肩鎖関節の脱臼とは?主な後遺症と後遺障害等級などを弁護士が解説

執筆者 潮崎 雅士 弁護士

所属 第二東京弁護士会

初動が大事。様々なことに当てはまりますが、法律問題もそうです。しかし、今まで法律問題に関わったことがなく、どうすればよいかわからない方が多いと思います。そうして初動が遅れると、最良の解決は難しくなってしまいます。
逆に相談が早ければ早いほど、より良い解決がしやすくなります。ですので、何かお困りのことがあれば、お早めにご相談ください。皆様の法律問題の最良の解決に向けて全力でサポートさせていただきます。

「肩鎖関節脱臼ではどんな後遺症が生じる可能性があるのか知りたい」
「交通事故で肩鎖関節脱臼が生じた場合には弁護士へ相談すべき?」

交通事故により、肩鎖関節の脱臼と診断された方の中には、このような疑問をお持ちの方もいるでしょう。

肩鎖関節を脱臼すると、肩甲骨と鎖骨の連携がうまくいかず、様々な後遺症が生じる可能性があります。

本記事では、交通事故による肩鎖関節脱臼の主な症状や後遺症、認定される可能性がある後遺障害等級などについてご説明します。

1.肩鎖関節脱臼の主な症状と原因

交通事故による強い衝撃が肩に加わると、肩鎖関節が脱臼することがあります。

肩鎖関節は、肩甲骨と鎖骨を連携させている関節であるため、この部分を脱臼してしまうと、様々な症状が現れます。

以下では、肩鎖関節の脱臼の概要や主な症状、肩鎖関節脱臼が生じやすい事故態様について順に解説します。

(1)肩鎖関節の脱臼とは

肩鎖関節の脱臼とは、肩甲骨と鎖骨の関節にズレが生じた状態を指します。

肩甲骨と鎖骨の間には、肩鎖関節を支える肩鎖靭帯および鳥口鎖骨靭帯があり、肩鎖靭帯あるいは肩鎖靭帯および鳥口鎖骨靭帯に損傷あるいは断裂が生じることで脱臼が生じます。

これらの靭帯に損傷・断裂が生じることで、肩甲骨と鎖骨の連携に影響が出て、様々な症状が現れる可能性があります。

(2)主な症状

肩鎖関節を脱臼すると、肩に激しい痛みや肩周囲に腫れが生じる可能性があります。

また、肩甲骨と鎖骨の連携がうまくいかなくなり、肩回りの可動域に制限が残るなどの機能障害が生じることも考えられます。

重症の場合には、目視できるほど鎖骨が浮き上がってしまうこともあります。

損傷の程度が重篤である場合には、手術療法がとられる場合も多く、手術を行っても直ちに元の状態に回復することは困難です。

そのため、受傷後は速やかに医療機関の整形外科などを受診し、適切な治療を受けることが重要です。

(3)肩鎖関節脱臼が生じやすい事故態様

肩鎖関節の脱臼は、肩に強い外力が加わることによって生じます。

そのため、以下のような事故態様において発生する可能性が高いです。

肩鎖関節脱臼が生じやすい事故態様

  • バイク乗車中に転倒し肩付近を強く打ちつけた
  • 自転車に乗車しているときに車と接触し地面に手をついた

脇を締めた状態で肩に強い衝撃が加わることによって肩鎖関節に脱臼が生じることが多いですが、腕を伸ばした状態で手をついた際に突き上げの力が加わることで間接的に受傷することもあります。

2.主な後遺症と認定される可能性がある後遺障害等級

肩鎖関節を脱臼すると、肩回りの可動域に制限が生じるほか、鎖骨の変形や痛み・痺れなどの症状が後遺症として残る可能性があります。

後遺症の種類としては、以下のとおりです。

肩鎖関節脱臼による主な後遺症

  • 機能障害
  • 変形障害
  • 神経障害

それぞれの後遺症ごとに認定される可能性がある後遺障害等級についても合わせて解説します。

なお、後遺障害等級の認定申請については、以下の記事で詳しく取り上げていますので、合わせてご参照ください。

症状固定から後遺障害等級認定までの流れ!損害賠償との関係も解説

(1)機能障害

肩鎖関節は肩を動かすのに必要な関節であるため、脱臼が生じることで、肩回りの関節が動かしづらくなるといった機能障害が残る可能性があります。

機能障害で認定される可能性がある後遺障害等級は、以下のとおりです。

後遺障害等級 認定基準
8級6号 1上肢の3大関節の中の1関節の用を廃したもの
10級10号 1上肢の3大関節の中の1関節の機能に著しい障害を残すもの
12級6号 1上肢の3大関節の中の1関節の機能に障害を残すもの

動かしづらさは、脱臼が生じていない側と比較して、どの程度可動域が制限されているかで判断します。

用を廃したものとは、全く関節が動かないか脱臼が生じていない肩と比較して可動域が10%以下に制限された状態を言います。

この場合には8級6号が認定される可能性があります。

また、脱臼していない肩と比較して可動域が2分の1以下に制限された場合には10級10号、4分の3以下に制限された場合には12級6号が認定される可能性があります。

そのため、機能障害の等級の獲得を目指す場合には、可動域の検査結果だけでなく、どの程度制限が生じているかを具体的に明らかにする必要があることを押さえておきましょう。

(2)変形障害

肩鎖関節を脱臼した場合、治療を行っても脱臼がきれいに整復されずに鎖骨に変形が残る可能性があります。

鎖骨の変形障害として認定される可能性がある後遺障害等級は、以下のとおりです。

後遺障害等級 認定基準
12級5号 鎖骨、胸骨、ろく骨、けんこう骨又は骨盤骨に著しい変形を残すもの

この等級の認定を受けるためには、レントゲンだけではなく、裸体になった際に変形が明らかに分かるものであることが求められます。

また、鎖骨が変形した場合、ピアノキーサインが陽性になることがあります。

ピアノキーサインとは、変形によって上方に持ち上がった鎖骨を押すと、鎖骨が下方に沈み込み、指を離すと元に戻るという症状のことです。

このような場合には、鎖骨が下方に沈む様子を写真で撮影しておく必要があります。

(3)神経障害

肩鎖関節脱臼によって痛みが残った場合には、神経障害として以下の後遺障害等級が認定される可能性があります。

後遺障害等級 認定基準
12級13号 局部に頑固な神経症状を残すもの
14級9号 局部に神経症状を残すもの

神経症状の原因がレントゲンやMRIなどの画像検査上で確認でき、症状との因果関係を医学的に証明できる場合には12級13号が認定されます。

一方、画像検査上では異常が見られないものの、神経学的検査などから症状との因果関係を医学的に説明ができるに留まる場合には14級9号が認定されます。

そのため、獲得を目指す等級に応じて、レントゲン検査やMRI検査にとどまらず、治療の経過と症状の変遷、事故態様などについての資料を作成・収集することが求められます。

3.交通事故で肩鎖関節脱臼が生じた場合に弁護士へ相談するメリット

交通事故により肩鎖関節脱臼を負った場合には、弁護士に相談することがおすすめです。

事故直後から弁護士に相談することで、以下のようなメリットがあります。

交通事故で肩鎖関節脱臼が生じた場合に弁護士に相談するメリット

  • 後遺障害等級の認定申請へ向けたサポートが受けられる
  • 示談金額の増額が期待できる

それぞれについて、ご説明します。

(1)後遺障害等級の認定申請へ向けたサポートが受けられる

交通事故による怪我の治療を行った後に何らかの症状が残存した場合には、症状の内容や程度に応じた後遺障害等級の認定を受けることで、後遺障害慰謝料と逸失利益という損害項目を加害者側に請求することができます。

もっとも、これらの損害項目を請求し、受け取るためには後遺障害等級の認定申請を行う必要があります。

後遺障害等級の認定申請には、事前認定と被害者請求という2つの方法があり、それぞれメリット・デメリットがあります。

事前認定は加害者の任意保険会社を介して行う方法で、被害者は医師が作成した後遺障害診断書を提出するだけでいいです。

申請に必要なほかの書類や資料の作成・収集は任意保険会社が行うため、手続きが楽というのがメリットです。

もっとも、この場合、任意保険会社が用意した書類を事前にチェックすることはできません。

そのため、手続に必要最低限の書類や資料のみで申請が行われることとなり、実際の症状よりも低い等級で認定される場合や等級非該当となるリスクがあります。

被害者請求は、加害者の自賠責保険に対して、被害者自身が後遺障害診断書のほか必要な書類や資料の作成・収集を行い、申請する方法です。

必要書類を自ら用意しなければならないため、申請の手間がかかります。

しかし、書類の作成方法や資料添付を工夫することができるため、適切な等級認定の可能性を高めることができます。

弁護士に相談することで、後遺障害等級の認定申請に関するサポートやアドバイスを受けることができます。

また、適切な後遺障害等級の認定を受けるためには、適切な頻度・期間で治療を継続することはもちろん、後遺障害診断書の内容が重要です。

弁護士に早期に相談することで、適切な等級認定を受けるための治療の注意点や後遺障害診断書作成に関するアドバイスを受けることもできます。

(2)示談金額の増額が期待できる

後遺障害等級の認定を受けた後には、加害者側と示談交渉を行うことになります。

請求する損害のうちの一つである慰謝料は、裁判所(弁護士)基準、任意保険基準、自賠責基準の3つがあります。

このうち、裁判所(弁護士)基準が一番高額で、自賠責基準が一番低額となることがほとんどです。

加害者が任意保険に加入している場合には、任意保険会社と示談交渉を進めていきますが、相手方の保険会社は自賠責基準か任意保険基準で算定した慰謝料額を提案してきます。

弁護士に相談・依頼することで、最も高額かつ適切な算定基準である裁判所(弁護士)基準を用いて示談交渉を行うことができ、慰謝料の増額が期待できます。

また、肩鎖関節脱臼で変形障害として12級5号が認定された場合には、骨の変形だけでは労働能力の喪失は認められないとして、逸失利益の有無が争いになることが多いです。

弁護士に示談交渉を依頼することで、保険会社の主張に対しても効果的に反論・立証を行うことができるため、受け取ることができる示談金額の増額が期待できます。

まとめ

本記事では、交通事故を原因とする肩鎖関節の脱臼について解説しました。

脱臼の程度によっては、様々な症状が後遺症として残存する可能性があるため、後遺症がある場合には後遺障害等級の認定申請を行うことを検討しましょう。

交通事故によって肩鎖関節の脱臼が生じた場合には、なるべく早期に弁護士へ相談することをおすすめします。

弁護士法人みずきでは、これまでに数多くの後遺障害等級の認定手続や示談交渉に対応してきました。

経験豊富な弁護士が丁寧にお話を伺いますので、交通事故による肩鎖関節脱臼の症状にお悩みの方はお気軽にご相談ください。

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執筆者 潮崎 雅士 弁護士

所属 第二東京弁護士会

初動が大事。様々なことに当てはまりますが、法律問題もそうです。しかし、今まで法律問題に関わったことがなく、どうすればよいかわからない方が多いと思います。そうして初動が遅れると、最良の解決は難しくなってしまいます。
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