自己破産をするとできなくなることとは?よくある疑問について解説
「自己破産をしたらどのようなことができなくなるのか」
「自己破産をしたら今の生活にどのような影響があるのか」
自己破産を検討している方の中には、自己破産後に何ができなくなるのか不安に感じている方も多いのではないでしょうか。
この記事では、自己破産後に何ができなくなるのか、また自己破産後の疑問についてご説明します。
1.自己破産後にできなくなること
自己破産の手続に入ると一定期間できなくなることがあります。
特に押さえておくべきことは以下のとおりになります。
- 金融機関からの新たな借入れやクレジットカードの新規発行
- 信販会社系の賃貸保証会社を利用した新たな賃貸契約
- 一部の公的な資格を必要とする仕事をすること
- 自由な住居移転
- 免責許可決定の確定後7年以内の自己破産
- 免責許可決定の確定後7年以内の給与所得者等再生
順にご説明します。
(1)金融機関からの新たな借入れやクレジットカードの新規発行
自己破産をすると信用情報機関にそのことが事故情報として登録されることにより、金融機関からの新たな借入れやクレジットカードの新規発行ができなくなります。
自己破産や債務の返済の延滞などの金融事故を起こしたことを示す事故情報が信用情報機関に登録されていると、金融機関等の審査時に行われる信用情報機関への照会によってそのことがわかってしまい、申込者による返済の継続が疑わしいと判断されるため、審査を否決されてしまうのです。
信用情報機関ごとに事故情報が登録されている期間は異なりますが、破産の場合、最長で破産手続開始決定から10年間残り続けます。
信用情報機関から事故情報が削除されれば、従来どおりにローンを組んだりクレジットカードを発行したりできるようになります。
(2)信販会社系の賃貸保証会社を利用して賃貸物件に住むこと
自己破産をしても賃貸契約を結ぶことはできますが、信販会社系の賃貸保証会社を利用して賃貸物件に住むことはできません。
信販会社系の賃貸保証会社は信用情報機関への照会をすることができるため、審査の段階で事故情報を確認されてしまい、審査に通りません。
したがって、賃貸物件を探す場合は、信販会社系以外の賃貸保証会社を利用するか連帯保証人を立てて契約しましょう。
なお、信用情報機関から事故情報が削除されると、信販会社系の賃貸保証会社も利用できるようになります。
(3)一部の公的な資格を必要とする仕事をすること
一部の公的な資格を必要とする仕事ができなくなります。
自己破産の手続の開始決定と同時に、破産者は資格を制限されます。この資格制限によって、その資格を必要とする仕事はできなくなってしまうのです。
資格制限の対象となる仕事には以下のようなものがあります。
- 各種の士業
- 警備員
- 保険外交員
- 賃金業者
- 旅行業務取扱主任者など
免責許可決定が確定すると資格制限はなくなります(「復権」といいます。)ので、従来どおりの仕事に就くことも可能になります。
免責許可が決定されるまでは数か月間かかりますので、その間仕事を休むか、転職により資格の不要な仕事に就く必要があります。
(4)自由に住居を移転すること
管財事件の場合、破産手続中に自由に住居を移転することもできません。
自己破産の手続が開始されると、居住地を離れる場合、裁判所の許可が必要となります。
しかし、裁判所の許可を得られないということはほとんどありませんので、引っ越しすること自体ができなくなることはありません。
なお、引っ越しだけではなく、2泊以上の宿泊を伴う旅行、海外旅行についても、裁判所の許可が必要になります。
(5)免責許可決定の確定後7年以内に再度自己破産をすること
免責許可決定の確定から7年以内の免責許可申立ては、免責不許可事由に当たるため、自己破産をしても免責を得ることができません。
この期間は自己破産をしても債務の支払義務が免除されることはありませんので、自己破産をする意味がなくなってしまいます。
自己破産をするとローンやクレジットカードが利用できないので、短期間で自己破産をしなければならないほどの借金を抱えることはまれかもしれませんが、万が一のことも考慮して頭に入れておきましょう。
なお、免責許可決定から7年以内でも、裁量免責となる可能性はあります。
しかし、その他の免責不許可事由に比べると裁量免責のハードルは高くなっていますので、自己破産後は借金を作らないように注意しましょう。
(6)免責許可決定の確定後7年以内に給与所得者等再生をすること
免責許可決定の確定から7年以内は、給与所得者等再生ができません。
給与所得者等再生とは、安定した収入を得る見込みがあるサラリーマン向けの個人再生の方法です。
個人再生にはほかに小規模個人再生という方法もありますが、給与所得者等再生の場合、再生計画(債務を減額して返済していく計画、この認可決定を裁判所から得ることが個人再生の目的です。)の認可の際に、債権者の同意が不要というメリットがあります。
しかし、免責許可決定の確定から7年の内は、給与所得者等再生を利用することはできませんので、小規模個人再生の方法による個人再生しかできないことになります。
自己破産から7年間は、反対しそうな債権者がいる場合の個人再生が難しくなることも覚えておきましょう。
2.自己破産をした場合のよくある疑問
自己破産において、一般的に疑問をもたれることについて説明します。
今回紹介する点は以下のとおりです。
- 携帯電話やスマートフォンは解約されるのか
- 所有している車はどうなるのか
- 加入している生命保険はどうなるのか
- 給料はどうなるのか
- 退職金はどうなるのか
- 年金の受給はどうなるのか
順にご説明します。
(1)携帯電話やスマートフォンは解約されるのか
自己破産をしても携帯電話やスマートフォンは原則解約されません。
通話料金の滞納さえしていなければ、自己破産をしても問題なく継続して使用できます。
ただし、機種代金を分割払いにしており、自己破産の時点で完済していない場合は、携帯電話会社を自己破産の手続における債権者に含めざるを得ませんので、解約されることになります。
また、携帯電話料金の支払をクレジットカードでの支払に設定している場合、自己破産の手続を進めるとクレジットカードの利用が不可能になり支払ができなくなることがあるため、料金の支払方法を変更しておく方がよいでしょう。
(2)所有している車はどうなるのか
自己破産をすると、所有している車は換価の対象となってしまうため、手放す必要があります。
ただし、家族など本人以外の名義になっている車や査定額が20万円以下など一定以下の価値の車(管轄裁判所によって換価の対象となる基準が異なっています。)は換価処分の対象に該当しないため、継続して所有することが可能です。
また、自動車ローンが残っている場合で、車検証上の所有者がディーラーやローン会社となっているときは、換価処分を待たず、ディーラーやローン会社に車を引き上げられてしまうことがほとんどです。
(3)加入している生命保険はどうなるのか
加入している生命保険に解約返戻金が発生する場合は、自己破産をした際に解約することになる可能性があります。
生命保険を解約すると保険会社から支払われる解約返戻金は破産者の財産であり、自己破産によって換価、配当の対象となる財産に含まれます。
ただし、解約返戻金の合計が20万円を下回っており、その他の財産と合わせて99万円以内の自由財産の枠に収まっている場合は、換価の対象とはならないため、生命保険を解約する必要はありません。
また、解約返戻金のない掛け捨て型の保険の場合は一切解約の必要がありません。
なお、保険の加入時に審査はないため、自己破産したことによって保険の加入に影響が出ることはありません。
(4)給料はどうなるのか
自己破産をしても給料を差し押さえられたりすることはありません。
換価処分の対象となる財産であるかどうかは、破産手続の開始決定時を基準に判断されます。
そのため、開始決定時に、給料がすでに支払われ、預金や現金として存在している場合は換価処分の対象になるかどうかを判断することになりますが、開始決定後に支払われる給料については破産手続の影響なく受け取ることができます。
また、手続開始決定後に得た財産(新得財産)については手続の対象外となりますので、開始決定後に支払われた給料を、現金、預金として所有していても、それらを債権者への配当にあてる必要はありません。
(5)退職金はどうなるのか
退職金についてはその請求権が財産と扱われ、換価処分の対象となります。
ただし、退職金債権については4分の3が差押禁止財産であるため、換価の対象となるのは債権の4分の1の部分です。
また、将来的退職する時点でもらえる退職金の金額ではなく、破産手続開始決定時点に退職したと想定した場合の退職金の金額が基準となります。
まとめると、破産手続開始決定時の退職金の金額の4分の1が換価の対象となる、ということになります。
法律上はこのような扱いとなりますが、裁判所によって換価の対象となる割合は異なることもあります(東京地方裁判所の場合、退職金債権の8分の1を換価の対象とする扱いをとっています。)ので、申立て前によく確認しておきましょう。
以上との兼ね合いで、退職金の8分の1の金額が20万円以下の場合は退職金全額を換価の対象としない扱いとしている裁判所がほとんどです。
したがって、自己破産手続開始時点にもらえる退職金が160万円を下回っており、その8分の1の金額と他の財産を合わせて99万円を超えていない場合は、退職金を処分されずに済みます。
現時点でもらえる退職金の金額を確認して、どのくらいの金額が処分対象になるのか計算しておきましょう。
(6)年金の受給はどうなるのか
国民年金や厚生年金は差押禁止財産です。
そのため、自己破産をしても減額されることはなく、全額を受給することができます。
まとめ
自己破産をするとできなくなることがいくつかあります。
一方で、噂されているものの実は自己破産をしても生活に影響がない事項もあります。
そのため、自己破産の申立てを検討するにあたっては、弁護士に相談し、日常生活にどのような影響が出るのかよく確認しておきましょう。
本記事の内容を参考に、自己破産後の生活のイメージをつかんでいただければと思います。
債務整理でこんなお悩みはありませんか?
もう何年も返済しかしていないけど、
過払金は発生していないのかな・・・
ちょっと調べてみたい
弁護士に頼むと近所や家族に
借金のことを知られてしまわないか
心配・・・
- ✓ 過払金の無料診断サービスを行っています。手元に借入先の資料がなくても調査可能です。
- ✓ 秘密厳守で対応していますので、ご家族や近所に知られる心配はありません。安心してご相談ください。
関連記事