交通事故で指の可動域に後遺障害が残ったらどうする?弁護士が解説
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「交通事故に遭ってから、指が曲がらない」
「指の可動範囲が狭くなったことは後遺障害になる?」
交通事故に遭われた方の中には、このような不安や悩みをお持ちの方もいるかと思います。
事故による怪我が関節や筋肉に及ぶと、指の可動域が制限される障害が残る場合があります。
指の可動域制限は、制限の程度に応じて後遺障害等級が認定されることがあります。
今回は、指の可動域制限が起きる原因や、認定され得る後遺障害等級、そして後遺障害等級認定を申請する場合の注意点や手順についてご説明します。
1.交通事故における手指の後遺障害
交通事故による手指の後遺障害には、症状や原因などさまざまなものがあります。
(1)手指の後遺障害と原因
そもそもなぜ手指の可動範囲などについて異常が生じるのでしょうか。
その原因は、主に2つのものがあります。
- 器質的変化
- 機能的変化
順にご紹介します。
#1:器質的変化
器質的変化とは、構造的に何らかの異常がある場合に起こる変化です。
器質的変化による手指の可動域制限には、以下のようなものがあります。
- 関節や軟骨の破壊など、関節構成体の器質的変化
- 筋肉や靭帯の損傷など、軟部組織の器質的変化
具体的には、骨折や脱臼などの骨傷、靭帯の異常、筋肉の血行障害などです。
#2:機能的変化
機能的変化とは、構造的に異常がないにも関わらず、機能的に何らかの異常がある場合に起こる変化です。
機能的変化による手指の可動域制限には、以下のようなものがあります。
- 神経の麻痺、疼痛
これらでは、神経の損傷などによって痛みが引き起こされる場合があります。
これらの症状が生じた場合、その程度に応じて後遺障害等級が認定される場合があります。
(2)後遺障害等級と認定基準
手指の可動域制限は、自賠法施行令によると、以下の症状がある場合は後遺障害等級に該当するとされています。
等級 | 後遺障害の内容 |
4級6号 | 両手の手指の全部の用を廃したもの |
7級7号 | 1手の5の手指又は親指を含み4の手指の用を廃したもの |
8級4号 | 1手の親指を含み3の手指の用を廃したもの
又は親指以外の4の手指の用を廃したもの |
9級13号 | 1手の親指を含み2の手指の用を廃したもの
又は親指以外の3の手指の用を廃したもの |
10級7号 | 1手の親指又は親指以外の2の手指の用を廃したもの |
12級10号 | 1手の人差し指、中指、又は薬指の用を廃したもの |
13級6号 | 1手の小指の用を廃したもの |
14級7号 | 1手の親指以外の手指の遠位指節間関節を屈伸することができなくなったもの |
「用を配する」などの言葉が出てきますが、これだけではどのような症状を指すのかわからないと思います。
具体的な判断基準について、次にご説明します。
(3)後遺障害の判断基準
手指の後遺障害には、大きく分けて「欠損障害」と「機能障害」があります。
可動域制限と関係があるのは、後者の「機能障害」です。
関節の機能障害による後遺障害等級の認定では、関節の可動域の角度を測定し、通常時と比較することで評価されます。
手指は屈曲・伸展、母指は屈曲・伸展、橈側外転、掌側外転を行い、その角度を測定します。
屈曲とは関節を曲げた状態をいい、伸展とは関節を伸ばした状態をいいます。
撓側外転とは手を親指が上、小指が下になるようにして、親指を人差し指から離す動きをいいます。
掌側外転とは手のひらが上、手の甲が下になるようにして、親指を手のひらから離す動きをいいます。
#1:欠損障害
手指の可動域の話からは少し離れますが、欠損障害についてもご説明します。
欠損障害とは「手指を失った状態」もしくは、「指骨の一部を失った状態」を指します。
「手指を失った状態」とは、指の近位指節間関節(第二関節)以上(母指の場合は指節間関節以上)を失った場合をいいます。
具体的には、以下のようなケースです。
- 人差し指から小指を第二関節より根元で切断したもの
- 親指を第一関節より根元で切断したもの
「指骨の一部を失った状態」とは、指骨の一部を失っている(遊離骨片の状態を含む)ことがX線写真などによって確認できることを指します。
遊離骨片とは、軟骨や骨の一部がはがれて、関節内を移動することをいいます。
#2:機能障害
機能障害とは、「手指の用を廃したもの」もしくは「遠位指節間関節を屈伸することができないもの」を指します。
つまり、指が曲がらなかったり、曲げづらかったりすることです。
前述したように指の可動域の後遺障害は機能障害に含まれます。
「手指の用を廃したもの」とは、手指の末節骨(指先の最も先端の骨)の半分以上を失い、または中手指節関節(指の根元部分の関節)もしくは近位指節関節(親指においては指節間関節)に著しい運動障害を残した状態です。
具体的には以下のような障害を指します。
- 手指の末節骨の長さの1/2以上を失ったもの
- 中手指節関節又は近位指節関節(親指においては指節間関節)の可動域が健側(事故の影響による症状がない側)の可動域確度の1/2以下に制限されるもの
- 親指においては、橈側外転(親指を人差し指から離す動き)又は掌側外転(親指を手のひらから離す動き)のいずれかが健側の1/2以下に制限されているもの
- 手指の末節の指腹部(指先の指紋がある部分)及び側部の深部感覚及び表在感覚が完全に脱失したもの
「遠位指節間関節を屈伸することができないもの」とは、遠位指節間関節(指の第一関節)が以下のような状態にあるものを指します。
- 遠指節間関節が強直(ほとんど動かなくなること)したもの
- 屈伸筋の損傷の原因が明らかなものであって、自動で屈伸ができない、又はこれに近い状態にあるもの
2.後遺障害等級の認定ポイントと申請手順
一定期間治療を受けたにも関わらず症状が改善されず症状固定となった場合は、後遺障害等級が認定される可能性があります。
認定されるためには、①症状固定と判断されていること、②後遺障害と交通事故との因果関係があること、③障害の存在が医学的に認められること、④各等級の認定基準を満たすことが必要です。
(1)認定のポイント
これらの等級の認定を受けるためには、以下の点を押さえておく必要があります。
#1:画像所見によって可動域制限の原因を証明する
指の可動域の制限について、後遺障害等級の認定を受けるためには、可動域制限が医学的に認められる必要があります。
手指の可動域制限の原因は、骨折や軟部組織、神経の損傷などです。
これらの症状や原因がX線やCT検査、MRI検査によって確認・証明できることで、後遺障害認定される可能性が高まります。
#2:6か月以上の治療継続
後遺障害等級の認定を受けるためには、原則として6か月以上の治療期間が必要です。
治療期間が6か月未満の時点で申請した場合、今後も治療を続けていれば後遺障害の認定基準を満たさない可能性があると判断され、後遺障害の認定が認められないケースもあります。
また、6か月以上治療を続けていても、間隔が1か月以上空いていれば、積極的に治療を受けていないことが原因で後遺障害が残ったと判断され、後遺障害認定が認められない可能性があります。
そのため、6か月以上定期的に通院をする必要があります。
(2)申請の手順
一般的に、損害保険料算出機構に後遺障害等級認定の申請をします。
申請方法には、加害者側の任意保険会社に申請手続をしてもらう「事前認定」と、被害者自身で手続を行う「被害者請求」があります。
基本的な流れはどちらの方法も同じですが、手続の透明性や資料収集に関与できるかどうかという違いがあります。
#1:事前認定
事前認定は以下の流れで手続が進行します。
- 後遺障害診断書を加害者側の任意保険会社に提出
- 任意保険会社が必要書類を準備し、損害保険料算出機構に提出
- 任意保険会社を通じて調査結果の報告を受ける
- 保険金の決定及び支払い
事前認定の場合、被害者は病院で後遺障害診断書を書いてもらうだけで負担が少ないです。
しかし、資料の作成や収集などに関与できず、書類の内容を把握することができません。
そうすると、資料の修正や追加資料の提出ができず、後遺障害が認められない可能性が高くなります。
#2:被害者請求
被害者請求は、以下の流れで手続が進行します。
- 必要書類の収集・後遺障害診断書の作成
- 自賠責保険会社に必要書類を提出
- 自賠責保険会社から損害保険料算出機構に調査依頼
- 調査結果の報告
- 保険金額の決定及び支払い
資料の作成や収集をすべて自分で行わなければなりませんが、等級の認定において有利になる資料の選定を自らで行うことができます。
また、後遺障害が認定された場合、示談金が確定する前に後遺障害慰謝料の一部を受け取れることもメリットです。
まとまったお金を早急に受け取り、治療費などに充てることもできます。
まとめ
交通事故によって手指の可動域に制限が残る場合には、後遺障害等級の認定を受けられる可能性があります。
また、被害者請求によって後遺障害等級の認定申請をすることでさまざまなメリットがありますが、資料の作成や収集をすべて自分で行うと大きな負担と手間がかかります。
弁護士に依頼することで、適切な申請を受けるための書類の作成方法やポイントについてアドバイスが受けられるだけでなく、申請に必要な準備や手続をすべて任せることができます。
弁護士法人みずきは、これまでに多くの交通事故のご相談を承ってきました。
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