・手首、股・膝・足首ごとに適切な方法で可動域の測定を行うこと
可動域の測定は、日本整形外科学会および日本リハビリテーション医学会が制定した「関節可動域表示ならびに測定法」に準拠して定めた「関節可動域の測定要領」に基づいて行われます。
関節の動きの重要性には差異が認められることから、主要運動と参考運動に区別した上で、原則として主要運動の可動域制限の程度によって判断されます。
主要運動とは、日常の動作にとって最も重要なものをいい、参考運動は、日常の動作としてあまりしない動きで重要性が低いものをいいます。
上肢、下肢それぞれの3大関節の主要運動と参考運動は以下のとおりです。
関節の部位 | 主要運動 | 参考運動 |
肩関節 | 屈曲、外転、内転 | 伸展、外旋、内旋 |
肘関節 | 屈曲、伸展 | |
手(手首)関節 | 屈曲、伸展 | 撓屈、尺屈 |
股関節 | 屈曲、伸展、外転、内転 | 外旋、内旋 |
膝関節 | 屈曲、伸展 | |
足(足首)関節 | 屈曲、伸展 |
屈曲とは関節を曲げた状態をいい、伸展とは関節を伸ばした状態をいいます。
外転とは体の正中面から遠ざける動きをいい、内転とは体の正中面に近づける動きをいいます。
外旋とは骨の長軸を軸にして外側にねじる動きをいい、内旋とは骨の長軸を軸にして内側にねじる動きをいいます。
撓屈(とうくつ)とは手首を親指側に曲げる動きをいい、尺屈(しゃっくつ)とは手首を小指側に曲げる動きをいいます。
これらの運動のうち、原則として、屈曲と進展のように対となる運動については、2つの可動域角度の合計値をもって可動域制限を評価することとなっています。
まとめ
本記事では、交通事故における可動域制限の症状や、該当する可能性がある後遺障害等級、後遺障害等級と慰謝料の相場、後遺障害認定されるためのポイントなどについて詳しくご紹介しました。
交通事故によって受傷されてしまった方は、専門家である弁護士に相談することで、適切な後遺障害等級の認定が受けることや、適切な賠償金の支払いを受けることなど、納得のいく解決についてアドバイスやサポートを受けることができます。
より良い解決や納得のいく解決ができるように、なるべく早く弁護士に相談することをおすすめします。
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